エッセイ230:2020年度新卒薬剤師教育の実施例

投稿日:2021年5月20日

 新型コロナウイルス禍での2020年(令和2年)度新卒薬剤師研修は、前年までの対話と討議を核とした対面方式教育を取り止めました。対面を主体とした教育機会は、今後の状況を見計らいながら試行錯誤する予定でおります2020年度につきましては、過去30年間の経験から得られた知見を総動員して、毎月提示する課題に対するレポート提出というやり方にしました。今回のエッセイは、昨年4月入社の新卒薬剤師に対する育成方針や実施例を紹介したいと思います。

2020年度新卒薬剤師教育の実施例

 一年前の2月中旬の段階で、従来のやり方と日程での開催は、あれこれ想定した新型コロナウイルス禍中では実施できないと判断しました。考えあぐねた末に、“毎月課題を提示するやり方でいこう”と意思決定したのが、新卒者の入社直前の3月下旬でした。行き着くまでに、育成ニーズの見直しに時間をかけました。4月半ばまでに、今回のやり方の方針、課題、各課題のねらいなどを企画立案して、5月からスタートして現在に至っております。以下、実施例の一部を紹介したいと思います。

 先ず、5月1日付で「2020年度新卒薬剤師教育の考え方、進め方」を冊子化しました。最初の単元は、新型コロナウイルスの影響で予定していた新卒新入社員研修が実施できないこと、その代替手法の方向性などを、“新入社員導入研修の考え方の基本”(A-4版2ページ)として盛り込んでおります。その上で、“入社一年間の行動指針”を明示しました。その一部を紹介しましょう。

[入社一年間の行動指針]

 先ず、二つの入社一年間の行動指針を差しあげます。具体的にどうするかは、それぞれが考えながら取り組んでください。

 ⓵成長の原点は基本です。基本を身に付けることが最優先の課題であり目標です。そのためには、目の前の仕事一つひとつを誠実に遂行することです。掃除であれ、挨拶であれ、調剤・服薬支援であれ、気配りやマナーであれ、全ての仕事と向き合うことです。時間がかかってもキチンと最後までやり通すことです。失敗もするでしょうが、責任を持ってやり直しましょう。

 ⓶仕事経験を積み重ねながら、これからの公私にわたる生き方を掘り下げて考える一年間にしてください。新型コロナウイルスという難題を教訓として、将来の人生の土台を築く一年間、人生の幹を形成する一年間にしましょう。そのための問いを提示しましょう。一年間かけて結論を出してください。Q1:一人の人間として、地域社会から求められることは何なのか?Q2:保険薬剤師に対して、地域生活者は何を求めているのだろうか?また、地域生活者に対して何ができるのだろうか?何をやるべきだろうか

 次は、進め方と具体的な課題の説明になります。課題につきましては、5月分を紹介したいと思います。進め方に関しては、毎月課題を提示して、課題に対する結論とその理由・経緯などをまとめて提出するやり方にしました。提出レポートは、ワードか自筆で作成することにしております。そうした理由は、別の機会に譲りたいと思います。

 5月の課題 :2分間スピーチ原稿の作成(全7テーマ)

(1)スピーチテーマ:共通テーマ3(①②③)、自由テーマ4

 ①自己紹介、②中田薬局を就職先に選んだ理由(何故、中田薬局を選んだのか)、③私の目指す薬剤師像。残りの4つのテーマは、各自で考える自由テーマ。

(2)基本ルール

 ①原稿の作成。文字数は600文字±10文字を厳守。②丁寧な字で、筆圧は強めに。③以下の文言を、必ず入れてください。これも含めて文字数は600文字±10文字。※基本ルール①②③には理由があります。それを考えることも重要だと思います。

(3)提出先・提出期限

 ①提出先:本店総務担当○○宛  ②提出期限:6月5日(金)

 問題意識を高めるために、最後に“もう一つの日常の課題”を添えました。余談になりますが、提出期限前に毎回提出してくれました。提出された資料は、キチンと目を通して、毎回コメントや方向付けメッセージを差しあげております。コメントの着眼点は、それぞれの課題のねらいの達成度を優先しました。5月に関しては、A-4版3枚(約4,000文字)のボリュームになりました。“はじめに”からスタートして、“総評”、“Nさんの‘自分への甘さ’へのコメント”、“Oさんの‘私の去年一年間に学んだ事’へのコメント”、そして“学び方アレコレ~反面教師という学び方”の章立て構成になります。“学び方アレコレ~反面教師という学び方”は、今後のエッセイで披露する予定です。試行錯誤しながらのニュースタイルを続けて9ヵ月になります。新たな気づき、感じ入った気づきなど、かなりの収穫がありました。また、今回のような有事といえる渦中であろうとなかろうと、日々の細やかな信頼と安心のコミュニケーションの必然性、他者を思いやる姿勢の重要性を強く感じております。これらの気づきや思いも、今後のエッセイで取りあげたいと考えております。

  人財開発部 井上 和裕(2021.2.1記)

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