エッセイ1:「見よ無名のヒーローやヒロイン達の魂を。そして称えよ」一人ひとりへの得賞歌で!

投稿日:2011年8月3日

 得賞歌なる曲をご存知でしょうか?
 表彰状などの授与や勝者を称える時などのBGMとして使われています、「見よ、勇者は帰る」という合唱曲のことです。
 作曲したのは“音楽の母”と称されるゲオルグ・フリードリヒ・ヘンデルです。ドイツに生まれ、後にイギリスに帰化した作曲家です。オラトリオ「ユダス・マカベウス」の中で歌われております。初演されたのが1747年ですから、260年以上も昔のことになります。1884年に賛美歌の歌詞がつけられて、「喜べや称えよや」として歌われるようになったそうです。
 先日、被災地で慰問演奏を続けている自衛隊第9音楽隊が、この得賞歌をサプライズ演奏している様子をIBCテレビの「ひるおび」で知りました。この慰問演奏会で再会した幼稚園の先生が、津波で渡せなかった進級証書を園児に差し出したその時でした。聴きなれたこの曲が、心の奥まで沁みました。
これから数年間は、いやずっと、被災エリアのあちこちで、この得賞歌が奏でられることを強く感じました。
今回のエッセイは、その理由を述べさせて頂きたいと思います。

「見よ無名のヒーローやヒロイン達の魂を。そして称えよ」一人ひとりへの得賞歌で!

 また今回も、東日本大震災に関することになります。そして、前回配信のエッセイ第242回のT薬局に再登場して頂きます。

 肉親や友人・知人を亡くし、自宅や会社の建物を失い、家財や大切な記念を持っていかれながら、でも、その土地に残って復興を誓い、そして立ちあがろうと試行錯誤している方々が、被災地には大勢いらっしゃるようです。毎日、どこかの報道で見聞きします。
 現実には、報道されないけれども、その何百倍も、何千倍も、何万倍もの方々が、それぞれの思いや理由によって、前を向いて進もうと動いていらっしゃるのではないでしょうか。法的な縛りや資金面の調達問題など、そう簡単に事が運ばないことを承知しながらも、周りからの激励や支援に励まされ、そして、今まで住んでいた土地や人間関係への愛着と思い入れなど、いくつもの理由が重なり合ってのアクションなのだと想像しております。
 私が学んだ大学の後輩であり、部活の後輩のT君も、その一人です。
 前号でご紹介したように、大槌町で地域に密着した薬局を経営していました。3月11日の津波と火事で、自宅も薬局も全て失いました。60年間の形のある記念の品々も、津波とともに海に流されてしまいました。その日から2ヶ月近く経った5月6日(金)に、仮設の薬局をオープンしたことを知りました。同じ大槌町内に。助かった全従業員とともに、6畳一間のスペースで、調剤とOTC薬の販売をスタートさせたのです。
そこに行き着くまでに、幾多の心の葛藤があったかもしれません。でも、T君の変わらぬ笑顔は、そんなことを微塵も感じさせません。本格的な再起までは、いくつかの関門をクリアすること、そして長い時間がかかるのかもしれません。それらを全て受け容れてのスタートなのでしょう。そんなT君を見て、立派だと思います。偉いなあ、って…… 。
私は強く感じるのです。被災地には、T君の様な無名のヒーローやヒロインが、それこそ避難者も含めて、そこに住んでいた人数だけいらっしゃるのだと思います。その皆様一人ひとりに、それぞれに合った得賞歌が贈られることを祈りたいと思います。
T君への得賞歌は、「夜のうた」「いざ起て戦人よ」「遥かな友に」「夏の夕べ」のオリジナル合唱組曲が一番似合っていると思います。

(2011.8.1)

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