エッセイ202:私の事前準備アレコレ

投稿日:2020年2月19日

 準備することに、殊更拘っているのは、私のメンタル面に理由があるようです。一言で表現すれば、何事においても、何かにつけても、自信をもってやれるようになるまでに、かなりの時間を要するからです。
 遠い遠い昔のある時から、自信が持てないなら、とにかく事前の準備だけは、納得するまでやると決めました。自力でやれることだけは、しっかりやり終えて臨もうということです。この“自信が無い”という心的内面は、いまだに変わっていないと思います。“思います”では無責任な表現になりますが、最近は“自信の有る無し”を意識しなくなったからでしょうか
 話しを戻しましょう。
 自信が無いからと言って、そんな心境のままでは、態度や行動にも表れてしまいます。いつの頃からかは忘れてしまいましたが、そんな心的内面であることを忘れてしまうほどに、準備することに没頭しました。経験を積むほどに、没頭のあり方は変わってきましたが、準備重視(準備万端整えること)に変わりはありません。
 以上の考動習慣(思習慣&行動習慣)は、研修講師を務めるときも同じです。初めて挑戦するカリキュラムは当然として、それまで何十回も担当してきたカリキュラムであっても、常に不安感でいっぱいになります。30年前と色合いは異なりますが、スタートするまでの緊張感は、73歳になっても心の中を彷徨っているのです。そんな不安感を打ち消すために、自信の無さを紛らわすために、意識して目の前の事前準備の徹底に着手しました。少しでも不安感から抜け出す術として、それしか思いつかなかったのでしょう。切り抜ける確率が数パーセントだとしても、藁をも掴む一心で万全の準備を心がけたのでした。
 そのほんの一端について、節目のエッセイ200回(準備万端整えるための私の小道具)で取りあげました。今回は、目標必達魂から発した事前準備の実践事例のいくつかを紹介したいと思います。私見ではありますが、これらのことを当たり前に実践できないようであれば、企業内教育担当・人材開発担当の真のプロフェッションとは言えないと自覚しております。私自身の試行錯誤の体験からの見解ではありますが、声を大にして問題提起し続けたいテーマの一つなのです。

私の事前準備アレコレ

 今回は、実施日数の多少にかかわらず、私が担当(進行役、講師を含めて)する研修会・勉強会・会議の事前準備の実際を、いくつか紹介したいと思います。
 
 その前に、準備を重視する理由から申しあげておきましょう。
 全ては、担当する研修会・勉強会そして会議の目的を100%達成することです。目的を達成するためには、いくつものやり方があると思います。私の場合、“どうすれば目的が達成できるのか!”を追求した結果が、万全の準備をすることだったのです。当時、決められた通りの準備をすることが、私にできる一番身近な手段でもありました。準備業務を怠ることなく何年も続けていくと、それが目的を達成する整備された道なのだと実感できるようになったのです。
 それでは、事前準備アレコレの紹介になります。

その1:実施日二ヵ月前には、進め方や教材・資料を確定し、全ての準備物を用意し終える
 
 考え方の土台になるのが、仕事は経営環境の変化に伴って状況対応が求められるということです。
 どんな仕事にも、納期(期限)が存在します。研修会で言えば、日程ということになります。その納期は、一度決めたら不変と言う訳には参りません。経営環境の変化によって、常に動く可能性があります。前倒し、後ろ倒し、取り止め、緊急対応など、様々な可能性が存在します。どのような事態に出会っても、如何様にも対処できるのが、プロの腕前なのではないでしょうか。
 そのような場合、どう対応したらいいのか行き着いたのが、早期着手二ヵ月前の準備完了でした。10年前までは、三か月前を目標にしていたと記憶しております。そうすることのメリットは、納期の変更に対して、慌てずに対応できることです。時間的、精神的な余裕は、本質を外す確率がかなり低くなります。不安感いっぱいのメンタル面に対する安心効果は大きいと思います。また、柔軟な対応が可能になることも、大きなメリットとなりそうです。内容の変更、時刻・時間の変更などにも、目的を見失うことなく調整できます。
 ある時期、二ヵ月前準備が仕事の作法として定着させる要件に気づかされました。それは、より具体的な年間計画の有無が、二ヵ月前の準備定着100%のキーポイントになるということです。ここでも、PDCAサイクルこそが、成果に直結する仕事の進め方であることが明らかになりました。

その2:実施日一ヵ月前には、いつでもスタンバイできる態勢を整える
 
 研修会の場合で考えてみましょう。
 私が企画・運営する研修会は、実施日一ヵ月前の時点で、明日からいつでも実施できるようにしております。二ヵ月前準備が完了してからは、もっぱら教材研究と進め方のロールプレイング(以下、RP)に注力します。少しでも自信が失せてきたら、何十回でも声を出してのRPです。未だに実践し続けております。意識してはおりませんが、それが私の内発的やる気を維持してくれているのだと思うことがあります。
 経験則になりましょうが、教材研究こそが、研修会の質を高める数少ない術の一つだと信じております。

その3:会場の事前視察とチェック
 
 会場は、“確保すればオーライ”ではありません。形状・広さ・高さだけではなく、かなりの項目のチェックポイントがあります。目的達成のためには、候補会場に直接出向いてチェックしなければ、結論を出すことができません。まさに四直四現主義です。
 以下、考えられるチェックポイントを列挙してみました。

 ・会場の形状・広さ。
 ・窓の形状・位置・開閉方法。カーテン又はブラインドの種類・開閉方法。
 ・会場全体の明るさ(点灯時・消灯時)。カーテン又はブラインド開閉時の会場の明るさ。
 ・照明機器の位置。各照明機器のスイッチ(どの位置の機器のスイッチか)。スイッチの場所。
 ・冷暖房機器の操作方法。使用感。
 ・机の大きさ・形状・設置可能台数。椅子の形状・設置可能脚数。
 ・スクリーンの有無。OHP・プロジェクターの有無と種類。
 ・コンセントの位置。延長コードの有無。
 ・時計の種類(大きさ、アナログかデジタルか、電波時計か電池式か、秒針の有無など)。
 ・時計の設置箇所。
 ・ホワイトボード又は黒板の有無、設置台数。ホワイトボードイレーサー・黒板消しの設置状況。
 ・ホワイトボード用マーカー又はチョークの設置状況(色、太さ)。

 事前視察という意味で、もう一つ非常に重要な準備項目を紹介しましょう。
 私が企画運営する教育機会には、マイクロバスなどで長時間移動する現地見学会があります。より詳細な具体的行程表を作成して、必ず事前に予行演習することです。最近では、薬学生向けの東日本大震災被災地見学、工場見学会などが該当します。
                                                (2019.11.5記)

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