前回のエッセイでは、“一生忘れてはならぬ私の初心”を披露させて頂きました。
謙虚な心構えで振り返って実感したその初心(未熟な私)は、上を向いて前に歩を進める推進力をなってくれるのでした。言葉に表せそうにもない閉塞的なうつ症状を実感しながらも、何とか踏ん張って、目の前の仕事や課題から逃げずに向き合って対処しているうちに、背中をそっと押してくれるエレメントのような賜りものが増えていることがありました。それらは、後々になって気づいたことがほとんどでした。
今回のエッセイは、その賜りものを紹介させて頂きます。
私の初心からの賜りものは、何といっても“仕事の進め方の基本的フォルム”
一番の賜りものは、仕事の進め方の基本的フォルム(型)が身についたことでしょうか。新たな課題に取り組む時、ことさらに実感させられます。
実力も精神力も幼かった時には、課題を提示されて直ぐに、何をするのかという方法論が気になりました。“何よりもスピードがいのち”という感覚の年代でしたから、先手必勝しか頭にありませんでした。
別の表現をすれば、一番に気になるのが周りの方々の対処法で、それを裏返せば自分自身の自信の無さの表れだったと思います。狭い視野からの思いつきに先導されて、結局、何度も行きつ戻りつを繰り返しては、スタート地点の周りをうろうろしている自分がありました。
専任教育担当なりたての頃の仕事のあり様も、同じ轍を踏んでいる状況でした。もう半年もすれば不惑世代に手が届くところまできているにも拘らず、の体たらくなのです。
その頑迷固陋(がんめいころう)な状態に楔を打ち込んでくれたのは、藁をもすがる思いで学び続けている中から賜ったものでした。そんな体たらくとの縁切りが成立するまでに、3年、いや5年は要したかもしれません。サヨナラするために、延べ数百万円以上の自己投資も厭いませんでした。“今が人生の瀬戸際”という危機感と、“こんなことで負けてたまるか”(エッセイ14回)の頑固一途な目標必達魂が、学び続ける原動力になっていたのだろう、と振り返っております。
その賜りものの有難みは、新たな取組みにチャレンジするたびに実感させられます。
最初の賜りものは、仕事を進める上での考え方、あり方、姿勢などの土台でした。その根幹となっているのが教育理念になります。「教育の基本理念(人財育成の着眼点)」(エッセイ7回)、「教育活動の基本原則」(エッセイ8回)の二本立てにしております。さらに、“教育とは何か?”という自問への回答として、「EDUCO TREE」(後日紹介予定)を植えました。
仕事遂行上の賜りものには、次のようなノウハウが挙げられます。
基本中の基本は、PDCAサイクルをスパイラルアップし続けることに尽きます。そして、6W3H、報連相、成功確率の高い問題解決の基本手順の要点などを、常に欠かさずお供に従えることです。
実行する段になったら、準備万端整えること(エッセイ39回)を、何が何でもやり遂げることです。研修講師であれば、一ヶ月前にはいつでも実施可能の状況にすることを、イの一番の義務と課しました。
どのような形態であれ、教育機会を企画する時には、「研修企画検討表」に則って進めることを基本原則にしております。教育問題の兆候と教育ニーズを四直四現主義で明らかにするところから始めます。実施することが目的の教育機会は、無駄以外の何物でもありません。それだけは、絶対に避けなければなりません。チームとして可否を意思決定する時には、何度か衝突したこともありました。
GOサインが出たら、ねらいを明確にするこが何よりも重要となります。平行して、教育機会全体を小説に見立てて、一つの作品としてプロデュースします。ねらいは全体だけではなく、各単元、各カリキュラム毎に明らかにしていきます。教材や資料は、ねらいに沿って念入りに用意をします。これには相当の時間を要します。
講師として前に立つ場合は、受講される皆さんに対して、私の基本スタンスと進め方を明示することから始めております。A-4版1枚にまとめました“WELCOME、いのうえ塾へ”(エッセイ23回)で理解して頂くことにしております。
研修中の基本スタンスは、カウンセラー、ファシリテーター的な引き出し役、メンターという助言役、またある時はガイド、トレーナーとしての道案内役、場合によっては厳父役・慈母役というように、状況に応じた役割を心掛けております。
引き出すための「グルグル回りの対話」は、自然体でやれるレベルになりました。
こうやって数えあげれば、かなりの賜りものの存在に気づかされます。それらが、今後とも基本的フォルムであり続けるのか、今の私には分かりかねます。でも、何事も決め付けることなく、状況に応じて見直す度量を常に持って日々臨むことで、本質を外さないで考えられるようにもなりました。本質を外さないで状況対応することが可能になりました。現在の取り組みも、今回のエッセイで述べたような基本フォルムからスタートしております。状況が一変することも視野に入れながら、常にベストを目指して対処する と決めております。周りの方々がどうであれ、常に熱意と本気で全力投球することから逃げない私になれたこと、それこそが初心からの一番貴重な賜りもののような気がしてなりません。近年とみに感じております。
(2013.4.2記)