エッセイ4:『インテグリティ(integrity)』とは、特別な言葉!

投稿日:2011年10月16日

 今年も、久慈職業能力開発センター様からの依頼で、2つの研修を企画・運営することになりました。10月12日(水)、13日(木)の2日間で若手社員研修がありました。15名定員でしたが、希望者が多くなり28名が受講しました。

 昨年の研修終了時点で、見直したい内容や進め方、そして追加したい事項などをまとめておきました。そのレポートが活かされることになります。正式の依頼があった時点で、即企画出来るように準備をしておりました。

 人材育成というのは、息の長い活動になります。効率第一主義、効率優先志向では、人材はなかなか育っていきません。日々の仕事とかけ離れたやり方や仕組みでは、結局のところ時間の浪費と無駄につながってしまいます。その場限りで、継続という流れに行き着かないのが実態でしょう。かなり多くの頻度で見受けられます、いわゆる“実施することが目的の研修・セミナー”は、その代表ではないでしょうか。人材育成の要諦に気づかないことには、致し方ありませんね。

 今回の依頼のように、様々な業種や職種の方々が参加する研修では、カリキュラムや教材内容などを企画・編成することは容易ではありません。年令も学歴も、仕事内容や仕事環境も様々です。しかし、それを承知の上で引き受けた訳ですから、理想と現実の大きなギャップを可能な限り埋めて対処するのが真のプロフェッション、と心の中心に言い聞かせて取り組んでおります。

さて、今回のエッセイは、インテグリティという言葉の意味について考えてみたいと思います。

 きっかけは、六年制薬学部の第一期生を対象としました就職相談会のあり方に、大きな疑問を感じたことでした。人材情報サービス企業主催の薬学生限定の就職相談会が、昨年の12月上旬に三つの会場で立て続けに開催されました。場所は仙台でした。

開催時期も含めまして、その変わらないやり方に愕然としたのでした。就職側の薬学生と大学、求人側企業、その仲人役の人材情報サービス企業の全てが、それぞれの立場をしっかりと認識して、今までの延長線上の考え方や手法と決別をして仕切り直しをして頂きたい、と強く憤りました。薬学部、薬剤師のおかれている環境が、百年に一度の大改革としてスタートしたというのに。

 そのような問題意識の最中に、『インテグリティ(integrity)』という特別な言葉に出会ったのです。その言葉の意味に、即、吸い込まれていきました。

インテグリティとは、欧米では“社員が社会人として、倫理と清廉潔白さを備え、企業理念を体現すること”を意味しているようです。

 そして、インテグリティは特別な言葉で、米国では「インテグリティがある」と言えば、最高の褒め言葉になるそうです。逆に、「インテグリティを喪失した」と言えば、それは人格の全否定になるようです。いかなる権力と圧力にも諂(へつら)わず屈しない道義心の堅固さ、この人ならばと人格的に全幅の信頼を集める内面的な強靭さ、したたかさ、行動力と実績を意味することになる、とのこと。本来は、『言うこと』と『行うこと』が一貫し、そこにブレが無いということになる、という意味のようです。

 私が出会ったあるコラムによれば、“経営者にとって必要なことは企業の高尚な理念や倫理観を徹底することである。従業員が企業の価値観や目的を共有していれば、細かい規程は重要性を持たない。社長自身が理解していない規定を遵守させようとすることに無理がある。マニュアルで社員を統制するのは、実は経営者の怠慢でしかない。この手法は、信頼よりは不信を育み、一体感(われらの会社)よりは対立(やつらの会社)を生む。…… 企業に限らず、どの組織にもインテグリティは重要である。…… ”とありました。

企業の採用のあり方については、近年、問題視されているように感じております。私自身は、10年以上前から、採用と人材育成の一元化を前提とした新卒採用のあり方を、半ば啓発運動的に問い質してきました。特に薬学生に関しては、超売り手市場であることを追い風に、薬学生自身が就職活動を主導出来る環境を十二分に活用すべきであることを訴えてきました。正しく、キャリアコンサルタント役を果たしてきました。それこそが、中小企業が出来る唯一の大企業との差別優位性であると位置づけて実践してまいりました。そして、十分な実績も作ってきました。

 私は、インテグリティという言葉に出会って、現状の会社運営やマネジメントの実態に対する問題意識を重ね合わせておりました。日本の経営環境が、長い期間閉塞状態にある中で、私たちの属する業界は、唯一と言っていいほど特殊な状況(20数年続いている右肩上がり)にあります。自分の所属する会社の理念が何で、その理念を実現するために何をしているのか、そしてインテグリティ度がどのレベルにあるのか、冷静に客観的に点検してみることをしてみたいと思います。そこから新たな方向性を見出していきたいものです。

 六年制薬学部の二期生に対する就職相談会が始まる時期になります。私ごときの問題提起に耳を傾けてくれそうにありませんが、でも言い続けます。就職活動の理念、あり方や進め方、そして時期を含めた方法など、ゼロベースからどうあればいいのかを問い質して頂きたい。

 私なら、“どのような人間になりたいのですか?どのような薬剤師になりたいのですか?どのようなことで社会のお役に立ちたいのですか?”という問いかけからスターします。そして、教育の原点である潜在意識を引き出す対話で、個別対応することをメインに進めて参る所存です。

(2011.10.14記)

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