エッセイ68:知識&技能&態度はトライアングルの関係

投稿日:2014年7月19日

 4月3日(木)は、中田薬局での新卒新入社員導入研修の三日目でした。暖かい陽射しに誘われて、昼食時間は外に出ました。
 規模は大きくありませんが、地域に根ざしたショッピングセンターで調理パンと菓子パンを買い、駐車場脇の甲子川沿いで食べることにしました。春先の青空に吸い込まれながら、二羽のカモメが悠々と舞っているという、のどかな風景が目の前に広がっておりました。
 行儀の悪さをチョッピリ意識しながら、土手沿いを歩いて一つ目の調理パンを食べ始めました。半分も食べ終わっていないのに、白いカモメの他に、黒いカラス、そして茶褐色のトンビまでもが、私の頭上を旋回しているではありませんか。ひょっとして…… 。
 嫌な予感を気にしながら、急いで駐車場に戻りました。車内で食べようと思い、もう一つの菓子パンの袋を破って数秒後、真後ろから音も立てずに菓子パンを袋ごとさらわれてしまったのでした。見上げると、茶褐色のトンビでした。旋回しながら、私の隙を狙っていたのでしょう。敬服するやら、どこか情けないやら…… 。
 家族への土産話となりました。

 最近の私のライフワークの一つが、後輩指導、部下育成などの人材育成をテーマとした教材の作成です。その中から、知識と技能と態度の関連をつぶやいてみます。

知識&技能&態度はトライアングルの関係

 ある程度のキャリアを積んだビジネスパーソンの場合、仕事遂行上必要な能力を考える時、現在担当している仕事だけではなく、将来担当する可能性のある仕事も含めて広く考える必要があります。仕事そのものの内容や方法がどんどん変化する時代ですから、将来の仕事に備えての能力開発も必要と考えざるを得ないからです。
 ここでの「能力」は、最も広い意味での能力のことで、その内容は大別して、知識、技能、態度の他に、問題解決能力も含めて四つと考えております。能力をこのように分類する主たるねらいは、それぞれの能力を開発するための教育方法が異なるからである。
 以下、私が主宰しております学び塾用に思案中の“人材育成の基本知識”から、主に、知識、技能、態度について引用させて頂きます。

 まず知識(“知っている”ということ)には、実務知識と基礎知識、さらに問題解決に必要な周辺知識が含まれる。
 実務知識とは、担当する実務作業を遂行するために直接的に必要となる知識のことである。薬剤師の場合、調剤業務、服薬指導、薬歴管理、在庫管理、医薬品分類、医薬品知識、病態生理、個々の患者様のニーズ、関連法規、ITに関する知識などが該当する。経理であれば、管理会計、簿記、伝票処理手続き、取引先情報に関する知識となる。店舗運営であれば、クリンリネス・伝票処理手続き・前進立体陳列をはじめとした店舗運営手順、商品分類、商品知識、商圏特性、お客様のニーズ、流通関連法規等に関する知識などになってくる。実務を正確に遂行していくためには不可欠のもの
である。
 基礎知識とは、体系的に整理された知識、原理・原則等の知識で、実務作業をより広い視野で総合的に判断する時に役立つ知識である。この知識によって、実務の応用性や客観性が高まってくる。患者様の心理、調剤報酬の仕組み、経済や業界に関する体系的知識等がそれに当たる。店舗であれば、消費者の購買行動や購買心理とか、市場や経済の仕組み、流通に関する体系的な知識等がそれに当たる。これらは、バイヤー、スーパーバイザーも同様で、さらにマーケティング、マーチャンダイジングに関する知識も含まれる。
 また職務に関係なく、経営理念や経営方針そして会社概要、コミュニケーション、プレゼンテーション、PDCAサイクル、6W3H、ビジネスマナーに関する知識は代表的な基礎知識となってくる。
 技能というのは、知識を行動に変えるための方法と言われる能力である。“知っている”だけではなく、“出来る”ということだ。仕事の腕前とか知恵、あるいはツボとかコツ、ノウハウと言われる能力で、これには身体的技能と知的技能の2つが含まれる。
 身体的技能とは、反復や繰返しで身につけることができる能力で、調剤技術・薬歴作成・服薬指導が出来るとか、調剤機器の操作、ワープロを一分間で何字打てる、レセコン操作を決められた
通りに出来る、というように身体的熟練に関する能力である。
 知的技能とは、身体的技能が身体の熟練であるのに対して精神的な習熟能力で、いわゆる「仕事の知恵」と言われるものだ。例えば、状況分析力や状況判断力、洞察力、企画力、実行力、管理力、表現力、説得力等が広くこれに含まれる。
 態度というのは、広い意味での「物事に対する受けとめ方」のことで、意欲、意志、物の見方(着眼点)・感じ方(感受性)、問題意識、価値観、あるいは行動理論や行動パターン等も含んでいる。態度は、その人独自の情緒的で非合理的な側面を多分に含んでいるものだ。例えば「仕事に対する責任感が強い」「仲間との協調性がない」「上司に対して従順である」「会社に対する忠誠心がある」「視野が狭い」「向上心が旺盛である」「出来ない言い訳が多い」……といったようなものは全て態度に含まれる。
 人間の能力開発において、この態度がきわめて重要な働きをする。というのは、意欲や意志が強くなければ、知識の修得も技術の体得も出来ないからだ。また物の見方や行動理論は、物事に対するその人の判断基準になるから、それが不健全であれば知識や技能を正しく行使することが出来なくなってしまう。その意味で、態度教育こそ教育の原点であると言われる所以となってくる。
 最後は問題解決能力である。これは、問題を積極的に見つけ出したり解決したりする能力で、広い意味にとらえることとする。この問題解決能力の発揮には、知識・技能・態度の三者が一体となって、総動員で使われる。バラバラでは問題は解決しない。例えば、どんなに知識があっても、それを上手く使いこなす技能と意欲がなければ問題は解決できないし、どんなに意欲があっても、知識と技能が伴わなければ行動は空回りをしてしまう。知識と技能がどんなに優秀であっても、行動する意欲と意志がなければ、その能力は結局のところ宝の持ち腐れで終わってしまうことになる。
 このように問題解決能力とは、それらの個々の能力が有機的に統合された能力なのである。そういう意味で、問題解決能力は知識・技能・態度の三つの能力が一体化された、いわば「総合的能力」といえる。

 問題解決能力の項でも触れておりますが、知識・技能・態度には密接な関係があります。社員の育成責任を有する皆さんには、その密接な関係を常に意識して、有効で有益な方途を選択して頂きたいと思います。
  知らないこと(知識)は出来ないし(技能)、やる気にもならない(態度)。
  やる気があれば(態度)、いろいろなことを知ろうとするし(知識)上達も早い(技能)。
  出来ることは(技能)やる気も出るし(態度)、勉強もするようになる(知識)。

 さて、今回のエッセイ、如何でしたか?皆様方は、どのように思われましたか?どのようにお考えでしょうか?

                                                                 (2014.5.7記)

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