今の時代、外国語を含めてカタカナ語が広範囲に使われています。言葉そのものだけではなく、その意味の理解が、私の現有能力ではついていけなくなりました。そのような個人的認識から、カタカナ語の多用で真の理解につながるコミュニケーションが実現できるのだろうか、ということが一番の心配事になります。ですから医療従事者には、私のような(後期)高齢者が数多く居ることを腹の底から理解した上で、眼の前の患者と向き合って欲しいのです。このことは、ハッキリと申し伝えたいと思い続けております。相対する高齢者の顔の表情から、相手の理解度を察知する能力をブラッシュアップして頂きたいと、切に願っている私なのです。
そんな心配をしながら、私でもついていけるカタカナ語について考えてみたくなりました。それも、日々の職務を遂行する上で、意外に見落とされていると感じるカタカナ語です。今回のエッセイは、メリット&デメリット考です。
メリット&デメリット考
メリット・デメリットは、年令に関係なく、日常会話用語になっています。先ず、メリットとデメリットを取りあげた理由から始めましょう。何事もそうですが、その時その場の状況によって、メリットがデメリットに、デメリットがメリットになることは、どなたも体験済みではないでしょうか。いま盛んに行われているオンライン授業も、リモートワークも、メリット・デメリットの両面が必ずあるのです。ところが、新たな施策や制度を導入する時にみられる傾向として、その時々のメリットだけが強調されて、デメリットの議論が置き去りにされていることを何度となく味わってきました。思い起こせば、私が考えたアンバランスだった業績重視型評価制度はその一つになります。
今回問題提起したいことは、“何事にもメリットとデメリットがあって、議論を何度も繰り返し、その両面をより具体的に明らかにした上で、総合的な視点で意思決定しましょう”ということです。規則や制度、或いは施策であれ、新たに何かを導入する際には、そのことを片時も忘れないで対処して欲しいと強く感じております。目新しい着眼点ではありませんが、このような肝心要の着眼点を忘れ去ってしまう傾向には、赤信号で警告を発しなければいけませんね。私の場合であれば、この新型コロナウイルス禍における人材育成の方途が該当します。オンライン研修と対面研修のメリット・デメリットを明らかにして、その時の状況に応じた対応が出来なければいけません。当面の対症療法は良しとして、一方ではアフターコロナを意識した抜本的な対処法を構築することが、今求められている重要課題ということではないでしょうか。
この機会に、頭のコリをほぐして、考え方の柔軟性を高めることを意図して、メリットとデメリットの日本語訳と、その類語をおさらいしてみましょう。類語の中には、何らかのヒントとなるものが潜んでいるように思えるのです。メリット(merit)は価値・利点、それに反してデメリット(demerit)は損失・欠点を意味します。もっと簡単に表現すれば、良い点・悪い点になりましょうか。或いは、明るい部分・暗い部分でも良いですね。以下、メリットとデメリットの類語を列記したいと思います。長所と短所、ポジティブとネガティブ、光と影、表と裏、プラスとマイナス、陽と陰、明と暗、功績と罪過、強みと弱み ……
最後に、75才になった私からの提案です。これまでの人生の成功例と失敗例を分析して、メリット・デメリットを明らかにした状況対応がどれだけあったのか、簡易検証されては如何でしょうか。導入や実施が第一目的で、メリットだけが強調されたケースの多さに気づくはずです。無理・無駄・無益防止のためにも、メリット・デメリットの明確化は、マネジメント上の基本のキではありませんか!
人財開発部 井上 和裕(2021.10.8記)
【参考】エッセイ191回:ブツブツ独り言…便利さのメリット、デメリット(2019.5.23記)