*このエッセイは、2008年(平成20年)3月1日に問題提起した内容です。その4年半前に感じた違和感は、今なお続いているというのが、私自身の認識です。
アクティブマイノリティよ、永遠に!~支えてくれる一言
薬学部四年制アンカー世代の採用活動も、終盤にさしかかっているのでしょうか?
実態は、顧客満足不在の熾烈な争奪合戦のような気もします。20年以上の採用経験から、薬学生の採用のあり方にはずっと違和感を覚えておりました。今年度は、その違和感が沸騰点に達した心地なのです。私の見方が間違っていればいい、と願っております。
その違和感の、ほんの一例から申しあげましょう。
多くの企業様が参加される合同就職相談会での薬学生へのアプローチのあり方・やり方、プレゼンテーションも含めたコミュニケーションのあり方・やり方・内容、…… についてです。
果たして、薬学生が知りたい情報ニーズを、的確にとらえているのでしょうか?!
企業実態を、正しく伝えているのでしょうか?!事実を、率直に伝えているのでしょうか?!
存在価値の高い薬剤師を育てようという使命感に基づいて、採用という任務を全うしようとしているのでしょうか?!
就活中の薬学生から、こんな声を聴きます。かなりの方々からの声です。
「どの企業も、同じようなプレゼン方法で、同じようなプレゼン内容です。だから、どこが違うのか分かりません。みんな同じように見えてきます。何が本当なのか、判断できません」
合同就職相談会や会社説明会は、薬学生にとりまして重要なコミュニケーション機会です。“コミュニケーションとは何ぞや!”ということ(コミュニケーションの定義)を十分に理解し、薬学生が真の企業実態を判断し選別できる内容と対話を当たり前に実践することが、採用企業には求められるはずです。
これでは、「薬剤師に必要なのはコミュニケーション能力だ」と前置きして、「弊社の教育システムは、非常に充実している……」と強調したところで、まったく説得力がありません。世間の強風を受けていない多くの学生を、その気にさせることは可能でしょうが、問題意識旺盛な学生にはお見通しなのです。そのような当たり前のことに気づいていない鈍感さが、数年後に大きなツケとなって表れてくるように想像しております。結論は、プロ不在なのです。実力不足なのです。
人事・採用・教育のプロの育成、プロマネジャーの育成こそが、調剤薬局における大命題ではないでしょうか。自他ともに認められるプロになるまでには、専任として本腰を入れて育成したとしても、数年は要するでしょう。だからこそ、直ぐに着手すべきだと強調したい。特に、人事・採用・教育担当の育成は、お手本になる人材を探し出すことから始めないことには手が打てません。
採用活動のあり方(薬学生にとりましては就職活動)につきましては、今までも何度となく警鐘をならしてきました。また、合同就職相談会におきましては、薬学生の皆さんに直接「就職活動の目的は何ですか?」「あなたの目指す薬剤師は、どのような薬剤師ですか?」という問いかけをメインにしております。
私は、可能な限りアクティブマイノリティとして、これからも果敢に問題提起をしていきたいと思っております。還暦を過ぎても、そこまで頑張れるのには、理由があります。支えてくれる人や応援歌があるからです。
今回のエッセイは、私を勇気づけてくれる心のメッセージの一部です。
同じ会社の人もあれば、知人・友人もいます。就活で出会った学生もいます。年齢層も、いろいろです。
☆「井上さんや○○さんに出会って、『おかしいと思うことはおかしい』『間違っていると思うことは間違っている』と言っていいのだと安心しました。でも、上に立つ方が、その権力を簡単に使ったときは、私の中の何かも崩れてしまうと思います。…… 」
★「私たちのような(目立たない)社員の声も、最後まで聴いてくれる人が身近にいるから、信頼してついていくことができます。今回は、有難うございました」
☆「みんな、井上さんの問いかけを、真剣に受け止め、考えている様子が(研修所感から)伺えます。効果がどうであれ、考える機会を与えること、それを文章にすることの重要性を考えさせられました。続けていけば、良い結果が確実に出ると思います。文章内容を個人個人評価する必要はないと思います。井上さんの考えや方向についてきてくれることを評価することが、大事なのではないでしょうか」(私の主催した研修所感をお読み頂いての感想)
★「今の世の中、真剣に自分と向き合うことが出来ずにいる人が多いと思います。また、それを誰かに聞いて欲しくても、マジになっている自分が“格好悪い”と思ってしまい、なかなか話せないのが実態です。だから、若い社員が皆の前で自分の夢を語れたことは、とても貴重な経験になったことでしょう。この研修のテキスト、井上さんの思いがたくさん籠められています。心から感動しました」
★「私のこの一年は、順風満帆ではありませんでした。ただ、これからの薬剤師の事を真剣に考えている井上さんにお会いできたことが、大きな収穫でした」
☆「現状の実態は、惨憺たるものですが、孤軍奮闘するしかありません。そんな中で、井上さんとより踏み込んで親交を深められて良かったと思います。来年も、いや一生ご指導、ご教授頂ければと思います。井上さんのような方と、一緒に仕事ができればどんなにか…と思います」
★「実は、今の仕事を辞めることにしました。理由は、このままでは、私自身がおかしくなると思ったからです。……でも、この仕事を通じて井上さんのような人生の先輩と出会うことができたので、何かを恨んだりすることはしません。この数年の経験を、これからの人生に活かすことで恩返しをします。有難うございました。これからも相談にのってください」
☆「井上さんのような企業の採用担当は初めてです。価値観が変わりました」
★「久しぶりに井上さんとお話ができて、モチベーションが上がりました。ここのところ、マイナス思考で後ろ向きになっていました。感謝しています」
★「井上さんには、この11年間、私のような未熟者を、本当に根気よくご指導頂きました。決して楽しい思いばかりとはいえず、厳しいお言葉に泣いた日もあります。悔し涙や怒りで取り乱したことも、数えきれませんでした。今現在、社員たちの前で、自分の思いを素直に話せるようになったのも、これまでの日々があったからこそ、と実感しています。温かいお叱りの言葉とアドバイスに、心から感謝いたします。これからも、距離を置いて更に??咤ください。“我以外皆師也”」(私の転勤時に頂戴した部下からの手紙より)
☆「……。いまこうして昔の日記をもとに手紙を書いていると、実に多くの方々が私を支えてくれたことに、改めて気づかされます。そして、人の温かさをこんなにも有難く感じることができたのは、自分が仕事を通していろいろな体験をしてきたからだと思うのです。 …… そして私たち社員のお父さん井上部長。会社訪問の時から、“強く人をひきつけてしまう不思議な力を持っていらっしゃるみたい”と思っていました。温かくて,穏やかで、いつも笑顔で、でも仕事に対しては情熱的で、厳しくて…。とても尊敬していました。大好きな部長でした。ですから『何であんな奴を採用したんだ』と言われて部長に迷惑をかけないように、一生懸命仕事に取り組んだつもりです。部長の不思議な魅力は、今になってもわかりません。しかし、一つだけ、人間が大好きなのだということは発見できました。それは部長の目でした。部長の目は、会社の中の誰よりも優しく厳しい目でした。何も話さなくても、みんなお解りになっているように見えました。あんなに素敵な目をされていた方を、私は他に知りません。 … この会社に入社し、多くの方々に囲まれて思いきり働くことができ、大変しあわせでした。様々な機会と可能性を与えてくださった皆さまに、心から感謝いたします。それから、部長のご期待に添えなかったばかりか、何のご恩返しもできずに会社を去ったことを、どうかお許しください」(入社4年目で結婚退社した元社員からの10数枚の手紙より)
〔参考〕アクティブマイノリティとは:多勢に異を唱える果敢な少数者 「人はなぜ、足を引っ張り合うのか」齋藤勇著(プレジデント社)より
(2008.3.1記)