エッセイ17:悔しい体験から逃げないこと

投稿日:2012年5月23日

 5、6年前から、「心の筋肉を鍛える」というテーマについて言及することが、非常に多くなっています。その必要性がさらに高まっている、というのが私なりの実感です。
 その中から、約2年前のエッセイを取り出して、改めて考えてみました。
 以下、その時のエッセイです。

悔しい体験から逃げないこと

 これからの重要な教育ニーズとして、「心の筋肉を鍛える」ということを申しあげたことがあります。また、最近、「忍び、耐えることを知る」というテーマで、同じような問題を投げかけました。
 薬学部六年制世代の一期生は、再来年の4月にデビューします。超目玉カリキュラムの五年次実務実習もスタートしました。薬剤師としての専門能力を強化することは当然のことですが、それと同時に(それ以前と位置づけたいほどですが)、人間の命を預かるために避けては通れない心の筋肉の鍛錬こそが喫緊のテーマであることを、現役薬剤師や教育関係者が、どれだけ問題意識として持っているのでしょうか!?
 私の眼には映ってはこないのです。薬剤師が仕事の中心として機能している業種の各企業は、未熟と判断した薬剤師の肩叩きをするだけではなく、どのような考え方で、どのようなやり方で、プロ薬剤師を育成していくのか、真剣に考えて欲しいのです。今まで、本気になって取り組んでこなかった人材育成のツケが出てきているのです。また、大学関係者には、現場の薬剤師の実態を充分に把握して、医療人としての基盤となる総合的な教育を徹底して頂きたいと切望いたします。

 このような実状だからこそ、今回もつぶやきます。これからも言い続けます。

      悔しいことから、目をそらすな。悔しい体験が、エネルギーになる。
 
 この言葉は、研修ノートにメモ書きしていたものです。出所は不明です。

 会社というところは、修練の場なのです。鍛錬の場なのです。仕事を通して、協働作業を通して、自分自身をブラッシュアップしながら、会社に貢献する場であり、社会のお役に立つ場でもあるのです。
 その仕事というものは、やりがいに通じていなければなりません。しかし、やりがいというものは、そう簡単には手に入りません。仕事経験が浅い段階では、特にそうですね。思うようにいかないこと、失敗することの方が、多いのではないでしょうか。だから、挫折したり、心が折れそうになることだって起きてきます。社員同士が比較されたり、優劣を評価されることだって、現実には存在します。嫌な思いをすることだってあります。悔しい思いだって、何回もするでしょう。投げ出したくなることも出てくるでしょう。
 それでは、一体どう対処したらいいのか、ということになります。

 挫折感や悔しい体験を乗り越えてやりがいに到達するには、その出来事から目をそらさないで、シッカリと向き合うことしかありません。向き合って、何らかの答えを出すしかありません。誰だって、悔しいことから逃げたい、と思うことがあるでしょう。しかし、逃げ出したい、忘れようとすればするほど、結局、嫌な気持ちだけが残ってしまいます。解決してくれません。職場を逃げ回って転職を繰り返してばかりいては、いつまで経っても先へは進めません。仕事から逃げ出していては、ズルズル後退するだけです。
 余ほどのことが無い限り乗り越えていけるしなやかな心の筋肉は、学生時代から鍛錬することです。医療に携わるビジネスパーソンの宿命として捉えることです。“悔しいことから目をそらさないことは当たり前”と覚悟することです。これを乗り越えないと、無くてはならない存在にはなれないのです。薬学生の実務実習では、決められたカリキュラムを消化することだけではなく、そのようなメンタル面の教育がもう一つの柱になることを切望しております。

 そうは言っても、悔しさや挫折から乗り越えるのは簡単なことではありません。私自身の過去を振り返って、つくづく思い知らされます。だから、30歳以上の先輩薬剤師には、その旗振り役であり、そのサポート役になって欲しいと思うのです。常に、とは申しません。気づいた時で構いません。そうして頂きたいと思います。人間相身互いなのですから。

                                                          (2010.8.23記)

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