エッセイ203:グルグル回りの応答の対話とアイコンタクト

投稿日:2020年3月5日

 研修などのOffJT(Off the Job Training)にしても、或いはOJT(On the Job Training)にしても、教育機会の目的は、その時その都度、色々様々です。成果に結びつかないケースの多くは、目的が曖昧なことに尽きます。実施することが目的の教育機会は、成果に結びつかない代表例ではないでしょうか。  

 私が企画するいのうえ塾では、各教育機会の個別目的を支える共通目的(全ての教育機会に共通する目的)なるものを、いくつか組み込んで運営しております。

 その一つは、参加者の心をほぐすことです。凝り固まった考え方や心構え、知らず知らずのうちにこびりついてしまった先入観を、客観的な視点で看脚下して頂くことです。そうなった経緯や理由を顧みながら、今後のあり方を前向きに再構築するキッカケとしたいのです。

 今回のエッセイは、その共通目的を推進する手法の一つを考えてみたいと思います。日常のコミュニケーションのあり方を見直すことにも、相通じるテーマとなりそうです。このテーマは、ファシリテーターの基本的素養なのだと感じております。

グルグル回りの応答の対話とアイコンタクト

 グルグル回りの応答の対話とは、質問(以下Q)と回答(以下A)を繰り返し、対話を続けながら考えて学び合うことです。もう少し具体的に説明しましょう。Qに対するAから、次のQ′を発します。Q′の回答A′から、さらにQ″という対話を繰り返して、本質へと掘り下げていくことです。今までのE森でも、何度となく取りあげてきました。

 このやり方は、“どう進めていけば、参加者の考え方を引き出すことができるのか?”、“どうすれば、参加者同士の相互啓発を促進できるのか?”、“どのようにしたら、考えながら学ぶことを楽しんでくれるのか?好きになってくれるか?”ということを、迷いながらも試行錯誤した結果の産物です。行き着くまでに、10年はかかったと思います。

 現実に目を向けますと、質問したからといって、常に回答が返ってくるわけではありません。質問をすれば、いつでも誰かが手を挙げて発言してくれるわけでもありません。のっけから、本質に向かう応答の対話が実現することはレアケースが実態なのです。研修では時間が限られていますから、指名して回答させるというのが一般的でしょう。“指名しなくても応答の対話を繰り返すにはどうしたらいいのか?”という課題にもぶち当たりました。

 解決のヒントとなったのが、ある外部研修のM講師のやり方でした。営業マネジャー対象の目標設定面談・評価面談技術を、実際に演じて学ぶ二泊三日の缶詰研修でした。M講師の問いかけ方、そのシンプルなアイコンタクトは目から鱗でした。

 M講師は、ある特定の参加者(Iさん)の目を見ながら、ジックリと語りかける口調で質問をするのです。単なる質問というより、“間違ってもいいから自分で考えて欲しい”という強い問いかけ方なのです。当然、Iさんを指名しての質問ではありません。問いかけ終わると、例え時間を要しても、自然とIさんが答えるのです。そのIさんの応答をもとに、今度はSさんに視線を向けて次の質問をします。そうすると、Sさんが応答するのです。その日は、指名しての質問は殆どなかったように思います。翌日のスタートからは、グルグル回りの応答の対話が繰り返されました。後で分かったことですが、問いかけを通して自力で考えさせるM講師のやり方は、何人かの参加者には不評でした。それは、M講師の意図を汲み取れなかったからだと思います。

 この経験から、グルグル回りの応答の対話が、私の仕事作法となりました。問いかけは、ある一人に対するアイコンタクトで進めるようになりました。以来、私流のやり方とその理由を、スタート時に伝えるようにしておりますやり方の意図(理由)が分かれば、対話がスムーズに運ぶのです。さらに、発せられる意見・考えを受け容れる、そして受け止めることを心がけております。回答は様々ですから、実践となると難しいテーマではありますが、応答の対話促進の重要な触媒になると実感しております。

 このように、グルグル回りの応答の対話は、今でも私の進め方の基本作法になっております。現状に満足することなく、目的実現の追究意識を持ち続ける所存です。

(2019.11.16記)

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