前回のエッセイでは、私の考える“企業内教育担当者の役割・機能”を取りあげました。今回から2連続で、さらに掘り下げた具体的な役割・機能を提案したいと思います。
このレベルの見解を公言するまでには、相当な質量の経験と試行錯誤の積み重ね、幅広い職務遂行能力の積み上げが必要だと感じております。数年では難しいでしょう。10年は要すると思います。ここは、“僕の前に道はない。僕の後ろに道は出来る”(高村光太郎)、“隗より始めよ”(戦国策)、と肝に銘じてチャレンジしてください。
「人材育成の基本課題は何か?」、「教育担当の行動指針」、「求められる心構え・態度・スキル」、「教育担当の能力要件」の4部構成ですが、今回は企業内教育担当者の役割の具体的課題編になります。
教育担当者として求められる基本要件(その1)
Ⅰ.人材育成の基本課題は何か?
1.社員一人ひとりの考え方や心構えを引き出すこと、革めること。そして、“自発的やる気”を喚起すること。
(1)“健全な心構え・判断基準”を、しっかりと肚に落とすこと、落とさせること
・“人間尊重(Yの心)”を基本的信念に
・4S志向
CS(顧客満足)/DS(生活者満足)/PS(患者満足)/ES(従業員満足)
・自己責任意識、目標必達魂、チャレンジ(リスクテイク)精神
・CSR(企業の社会的責任)の追求
・サステナビリティー(持続可能性)の追究
・コンプライアンスの必然性の理解と率先垂範
(2)必ず行動変革へ結びつけること:仕事が教材(On the Job Learning)
・方針と目標を明確にして、全員に明示する
・目標達成のための方途を考える、考えさせる
・目標と具体的計画を合意する
・目標の進捗状況を確認しながら、納得するまで共有化する
・対話を通して、“背中を押す”、“誉める・叱る”、“勇気付ける”
・納期がきたら客観的に評価する。その結果を理由を添えてフードバックする
*やる気=自己確信(自信)×自己動機づけ
2.心を耕して、人間性を磨くこと。
*自助力(自力で生きていける力)と共助力(周りの人と一緒にやっていける力)を身につけて、
“いつでもどこでも誰とでも協働できる人”を育てる。
(1)謙虚に素直に看脚下することの習慣化、当り前化
(2)利害関係にとらわれない、お役立ちの心を持つこと
(3)人の痛みを知り、その痛みを自分事として、自己を厳しく律すること(自律心)
(4)個人の尊厳を大切にし、権威主義に陥らないこと(倫理観、道徳観)
(5)社会の秩序を維持し、社会や会社の諸規程・規律を率先して遵守すること(規律性)
(6)言ったことや決めたことは、必ず実行に移すこと(誠実)
3.問題発見能力と問題解決能力を高めること。そして、継続的業績向上に結びつけること。
(1)仕事の進め方の基本であるPDCAサイクルをスパイラルアップすること
(2)問題意識と感受性・好奇心を引き出すこと
・3W(なぜ・なぜ・なぜとWHYを3回繰り返す)思考の習慣化
・“何かおかしい、ちょっと変だ”と感じたら、立ち止まって視る/観る/診る
・ノーサイドミーティングを日々始終化、当たり前化
(3)問題提起をする時は、必ず対案をセットにすること
(4)試行錯誤を奨励すること、歓迎すること
※成果・成長=心構え(行動理論)×職務遂行能力×行動量
(自律要因)
(5)失敗にこそ宝物が隠されていることを共有化して、勇気をもって問題解決の基本手順を稼働すること、させること
※成功確率が高い「問題解決の基本手順」
【手順1】問題を把握する
【手順2】原因を分析する
【手順3】対案を列挙し整理する
【手順4】比較選択して対案を選択する
【手順5】選択案の実行計画を立て、全体をチェックする
【手順6】計画に沿って、実行する
【手順7】定期的に、進行状況を検証する
(2016.10.28記)