エッセイ101:成熟した大人とは、ルールやマナーを自然体で守っている人

投稿日:2015年12月5日

 今年(平成27年)の6月1日(月)から、改正道路交通法が施行されました。危険運転の罰則強化が主な変更点だそうです。その中での最大のポイントは、何といっても自転車の取締まり強化と言われています。
 自転車は軽車両になります。運転免許は不要ですから、老若男女を問わず誰でもが運転可能です。未就学児が運転している姿も見かけます。今回の改正前から、自転車運転の違反行為が取締まりの対象になることは知っておりました。しかし、実際に取締まりを受けたという話は聞いたことがありません。今回の改正のねらいから想像するに、危険を伴うと思われる違反行為の取締まりは、少しは見逃されることがなくなってくると期待したいところです。そのためには取締まる側のマンパワーが必要になってくると思われます。多忙を極める警察官の仕事でしょうから、それ無しには罰則強化と宣言されても疑問符がついてしまいます。さらに、自転車を取り巻く道路事情問題が根底にあります。交通量調査結果を活かしながら、自転車専用道路の必要性を感じます。
 安全運転の根幹は、運転者自身のマナーとモラルに尽きるでしょう。不特定多数の人間が利用する公共インフラの場において一番留意するべきは、決められたルールを当り前にキチンと守ることでしかありません。何故なら、ルールをお互いが百%遵守することで、安心・安全な生活が維持されるからです。そのことは相手の立場に立った大人としての行動であり、安心・安全な日々の生活の基本中の基本だからです。そこに、明文化されていないマナーが寄り添うことで、お互いにとって気持ちの良い生活環境、それ以上に安全な日常が維持できるのではないでしょうか。ルール遵守は共生の大原則だと思うのです。
 今回のエッセイは、ルールとマナーに関してつぶやいてみます。

成熟した大人とは、ルールやマナーを自然体で守っている人

 日本国民の三大義務の根幹は、一体どこにあるのでしょうか。憲法第12条にある自由と権利の保持義務には但し書きがあって、“これを濫用してはならない。常に公共の福祉のために、これを保有する責任を負う”とあります。
 民主主義下における法律の存在意義は、地球上の空気と同じだと認識しております。その有難味を当り前に享受していながら、その有難味は権利であって義務を果たすことが前提であることを蔑ろして日常生活を送っているのも実態ではないでしょうか。権利最優先、自己都合最優先と思しき行動を、知らず知らずのうちにとっているのかもしれません。それは、明文化されていない常識的ルール、マナーも同じです。
 ある全国紙の「声」欄に、若い看護学生からの強烈な指摘がありました。
 高齢者の乱暴な振る舞いが目につくようになったと思うこと、幼い頃から祖父母に色々なマナーを教えてもらうことが多かった投稿者には、人生の大先輩の姿が悲しいこと、そして、私(投稿者)たちよりも長い人生を歩んできた方たちは常に若い人たちの手本であってほしいこと、… 。具体的事例とともに、率直な感想と大人への期待感が滲み出ていました。
 国民性というのは、正に多種多様で言い表すことが難しいテーマです。そして、所変わればその評価も多種多様なのです。そのような中で、多くの日本人のマナーは高い評価を得られているようで、心の中の誇りでもあります。特に大きな事故が発生した時、大災害時における整然とした行動など、必ずと言っていいほど高い評価として取りあげられています。
 しかし、看護学生の声には、正直ハッとさせられました。ハッとさせられたというよりも、急速に拡大しつつある高齢化社会の負の遺産にしてはいけない心配事となって、正にクローズアップされるべき問題ではないでしょうか。
 キャッチアップ時代の日本を一身に背負って奮闘し、経済大国へと押し上げてきた人生の諸先輩には、それまでの頑張りを掛け替えのない秘めた誇りとして、人生の後輩から「さすが…」と評される人になって頂きたいと思うのです。いや、先ず私自身からそうなりたいと強く感じるのです。そのためには、人生の後輩の手本となることを、当たり前に自然体で実行するしかありません。
 例えば、“状況に応じて無言で範を示すこと“、“譲るべきは成長過程にある後輩に大幅に譲って笑顔で見守り続けること”、“率先して人を信じ人を愛し慈しむこと“、“相手の立場に立った考えや行動を優先すること”、そして“ルールとマナーを当り前に守って社会常識に自然体で馴染んでいること”、・・・・・・ 。
 これらを行動指針として、意識して実践躬行する人を目指したいと思います。

 目の前には、69歳の誕生日が見えてきました。知らない方からは「あのおじさん、さすが」と言われる人生にしなければいけません。これからの人生において頑張るとすれば、その一点に尽きるのだと思っています。
                                                              (2015.9.10記)

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