エッセイ100:エッセイ積み重ね秘話

投稿日:2015年11月22日

 自動車に搭載されている現在のエアバッグの生みの親をご存知でしょうか。
 発明者である小堀安三郎氏が開発に着手したのは、50年以上も前になります。思いついたのは、旅客機に乗っていた時でした。当時はシートベルトの着用は任意だったこともあって、エアポケットに入った時など、天井に頭を打つような事故もあったようです。そこで、荷物を抱えて座席のテーブルに上体を伏せていれば安全だと考え、そこから次のことを思い浮かんだそうです。「自動車にも、衝突の瞬間、空気で膨らむものがあれば安心ではないか」と。
 今では当り前の装備ですが、当時の試作品発表の場では失笑を買い、14の国で特許取得はしたものの実用化に至りませんでした。最初にエアバッグが実用化されたのは、1970年代半ばのアメリカだったそうです。しかし、小堀氏はその普及を知ることもなく、生活苦から夫婦でガス心中を遂げました。1975年8月のことになります。
 こうやってエッセイを書き続けることで、知らないことのあまりの多さに気づかされます。このことは繰り返し申しあげてきたことです。知らなかったことを知るたびに、多くの方の辛酸や労苦から頂戴している恩恵に対してどうやって報いることができるのだろうか、などと考えるきっかけを投げかけられます。謙虚になって、自身のそれまでの行ないを自主的に振り返るよう、促されてしまいます。私はそう受け止めております。そして、倫理観に照らし合わせて決めた目標達成に向かって、倦まず弛まず、キチンと誠実に対処することを導いてくれているような気にさせられます。
 小堀氏のエアバッグ秘話から、エッセイを書き続けた10年半、途切れることなく呟き続けることが出来た理由は一体何だったのだろうか、そんな思いが沁み出してきました。今回は、その独り言の呟きです。気恥ずかしいのですが、積み重ねてこられた秘話とでも申しましょうか …… 。

エッセイ積み重ね秘話

 エッセイ98回(2015年7月20日記)の本文では、つぶやきエッセイをスタートさせた理由や10年間も続けられた理由の一端を、思いのほか淡々と公表させて頂きました。
 最初の1年間(2005年から2006年にかけて)は、継続掲載が主要目的でしたから、精神的なプレッシャーの中で書き続けました。しかし、継続強迫観念で書き続けていく内に、いつの間にか本気スイッチが起動したのです。以来、10年と5ヶ月も呟いてきました。何とか、呟き続けてきました。
 今、その背景と思われる私自身のメンタル面の自己評価、そしてどのようにして呟きを積み重ねてきたのか、積み重ねてこられたのか、ほんの少しだけお話したいと思うのです。

 不器用人間。それは、私自身から観た一番の自己評価になります。不器用さは、緊急的な要請に対して、なかなか対応できない度合いが高かったと感じております。
 何事に対しても恐る恐る状態の中でのスタート人間。これも自己評価の一つです。自信の無い心的状態の中でのスタートがほとんどでしたね。その癖、隠れ負けず嫌いで、やるからには満点を目指そうともします。それは、自信の無さを隠すための意地っ張りとも言えそうです。
 負けず嫌いが度を越せば、頑固さが顔を出します。頑固さが高じれば、ふて腐れに発展し、その結果、何も行動しないままに終えてしまう可能性も大なのです。恥ずかしながら、同じ轍を何度踏んだことか思い出せないくらいです。20才代、30才代は当然のこと、今から10数年ほど前までは、間違いなくそのような傾向が強かったと思います。
 これらの現象は、あくまでも私の場合ということで申しあげております。

 HPへのエッセイ掲載は、正にプレシャーを感じながらの恐る恐るのスタートでした。
 プレッシャーというものは、重荷になると思考回路をも狂わせてしまいます。最大の苦悩は、“何をつぶやいたらいいのか”というテーマとその内容でした。文章も冗長になりがちでしたから、“コンパクトでシンプルな表現を”という課題が、常に頭から離れません。不器用を強く自認する分、不器用を言い訳として投げ出したくなる頻度も高くなります。しかし、負けず嫌いの性分を、“自己責任意識で乗り切ろう”という足掻きに変えて、活力として利用したのだと思います。
 そのような葛藤と心境も、当時の仕事の忙しさで何とか紛らわせて9ヶ月が過ぎました。
 掲載してから半年後、何人かの社員や知人から、エッセイに対する共感の声、期待の声が頂くようになりました。急速に高まってきました。その声に推されたのでしょう。年が改まった2006年1月には、眠っていた本気スイッチがオンになったのです。
 不器用で負けず嫌いな人間が本気になりますと、石橋を叩いてでも渡りきるための目標を定めるようになります。それも背伸び目標です。そうすることは、私なりの必勝策になっていました。負けず嫌いを上手に持ち上げて、その気にさせる戦術だったのです。
 具体的には、以下の5目標を仕事作法(ルイティーン)と位置づけて、シッカリと心に刻み込んでエッセイを積み重ねました。そして、今でも我武者羅に積み重ねているのです。

    目標1掲載エッセイ数を月3話以上とする。
    目標2掲載月の3ヶ月前から準備を始める。
         準備内容は、①テーマ、②テーマ理由、③内容と私の考えの骨子
     目標3:遅くても2ヶ月前からつぶやき始める
         ただし、緊急テーマの掲載は例外とする。
    目標4最低5回以上のチェックを行なう。
          ①テーマ、理由、内容の整合性
          ②誤字、脱字
    目標5配信納期厳守

 こうやって10年間を見直してみれば、秘話としてご紹介するほどの目標(上記目標1~5)でもありませんね。前文で申しあげましたように気恥ずかしい思いではありますが、そのような中でのささやかな自慢の一つは、積み重ねてきた事実でしょうか。そして、強迫観念から脱皮させてくれた目標を強く意識して、何とかやり通そうとした目標必達魂でしょうか。
 以上、積み重ねてこられたエッセイ秘話でした。

                                                    (2015.9.3記)

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