エッセイ249:是非味わってください「祝婚歌」(吉野 弘・作)

投稿日:2022年3月5日

   *昨年12月に書き上げたエッセイです。

 今回のエッセイは、是非お読み頂きたい詩を紹介したいと思います。

 その詩は、この十数年間、私の生き方に大きな影響を与えてくれています。特に、信頼と安心の対人関係を構築するための指針となっております。肩の力を抜いて、そんなあり方を実践していけば、信頼と安心のコミュニケーションが誕生すると感じさせてくれる詩なのです。お読み頂きたい詩は、エッセイ237回(2021.6.18記)で、私の心に沁みる詩として紹介しております「祝婚歌」(吉野 弘・作)です。この場で全文を紹介することは許されません。詩集を購入するか、図書館に足を運ぶかして、是非に味わって頂きたいと存じます。以下、私の率直な感想を述べたいと思います。

是非味わってください「祝婚歌」(吉野 弘・作)

 祝婚歌は、“二人が睦まじくいるためには”で幕が開きます。そのためには、“愚かでいるほうがいい”、“立派すぎないほうがいい”と続きます。“完璧をめざさないほうがいい”、“正しいことをいうときは 少しひかえめにするほうがいい”というように、優しい語りかけがいくつか出てきます。

 さらに、その理由を、分かり易く語りかけてきます。そして、“なぜ胸が熱くなるのか 黙っていても 二人にはわかるのであってほしい”で、締めくくられる全34行の詩です。

 私が詩に関心を抱いたのは、茨木のり子さんの「自分の感受性くらい」の本意を、ある研修で受講者と一緒に考えたことがきっかけでした。それ以来、いくつかの詩が、本論から外れて遠回りした時の閑話休題用として活用しております。金子みすずさん、相田みつをさんの詩には、今でもお世話になっております。余談になりますが、茨木のり子さんは、東邦大学薬学部卒の詩人です。

 そんなある時期に、祝婚歌と出会いました。“二人が睦まじくいるためには”という最初の一行から、心惹かれてしまったのです。忘れもしません。咄嗟に、こんな感情が湧き出してきました。その時が来たら、私の子供や知人へのエール(yell)にしたいと強く感じたことです。それからは、多くの皆様方に紹介させて頂きました。ある時期から、10年前、20年前、30年前の私がどうであったのかを、家族に訊くようになりました。家族からの感想や指摘の多くは、祝婚歌にあるいくつもの“ …………… ほうがいい”に当てはまるのです。還暦を過ぎてからは、その回答に対して、耳を傾けるようになりました。素直に認められるようになりました。そのような実態に鑑みて考えてみれば、あと数年で金婚式を迎える私たちへの応援歌のように思えてきます。持病持ちですから健康とは言えませんが、“風に吹かれながら 生きていることのなつかしさに ふと 胸が熱くなる”、そんな日を一日でも多く持ちたいと思うようになりました。

 さて、十数年前からになりましょうか。吉野弘さんの祝婚歌は、公私を問わず私の生き方のお手本の一つになっております。これまでの自分自身のあり様を振り返ってみれば、私自身がいかに未熟であったのかを、この詩は明らかにしてくれるのです。穏やかな言い方で、諭してくれるのです。これからの人生、ゆったりした気分をセルフコントロールしながら、“なぜ胸が熱くなるのか 黙っていてもわかる”二人でありたいと思います。そのような家族でありたいと思います。

   人財開発部 井上 和裕(2021.12.21記)

 【参照】祝婚歌の経緯や足跡:「茨木のり子集 言の葉2(ちくま文庫):2010年9月第一刷発行」

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