エッセイ9:東日本大震災を経験して、改めて問い質したい課題!

投稿日:2012年2月1日

今回のつぶやきは、平成23年4月7日(木)のエッセイをもとに、11月5日(土)に加筆修正したものです。12月にアップ予定でしたが、HPの工事中のために年を越してしまいました。

東日本大震災から一ヵ月を過ぎようとしている段階で感じ始めたことがありました。その時の私の虞(おそれ)は、“喉もと過ぎれば熱さを忘れ”の予感でした。もう一つは、“想定範囲を超えてしまって・・・ ”という言い方は、後に冷静になって考えてみれば、虚しい言い訳と言われても返す言葉がなくなってしまう、という懸念でした。自分の力不足を、謙虚に看脚下しないままで終わってしまうことへの危惧でした。

その予感や懸念に対する確かな根拠なんてありませんが、考えられる課題があるとすれば、“その原因の多くは、大震災とは何ら関係のないところ(つまり、平時)にあるではないか”という直感のようなものでした。有事の際には、経営者や管理者が、“それまでの間、どのようなスタンスで、どのようなマネジメントを実践してきたのか”が問われるのではないか、“信頼と安心のマネジメントを、日々誠実に実践してきたかどうか”が、このような非常時に顕在化してくるのではないか、という問題意識でした。

 そこで着手したのが、改めて問い質したい課題をまとめておくことでした。それは、私が取り組むべき課題にもなっていくものです。10月で高齢者(65歳以上)の仲間入りをしました。その中から、私自身が出来る事を試行錯誤していくことにしております。

 以下、「東日本大震災を経験して、改めて問い質したい課題!」(平成23年4月7日記)の一部になります。勘違いや勉強不足もあるでしょう。様々な思いの方々が集まり、意見交換や議論の輪が拡がることを期待したいと思います。

東日本大震災を経験して、改めて問い質したい課題!

1.会社のビジョンを再構築すること。現状を点検したうえで、これからの会社のあり方、進め方

を再構築すること。構築できたら、そのビジョンを、全社員に発信して、共有化すること。

ビジョン構築の背景は不変です。企業理念の実現経営環境変化への即応の二つです。

今回の大震災は、経営環境の大々々変化にあたります。先ずはこの有事への対応は当然ですが、一方では客観的将来構想を描き直すことも必要です。そのためにどうするかという考え方やアイディアも含めて、記憶が鮮明で、危機感や問題意識が高いうちに考えて意思決定する、ということです。そして、これからの経営資源(人、物、金、ノウハウ、情報、時間)のあり方と、社員(人財)育成のあり方を、再構築するということです。

後述しますが、ビジョン実現のために日々行動するのは社員、つまり人です。実現のための誠実な行動を促す一番の要因は、経営者の企業理念に基づいた真摯な姿勢と態度です。それが、社員の信頼の源泉となり帰属意識につながっていきます。そして、帰属意識の高いベテラン社員(社歴の長い社員)が何人もいなければ、活性化した職場風土の継続は不可能であるばかりか、CSRなんて絵に書いた餅になってしまいます。

すなわち人への投資(=人材教育)こそが、会社の実力養成の基盤なのだということです。

もっともっと視野の広い薬剤師の育成が求められていると思います。そのことに気づかなければ、総合的なビジョンを描くことが出来ないのだと思います。私の考えが勘違いであることを祈ります。

2.『患者&生活者のための地域医療のあり方(ビジョン)と仕組み』、『それを具現化する実践の

場である(かかりつけ)薬局のあり方』を、具体的な青図として再構築すること。

*今回の非常事態から、地域医療のあり方についても考え直さなければならないということを、学びました。

この機会に、今までの甘さを謙虚に認めて、“地域医療のあり方”、“かかりつけ薬局のあり方”を再構築して

世に問うていくことを、復興の象徴(旗)にすべきと考えます。

3.会社の属する業種として“企業の社会的責任(CSR)とは何か”を、社員と顧客に解る言葉

で構築すること。そして、この機会を逃すことなく、真剣になって“インテグリティ(Integrity)

を高める”行動を起こすこと。

*この場合の業種というのは、例えば“調剤薬局”、“ドラッグストア”など。別の切り口として、“医療施設”、

“かかりつけ薬局”なども考えられます。

    私たちは、薬剤師という永久ライセンスに胡坐をかいてきたのかもしれません。特別な資格と位置づけて、

同業他社や他職場はもとより、他職種との協働や連携にも、積極的に取り組んでこなかったように感じてお

ります。尽力された方々もいらっしゃいましょうが、それが現実ではないでしょうか。

そのようなことからも、企業規模の大小を問わず、企業に問われているCSR(企業の社会的責任)につい

て、真摯な姿勢で再構築する必要性を感じております。

4.知識は多いほど良い。だから、問題意識と好奇心を高めて、学び続けること。

*“知識”と言っても、いろいろです。

ここで問いたいのは、①基本知識、②正しい行動理論(心構え、判断基準)と倫理観、③前向きな行動習慣、

④豊かなヒューマンスキルなどです。無駄と思える勉強でも、非常時にこそ役立つことだってあります。

知らないことは、なにも出来ません。出来ないことには、日常だけではなく、非常時では全くのお荷物と

なります。

基本知識には、業種・職種・職能などを問わず、全ての仕事に共通する基本知識(共通専門能力)と、それ

ぞれの業種・職種・職能ごとに異なる基本知識(固有専門能力)の二つがあります。調剤薬局の場合、共通

専門能力の修得機会があまりありません。そのことに気づき、手を加えていかないことには、話しになりま

せん。早く気づいて欲しいと願っております。

また知識修得を、お手軽な検索で済ましていてはダメではないでしょうか。正しい知識、掘り下げた知識を

学ぶことに腐心して欲しいと思います。付け焼刃では、肝心な時に役には立ちません。

私は、基本教育・基礎教育の重要性を、何度も何度も言い続けてきました。実践し続けてきました。そして

“継続は力なり”というシンプルな行動指針は、基本修得の絶対条件として問われるべきものです。

5.仕事の進め方の基本として、PDCAサイクルを当り前にスパイラルアップすること。

*PDCAサイクルと6W3Hを、仕事の進め方のインフラとして定着させることです。「目標と自己統制に

よるマネジメント」を、企業風土活性化のプラットフォームとして導入することです。この「目標と自己統

制によるマネジメント」は、「信頼関係によるマネジメント」になります。さらに、この信頼関係というのは、

委任と権限委譲が土台として存在しなければなりません。権限委譲の無いところに職責追求はありえません。

「目標と自己統制によるマネジメント」の導入があって始めて、現場密着型の人材育成が機能していくこと

でしょう。方針不明示、放任主義で結果責任のみを追求するマネジメント運営では、やる気も衰退してしま

います。

6.気づいたこと、決めたことは、即実行すること

そして、成果が見えるまで、実行し続けること。身につくまで、実行し続けること。

7.人材育成は、何があっても継続して実施すること。

*「人材育成の最高の教材は、目の前にある問題であり仕事そのもの」です。

私の経験則では、“大変な状況が収まってから考えて…”というやり方で、成功した例(ためし)はありませ

ん。そして、逆境の時にこそ、それを乗り越えて頭角を現した人間を何人も見てきました。平時であろうと

有事であろうと、今、眼の前にある問題解決を通して人間は成長します。平時と有事の違いがあるとすれば、

育成テーマと内容、進める上での手法が違うだけです。

また、人材教育は直ぐに答え(=業績への反映)が出てきません。育成とはそんなものです。拙速でその場

しのぎの効率主義のもと、一貫性の無い人材育成をやっていたのでは、正に非常時に通用する人材は育たな

いと肝に銘ずるべきと考えます。

(2011.11.5)

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