エッセイ250:私が思い描いたオータニサンの仕事作法、考動(思考&行動)習慣

投稿日:2022年3月22日

 2021年といえば、相も変わらぬ閉塞感の中での楽しみの一つが、大谷翔平選手の出場するMLBロサンゼルス・エンゼルスのテレビ観戦でした。それまでの常識を打ち破った二刀流のショータイムは、一所懸命の姿勢と楽し気な笑顔を連れ立って桁外れの爽快感を味わわせてくれたのです。投手として23試合に先発して9勝2敗・奪三振156個…、打者としては155試合に出場し本塁打46本・三塁打8本・打点100・盗塁26(ホームスチール1を含む)…の成績を残して、アメリカン・リーグ最優秀選手賞を満票で獲得しました。それ以外に選手会年間最優秀選手など、いくつもの賞を授与されています。アメリカの主要メディアに、“大谷は何でもできる”と言わしめました。また、日本国内においては、「リアル二刀流・ショータイム」が2021年流行語大賞の年間大賞を受賞しております。このように数々の明るい話題を提供してくれたオータニサンでした。

 MLBレギュラーシーズンが終了した昨年10月以降、大谷翔平選手の年間ハイライトテレビ特番が何本も放映されております。拝見拝聴しながら、同じ岩手県人の大谷選手の仕事作法と言いましょうか、考動(思考&行動)習慣に大いなる興味を抱きました。想像の翼を思いっ切り拡げて、その真髄探しの空想に耽ってみたくなったのです。この数か月間で思い描いたオータニサンの仕事作法、考動(思考&行動)習慣を、アレコレ呟いてみたいと思います。今回のエッセイは、あくまでも私見になります。この閉塞した新型コロナウイルス禍で、楽しい気分を味わうことができたことに感謝しております。

私が思い描いたオーニサンの仕事作法、考動(思考&行動)習慣

 先ず、現時点での結論から申しあげましょう。

 私が仕事の進め方の定石と位置付けております 目標と自己統制によるマネジメント(Management by Objectives and Self Control)”(以下、目標管理)と“PDCAサイクル(含む6W3H)のスパイラルアップ”が、当たり前の仕事作法や考動習慣としてシッカリ根付いているということです。目標管理をプラットフォームとしてPDCAサイクルをスパイラルアップすることは、業績向上と人材育成・自己成長の基本方程式というのが、私が抱き続けている不易の持論です。少し詳しく解説しますと、「6W3Hを動員した目標の設定」に始まって、「目標実現のための実行計画立案」、「実行に備えての事前準備」、「計画に基づいた実行」、「期限後の結果評価と検証」、「見直し・改善」、「今後の目標策定」というサイクルを、セルフマネジメントしながらスパイラルアップすることです。シンプルな流れですから、決して難しい手法ではありません。

 大谷さんは、この基本方程式を、自分事として実践していると思います。自然体な感覚の克己心と自律心でコントロールしながら、目標達成のための計画実行を最優先課題として、地道にセルフマネジメントしているのではないでしょうか。ストイックという声も耳にしますが、目的が明確ですから、大谷さん本人は楽しみながら日々取り組んでいると想像しています。また、目標に関しては、常に中長期目標を意識しながら、そこに至るまでの通過点を短期目標として掲げているような気がしております。これは、ビジネスにおける組織運営にも共通する成功要因の基本のキではないでしょうか。PDCAサイクルをスパイラルアップし続けるためには、目標が明確であることがキーポイントとなります。そこで登場させたいのが6W3Hです。復習しますと、WHAT・WHY・WHO・WHEN・WHERE・WHOMの6Wと、HOW・HOW MANY・HOW MUCHの3Hのことですね。大谷さんは高校時代から目標を明確にして取り組んでいました。マンダラチャートの目標達成シートを2010年12月6日に仕上げています。母校である花巻東高校野球部では、このシートを1年生の時に部員全員が作成するそうです。

 これも私見になりますが、私は能力を共通専門能力と固有専門能力の二つに分けて考えるようにしています。固有専門能力というは、“専門担当領域ごとに異なるその領域の専門能力”のことをさします。大谷さんの場合であれば、現役野球選手としての能力、さらに細分化して先発投手としての能力、指名打者としての能力が該当するでしょう。それに対して“全ての職種・専門担当領域に共通して必要な専門能力”を、共通専門能力と呼んでいます。コミュニケーション能力、対人関係能力、リーダーシップ、マナーを始めとして、一人の人間として、社会人として、或いは所属する組織の一員として必須となる能力のことです。アスリートであれば、栄養管理や身体のケアに関する知識・技能も共通専門能力の範疇に入ると思います。大谷さんは、固有専門能力だけではなく、これらの共通専門能力にも秀でていると感じ取れるのです。例の目標達成シートを観察しますと、幅広い視点で自己啓発を図ろうとしている姿勢をうかがい知ることができます。

 上記以外にも、強調しておきたいことがいくつかあります。それは、冷静で客観的な姿勢と視野の広さです。“グラウンドに落ちているごみを拾う”、“折れたバットを拾って、相手に自ら直接手渡す”、“審判へのにこやかな挨拶”、“野球道具の丁寧な扱い”、“納得のいかない判定への穏やかな反応”、“抜けた危険球の相手打者への対応”など、イイネと感じ取れることがいくつもあるのです。ですから、感情的になって自分を見失い、ペースを崩すことが少ないように感じます。持って生まれた天分なのでしょうか。或いは、嫌みの無いマイペースが持ち味なのでしょうか。いずれにしても、“恐れ入りました”という気になります。あれこれ想像しながら、目的意識が高く、自ら考え、自ら判断し、自ら行動するというセルフマネジメント力の強さが眼につきます。そして、心技体のバランスがとれているように映るのです。視点を変えて表現すれば、とにかく野球が大好きで、向上心が旺盛で、超がつく真面目な努力家というのが、私が思い描いたオータニサン像になりました。また、堅苦しい雰囲気を感じさせない爽やかな人間性が、老若男女問わず多くの方々の心を虜にしているのではないでしょうか。

 振り返りますと、渡米後の2018年秋に肘を、2019年には膝の手術を行いました。その間納得した成績には至らず、“この世界そんなに甘くない”ということは百も承知と受け容れながら、焦りを抑えて地道にリハビリに励んだと思います。そのような経緯からして、成績次第で二刀流とは縁切りしなければならないという覚悟で臨んだ2021年だったはずです。その結果は、前文で紹介した通りです。昨年12月に入ってから、そこに至る要因が何であるのかを考えてみたいと思い続けていました。その気持ちを言葉にしたのが今回のエッセイになります。何はともあれ、怪我なく一年間やれたことが、何よりも大きかったと思います。2022年は、渡米して5年目のシーズンになります。一挙手一投足の労を惜しまず全力でプレーする大谷選手ですから、何が起きるか分かりません。対戦する相手も全力で立ち向かってくるでしょうから、期待に応えられないこともあり得ましょう。いずれにしても、怪我をしないで、レギュラーシーズンを勝ち抜き、さらにポストシーズン進出を願うばかりです。成績が振るわなくたって応援し続けます。

 何とも開幕が待ち遠しい今日この頃です。   井上 和裕(2022.1.21記)

【参考】エッセイ139回:「備えよ常に」&「準備万端整える」(2017.3.17記)/エッセイ142回:成長への道筋は、いかにして行動の継続を維持し続けるか(2017.4.24記)/エッセイ144回:競争の原点は、対自競争に克つこと(2017.6.7記)/エッセイ156回:もっと知りたい“入社1年間で定着させたい「新・23の行動習慣」”2(2018.1.10記)/エッセイ197回:好きこそ物の上手なれ(2019.9.3記)

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