エッセイ208:出向く、会う、そして対話する~ 私の転職活動作法

投稿日:2020年6月20日

  ※エッセイ208は、2020年1月18日(土)に脱稿したエッセイです

 回数は減りましたが、気が向けば書店巡りを続けております。習性と申しましょうか、必ず立ち寄るのがビジネス書コーナーです。部下を持つようになり、企業内人事教育部門に従事してから、かなりお世話になったのがビジネス書です。人材育成やマネジメントの基本的イロハを始めとして、ビジネススキルのノウハウを身につけて、世の中のお役に立てるような人財になるための、身近で頼りになる存在でした。30年経った今でも、ビジネス書コーナーのスペース占有率は、上位を占めていると感じます。だからといって、お金を出してまで購入したいと思う書籍に、以前ほどは出会わなくなりました。また、気になることがあります。“オーバーだな!”、“本当かな?”と感じてしまうタイトルがあることです。『この一冊を読めば解決する』、『結果にコミットする』などのような即効的PR文言に人気があるようです。それらを否定はしませんが、私のようなコツコツタイプの人間は、どこか胡散臭さを感じてしまいます。私にとりましては、何事においても、丁寧に堅実に積み重ねて形作る作業にこそ、本質を見出すことが多いような気がするからです。そのような感覚が積み重なってからは、ビジネス書は所詮ツールと割り切って、その時々の自分自身に役立つところだけ摘まみ食いし、利用することがあっても良いと考えるようになりました。客観的に振り返れば、30才台後半からの10数年間は、そんな時代であったと反芻しております。

 さて、ビジネス書から摘まみ食いしたキーワードに、四直四現主義というのがあります。その場合の「直」は、“直ちに”という意味と理解しておりましたが、もう一つ“直接”という意味もあると考えております。対人関係においては、直接ということがより重要だと感じることが多いからです。人事業務の中でも、採用やメンタルヘルスケアの仕事を通して、強~く実感しております。ある時期から、求職者とは、必ず出向いて直接お会いすることにしました。この作法は、私が逆の立場(求職者となった場合)になっても変わりありません。Face to Faceこそが、信頼のコミュニケーションの原点だという確信からです。今回は、転職活動のあり方について、私の体験を織り交ぜながら考えてみたいと思います。

出向く、会う、そして対話する~ 私の転職活動作法

 私が転職を決意したのは2000年(平成12年)の夏真っ盛りで、数ヵ月もすれば54歳という時期でした。翌年の1月1日付で、24年間お世話になった会社を退職いたしました。それ以降、5社で仕事をさせて頂いたことになります。

 最初の転職から現在までの19年間、確か15社の企業面接に応募したと思います。業種別の内訳は、調剤薬局9社、ドラッグストア3社、スーパーマーケット3社と記憶しております。その中には現在東証一部上場企業も数社ありました。本社所在地は、大阪・名古屋・郡山・仙台・青森・八戸・盛岡・釜石の8都市になります。仙台の会社が多かったですね。人材紹介業からの紹介、企業から直接、知人の紹介など、きっかけは様々でした。最終的にお世話になった5社の内、4社は経営者との直接面接を通して社員の身分で採用して頂きました。残りの1社は、経営者からの依頼で、フリーランスとして採用と社員教育を数ヶ月間限定でお手伝い致しました。

 どのような経緯での面談・面接でも、或いはお見合い的な食事の席であっても、私の方から出向いてお会いすることが、私の転職活動における基本作法だったと思います。その姿勢は、今も変わらない私の作法の一つとなりました。さらに、転職活動だけではなく、どのような仕事においても、私の方から極力出向く姿勢を貫くようになったのでした。

 先ずは、“何故、私の方から出向いてお会いするのか”について、キチンと申しあげておきましょう。一番の理由は、そうすることが相手に対する当たり前の礼儀であり、相互信頼関係樹立の沈黙のアプローチである、ということです。この考え方は、私のそれまでの仕事経験、それも多くの失敗経験によるところが大きいように思います。二つ目の理由は、会社の実態を直に観察して、私の膚で感じることを重視することにあります。自律意識・自己責任意識が根底にあって、四直四現主義で対処することが身についていたからでしょう。そのような考えから、面接は会社にお伺いするようにしております。入り口を跨いだ段階から、社風の一端を感じ取ることができます。受付での応対から、その会社のお客様に対する姿勢が、ハッキリと見えてきます。顧客満足実現を謳う企業理念が本物かどうか、受付から始まる応対で明らかになるのです。ある会社では、予約した時刻が過ぎて30分以上も、待たされたことがありました。受付には腰掛ける場所がありませんから、立ったままで待たなければなりません。また、受付には衝立があって、オフィスからはブラインドになっており、訪問者・来客者を気にかける姿勢も感じられませんでした。制服着用の社員と思われる方に取り次いで頂きましたが、どのような対応をされているのか、反面教師としてあれこれ想像の羽根を広げたことを思い出します。社員教育、日々のコミュニケーションのあり方など、顧客満足のあり方を学ぶ機会になりました。

 もう一つの重要な理由は、入社後のミスマッチをいかに少なくするか、ということです。新社会人と違って、ある程度の年齢に達してからの転職は後戻りできません。多少のミスマッチは覚悟するとしても、大人の対応として、入社前に確約しておきたい必須項目がいくつもあるのです。その必須項目は、入社後の期待される職能(役割、具体的職務内容)、現状の問題点・課題、待遇(給与、役職、権限移譲)などの採用条件に関することでしょうか。納得して転職するためにも、経営者或いは決裁権のある人事責任者から直接お聴きすることにしております。質問は、理由も含めて“率直に”を心がけております。質問に対する回答が曖昧であったり、回答に対して疑問を感じるような時は、納得いくまで質問し続けたこともあります。その段階でthe ENDの企業もありましたね。現実問題として、提示された資料や会社案内だけでは、より正確な実態が掴めません。直接お会いすれば、かなりのことが明らかになります。また、私の考えや能力をどれだけ理解し認めて頂いたのか、私の考えと会社の理念との整合性はどのレベルにあるのか、最終的には、果たしてこの会社でやっていけるのか、などの感触を把握することができます。いずれにしても、ミスマッチはお互いにとって何のメリットもありませんし、入社したとしても再転職の可能性が限りなく高くなります。入社前に提示された採用条件を反故されたことも、一再ならずありました。余談になりますが、そのような体験は私のメンタル面を強くする反面教師役になったと思います。

 私の能力や考え方を、より正確に判断して頂くために、面接時に持参するモノ(オリジナル教材、企画資料など)があります。その主なモノを紹介しましょう。ボリュームがあることから、その一部をコピーでお渡しすることもありました。

  1. 履歴書、職務経歴書(A4版3ページ)

 2.私の経験した主な仕事と内容(A4版2ページ)

 3.企業内教育の活動指針:20○○年版

  ①教育活動の目標/教育担当者の役割・機能/教育担当者に求められる基本要件

  ②人材育成のプラットホーム:EDUCO TREE(教育とは)、教育の基本理念、教育活動の基本原則

  ③My Favorite EDUCO BOX:人材育成の本質を考える、日常の教育機会の指導ポイント、偉大な教師とはetc

  ④人材育成の基礎知識 

 4.調剤薬局の人材育成の一考察

 5.オリジナル教材、教育機会企画資料、最近の自作エッセイ

 今回のエッセイは、私の仕事作法の実態を客観的に振り返る機会となりました。気づいたことの一つは、仕事遂行の原点に関することです。それは、仕事観を始めとした○○観にあると再認識しました。ここからは問題提起です。時々で構いませんから、○○観を見直すことで、仕事のあり方の本質が見えてくるような気がしております。(2020.1.18記)

 しかし、紹介した私の転職活動作法は、新型コロナ禍が終息するまでは実践不可能かもしれません。穴を埋める対処法を、当面の課題として再構築しなければなりませんね。(2020.6.18記)

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