エッセイ7:私の提唱する「教育の基本理念」(人材育成の着眼点)

投稿日:2012年1月5日

 カレンダーが新しくなりました。平成24年(2012年)版です。元旦が日曜日スタートですから、何気なく切りの良さを感じております。

 年が明けても、あの3・11が頭から離れません。同志との相互啓発を継続しながら、問題意識や方向性を共有し、試行錯誤を繰り返していくことを、静かに、しかし強く心に刻んでおります。

 年頭に当たって、これからも私が関わっていく教育活動の方向性を見失わないように、私の行動を支えてくれているバイブルを開いております。

 そのバイブルとは、「教育の基本理念(人財育成の着眼点)」と「教育活動の基本原則」です。新年の幕開けエッセイは、それらを紹介させて頂きましょうか。今回は、「教育の基本理念」(人財育成の着眼点)です。

私の提唱する「教育の基本理念」(人財育成の着眼点) 

  

先ず、7年ほど前のある研修会の講演で申しあげました企業内教育の土台に関する見解の一部からご紹介したいと思います。

ヒト・モノ・カネ・ノウハウ・時間・情報・システム・・・、数ある経営資源の中で、イの一番にあげられる最高の資源は何でしょうか?私は、「ヒト、つまり社員一人ひとり」を断固として支持いたします。

その社員の育成(企業内教育)について意思決定する時、その判断基準は一体何処に求めることになるのでしょうか。私は、過去20年間の人事・教育の仕事を通して、“企業内教育において必要不可欠な土台は何か”ということが、ハッキリと見えてきました。

 企業経営の土台が企業理念であるのと同様に、教育理念が人財育成のグラつかない幹として必要なことが。それは、社員のためにということだけではなく、最終的にはその企業の顧客のためなのです。

 そして、私の考える「教育の基本理念(人財育成の着眼点)」を解説いたしました。その10か条を披露させて頂きます。20数年前に草稿して、何度か表現を変えて、現在に至っております。

●理念1『会社にとって一番の資源であり財産は、社員一人ひとりである』:人財

  どのように優れた業務システムも、ナンバーワンorオンリーワンの患者様サービスも、それを考え出し実践していくのは社員です。人間です。その社員一人ひとりが、CS(顧客満足)という視点で、自己動機付けをしながら仕事に励んでいく原点は、人財第一主義以外にありません。

 私は、昭和63年頃から“人財”という表現を使い始めました。

●理念2『私達の使命は「顧客に“有難う”と感謝して頂くこと」つまり、「顧客のお役に立つこと」である。そのためには、理念・方針に基づいたアクションプランを誠実に実行し、目標・目的を達成することである』:顧客満足、社会貢献

  企業の永続的繁栄は、顧客に満足して頂けたかどうかで決まります。顧客に支持されない企業は、栄枯盛衰の道を歩むのです。それは、歴史が雄弁に物語っております。

  薬局の場合、顧客は患者様に限定しがちですが、地域の生活者を忘れてはいけません。東日本大震災から授かった強烈なメッセージなのです。

  実現のためには、企業理念と基本方針実現のための具体的計画を、日々コツコツと、積み上げるように実行するしかありません。言行一致、知行合一です。

●理念3『企業は環境適応業である。その秘訣は、オンリーワンの価値を創造することである』:創造

  企業運営を不易流行に置き換えてみると、企業理念は不易ですね。

 それでは、流行は何でしょうか?それは、経営環境の変化に対して即応していくことではないでしょうか。その大元は、私達の顧客です。顧客も変化します。そういう意味では、年2回位、我が社の顧客は誰なのかを、再定義してみることが重要になってきます。その顧客が求めるニーズ・ウォンツへの対応が、オンリーワンのノウハウに繋がっていくと思います。

  オンリーワンとは、“競合する他社に真似の出来ない競争優位性”のことです。

●理念4『教育とは「共育」なり』:共育

  「教育とは何か?」、私にとりましては永遠の課題かもしれません。昭和62年頃に、その命題に初めてぶつかりました。その結果が、『教育とは「共育」なり』でした。

 その根底は、人間は一人では生きていけない、という実体であり実感からでした。自分一人の 力で成長したというのは、驕りのように思います。自己責任と自主自立が基本ですが、多くの人に支えられて現在の自分があることも事実なのです。今この時も、これからも不変なのです。

●理念5『私達の能力を発揮する場所は、仕事場である。最終的には、顧客との接点である現場や窓口、日常のオフィスとなる。そして、一人ひとりの仕事そのものが、最高の能力開発機会(チャンス)である。このことは、自分の手で課題を見つけだし、仮説を立てて、PDCAサイクルをスパイラル状に回すことを意味する』:仕事が教材

  最高の育成テーマは、まさしく仕事そのものです。日々の出来事です。日常の仕事や出来事を教材に出来るのは、本人とその上司の“問題意識”と“感受性”ではないでしょうか。育成&成長の教材は、自分の周りの身近なところに転がっています。自分事(じぶんごと)として捉えたいものです。そして、解決するためには、具体的な目標と6W3Hを動員した計画が不可欠です。

  結局、“成長という産物は、簡単には手に入らない”と、最初から認識して対処するべきものではないかと、つくづく感じてしまいます。

●理念6『人財育成は、企業全体と各組織の最重点任務である』:自己責任

  人財育成は、言うまでもなく、企業存続の主要課題の一つです。

  マネジャーといわれる方々(職位名を問わず、部下を持っている人全員)が、自己責任として全力投球を求められる任務なのです。そのことが肚におちていなければ、企業内教育は“絵に画いた餅”で終ってしまいます。

●理念7『育成の要諦は、育成責任者であるマネジャー層が、赤々と燃える「育成魂」を持ち、メンバー一人ひとりの成果につながる目標を明示し、試行錯誤させて、挑戦した努力と成果に報いることである』:個別育成、客観的評価

  この理念は、マネジャーに不可欠な基本スタンスを表しております。これが出来るマネジャーの率いる組織は、継続的業績向上が当たり前の集団になります。

そういう意味では、人財育成の優先順位筆頭は、マネジャーということになります。自己啓発することに、上手に時間と費用を投下しているマネジャーが、今こそ求められています。

●理念8『育成の原則は、「修・破・離」である』:修破離

  修破離の意図するところは、「採用担当者つぶやきエッセイ 第21話:人財育成の秘訣は、やはり修破離」を、ご覧頂きたいと存じます。

●理念9『育成の評価は、実践度とスキルアップ度で決まる。そのために、「やるべきことは何かを知って、出来て、実行している」状況を、日々メンテナンスしていくことである』:知・技・実行

  人間知らないことは出来ません。出来なければ、アクションを起こせません。当たり前の理屈です。原理原則です。一方、やってみなければ出来るようになりません。また、出来るようになるためには、知識が必要になります。これも当たり前の原理原則です。

 さらに、知っていること(知識)や出来ること(技能・スキル)も、使わなければ錆びついてしまいます。新しい能力も必要になってきます。だから、日々のメンテナンスが重要となってきます。

  先ずは、一心不乱に学ぶ。出来るようになるまで、諦めずに実行してみる。そうすれば、自ずと能力はアップしていきます。

●理念10『教育の成果は、継続的業績向上と人格養成である』:業績向上・心を耕す

  企業内教育は、ボランティア活動ではありません。企業の成長に貢献して、初めて認められる仕事です。その成果判断の指針を、“業績向上”と“企業理念の具現化”の二つにしました。企業理念具現化のファクターは、考えて考えて考えた末に、人格としました。

 以上10項目が、私の「教育の基本理念」となります。

 皆さん方と、大いに意見交換したいテーマなのですが……。

(2012.1.3記)

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