エッセイ313:職場でも家庭でも、志や夢を、いま目指している目標を語ろう!

投稿日:2024年10月5日

 7年前の2017年、米ギャラップ社が世界各国の企業の“従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)率”の調査結果を発表しました。日本は“熱意あふれる社員”の割合が6%で、調査対象139カ国中132位と最下位クラスでした。また、企業内に諸問題を生む“周囲に不満をまき散らしている無気力社員”の比率が24%、“やる気のない社員”が70%に達していました。この結果を知ったのは、発表から数年後の新型コロナウィルス禍でしたが、かなりのショック度だったと記憶しています。その中でも“周囲に不満をまき散らしている無気力社員”が24%もあったことに、大きな問題意識を感じたのです。つまり、単にやる気が低いだけではなく、周囲の社員に悪い影響を及ぼしている社員が、約4人に1人の割合で在籍しているということです。そういう社員が起こしている諸問題は、社会に出ていない中高生にも少しは想像できると思います。

 この調査は毎年行われているようですが、2022年の日本のエンゲージメント率は5%で145カ国中最下位になっています。さらに他国との差が広がっているようです。“まさか、そんなことはあり得ない…… ”という気持ちになりますが、10数年以上も前から、うすうす調査結果のような認識を抱いておりました。人事教育の仕事が主任務の私でしたから、何もせずに指をくわえて見過すわけにはいきません。主な原因は、経営幹部も含めた上司にあると判断して、エッセイを通して数多くの問題提起をしてきました。今回は、20年近くも前から、管理者は当然として中堅クラスのビジネスパーソンにも奨励していることを呟いてみたいと思います。

職場でも家庭でも、志や夢を、いま目指している目標を語ろう!

 私見を呟く前に、もう一つ確認しておきたいことがあります。それは、退職者の退職理由の問題です。私は、30数年間、採用と社員教育に携わってきました。採用面では、要員確保に四苦八苦させられました。厚生労働省が令和4年(2022年)10月28日に公表した“新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)”によると、就職後3年以内退職率が高校卒35.9%、短大卒41.9%、大学卒31.5%でした。さらに、これらの数字は、30年間概ね変わっていないのです。退職理由は多岐にわたっていますが、最優先で考えなければならないのが、期待と現実のギャップによって退職される方の多さです。お互いの退職デメリットの大きさに鑑みれば、早急に本質的対応策を執らなければいけません。私見になりますが、ギャップの原因は、該当企業のガバナンスの問題であり、日々の組織運営の実態だと思います。ですから、ガバナンスと組織運営の問題点とその原因を明らかにして、抜本的な見直し策を講じることが幹になるでしょう。前文で取り上げたエンゲージメント(仕事への熱意度)のケースも同じことが言えましょう。

 そのような状況下でも、試行錯誤しながら対応できる方途が、いくつかあると思います。それらは、時間をかけて思い悩むことではありません。私が一推ししたい身近な方途を紹介しましょう。それは、部下を持つ上司への強い激励句でもあります。私の考える方途は、日常のコミュニケーションのあり方です。一言で表現すれば、困った時に相談できる上司・先輩を目指して精進して頂きたいと思います。どんな結果になろうとも、そのような基本スタンスで相対することです。その思いの表現手段の一つが、今回奨励したい対処法になります。 具体的には、チームメンバーや後輩に対して、あなたの描いている志や夢、目指している目標を、語ることです。ビジネスパーソンとして、人生の一先輩として、この地球で生きている一人の人間として、あなた自身の志や夢、そして目標を、時々披露してみませんか。言葉を飾る必要はありません。あなた自身の言葉で投げかけてください。その思いを行動に移して真摯に精進すれば、多くの新社会人や同輩は、共に歩んでくれます。熱意を持って仕事に取り組んでくれます。さらに、チームメンバーが、臆することなく志や目標を紹介し合える風土を作ってみませんか。ノーサイドミーティングの日常化(参照:エッセイ210回)です。そのような風通しの良いチームは、エンゲージメントが高く、難しい仕事も楽しんで対処するようになります。

 もう一つ提案しましょう。家庭でも、志や夢、目標を語ってみませんか。家族の皆さんと、照れながらで構いませんから語り合ってみましょう。

   EDUCOいわて・学び塾主宰/薬剤師 井上 和裕(2024.8.17記)

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