エッセイ61:四半世紀も続けている私のあるオリジナル作法

投稿日:2014年4月6日

 数ヵ月も前でした。些細なことでしたが、情けない失敗をしてしまいました。
 何とか解決し終わって、一週間ほど経ってからだったでしょうか。その失敗の原因が初めてではないということが、遠い昔の郷愁のような感覚として、漣のように押し寄せたのです。20年ほど前の同じような光景が、日が経つにつれて鮮明になって表れてくるのでした。
 なんで同じことを。それも厭きれかえるほどの初歩的ミスをやらかしてしまったのです。
 問題解決の基本として、口が酸っぱくなるほど、言い続けていることがあります。四直四現主義で事実確認することです。それに反して、経験則を優先させて、事実確認を怠っていたのです。中途半端な事実確認で済ませようとしたのです。先入観:事実確認=8>2状態だったのです。
 経験を重ねることで、その豊富な経験則で的を射ることが増えることも事実です。しかし、事と次第によっては、成功体験が通じないケース、過去の成功体験では通用しないケースも出てきます。かなり苦い経験もしました。
 今回は、ごく小さな問題であるという認識と、自分自身の多忙さにかまけてしまい、曲者である先入観が事実確認という基本プロセスを省いてしまったのです。結局、怠慢でしかありません。これでは、“学習効果の低い人”というレッテルを貼られても、受け容れざるを得ないことになりましょう。まだまだ未熟な自分自身であることを自覚して、謙虚に看脚下することにしました。常に、“初心忘るべからず”なのですから。
 そして、生涯未熟であることを心にしっかり留めて、私の座右銘でもあります“誠実に向き合って対処する”ことを、改めて実践しようと反省しております。そのためにも、今でもやり続けているある事をつぶやいて、基本のあり方を復習することにします。

四半世紀も続けている私のあるオリジナル作法

 研修の運営、講話、祝辞、スピーチなど、人前でお話しする時、もう26年以上も続けている作法を紹介させて頂きます。
 たとえ1分間の自己紹介であろうと、30分間の講話であろうと、さらに3週間にわたる合宿研修であろうと、全て同じスタンスでやり続けている井上のオリジナル作法です。
 それは、私の担当する全ての時間の原稿を一字一句作り、極力暗記して臨むということです。それを誠実に実行するためには、多くの時間を要することになります。それを承知でやり始めたのが、1988年(昭和63年)前後でした。私流の一定のフォルムに到達するまで、10年近い試行錯誤を繰り返したと思います。膨大な時間とかなりの費用を投下しました。

 その作法手順の骨子は、以下の様になります。研修トレーナーの場合で申しあげましょう。

〔ステップ1:受講者の教育ニーズの把握とねらいの確定〕
 研修受講対象者の教育ニーズを把握し、ねらいを明らかにして確定します。それは、研修コース全体とカリキュラム毎に設定します。

〔ステップ2:ストーリーの策定(全体、各カリキュラム)〕
 研修全体のストーリーを考えます。確定したストーリーに沿って、カリキュラムの順番を策定します。この段階は、研修全体の成果に大きく影響する肝心要の部分になります。
 何かの都合を優先させたり、教育機会の消化主義などで、カリキュラムを意図もなくランダムに並べることだけは、よほどのことがない限り認めません。ですから、それが3週間続こうとも、全てのカリキュラムを私自身が運営できるよう努力します。
 進め方、運営ツール、教材、補足資料なども、この段階で企画し作成します。
〔ステップ3:カリキュラム毎のトーク原稿の作成〕
 全てのストーリーが確定したら、カリキュラム毎に、主要なキーワードを吟味して選択し、所要時間に沿って一字一句原稿を作ります。何度も見直しをかけますから、この作業に一番時間を要します。時間を惜しまずに推敲します。ここは二つ目のキモになります。
 同じカリキュラムでも、受講対象者の職種、役割、職歴、経験年数が異なることもあります。その場合は、受講者のプロフィールに則して、原稿内容も作り変えます。

〔ステップ4:原稿の暗記とロールプレイングの実施〕
 原稿が出来たら、一字一句暗記します。何度も何度も声を出して、納得するまで暗記します。実施日が近づくと、寝床についても、朝起き掛けの布団の中でも、リフレインする日々が続きます。事前準備の最終難関になります。

 この作法を自分が当り前に習慣化するための歯止めとして、T販売時代には、私が担当する全カリキュラムをビデオ撮影しました。気になった部分は、何度か見直して改善することを課したのでした。10年間は続けました。
 講話、スピーチ、祝辞の場合も、基本的には上記ステップと同じ手順を踏んでおります。

 さらに付け加えておきたいことがあります。それは、何故、そのような作法を四半世紀以上も続けているかということです。
 理由の一つは、一月のエッセイ第55回「目の前のことに集中して全力投球(2014.1.3記)」で申しあげました。
 以下、それ以外の理由をご紹介して、今回のつぶやきを締めたいと思います。

①目の前の受講者、聴き手と向き合い対話しながら進めるために、顔をシッカリと見て、その方々の反応を観察しながら、その都度のねらい実現を目指したい。対話を通して、潜在意識と潜在能力を引き出したい。 
②話す内容と言葉に魂を籠めて、自発的やる気を引き出したい。 
③失言、放言の防止。
④何よりも、参加してよかった、受講してよかった、と感じて頂きたい。
⑤一知半解はご法度にする。

                                             (2014.1.15記)

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