エッセイ120回は、前回の続きになります。
教育とは ~ EDUCO TREE 後編
薬学生と学び合う機会が増えてからは、「教育とは何か?」に関連して、「勉強の目的は何ですか?」という応答の対話機会を、意識して増やしております。そして、必ずその理由についても触れます。WHY抜きでは説得力が半減することを、数え切れないほど味わいましたから…。
薬学生だけではなく、新社会人、中堅薬剤師、部下を持つマネジャーにも問いかけます。対象者によって使う言葉や表現は異なりますが、概ねこのようにお話ししております。以下、薬学生に対する最近の私の回答例を紹介させて頂きます。
質問1:勉強の目的は何でしょうか?(何故、勉強するのでしょうか?)
質問2:その理由は何でしょうか?
質問3:問題を解決したり、何かを創りだすことができるようになるためには、どのような知識・技能、考え方が必要でしょうか?
★回答1:勉強の目的は何か?
①自助力を身につけるため *自助力:自分一人で問題解決できる能力、自分一人で生きていくことができる能力
②共助力を身につけるため *共助力:周りの人と共に問題解決できる能力周りの人と共に生きていくことができる能力
③心を耕すため *心を耕す:人間性を高める、影響力を高める
★回答2:何故、自助力なのか。共助力なのか。心を耕すなのか?
①仕事は分業体制、つまりチームワークが基本。チームワークとは、自分の役割を100%果たすことが大前提。だから、一人で問題や
課題を解決できることが必須要件。
②一方、仕事は流れ。それぞれの仕事(役割)と仕事(役割)の境目に問題が発生する度合いが高くなる。だから、他のメンバーと共に
問題解決できる能力も必須要件。
③現状維持では後退と同じ。何かを創り出すことが、やりがいにつながってくる。そのためにも、自助力と共助力がセットで必要とな
る。
④上記①②③実現の源・基本の一つが、人間性であり正しい心構え(行動理論)。だから、心を耕し続けること。
★回答3:問題を解決したり、何かを創り出すことができるようになるためには、何が必要か?
①成功確率の高い問題解決の基本手順(PDCAサイクル、6W3H)のスキル化
②問題解決の思考プロセスの修得
③家庭、小学校の義務教育から大学で学んだ全ての教育内容
企業内研修での「教育の目的は何か?」の回答として、異なった言葉や言い方をすることもあります。研修のねらいや対象者によって、表現を替える場合があるのです。
例えば、“自力で生きていける人間を育成すること”、“内発的やる気(自己動機づけ)を引き起こし、生き生きとした風土・文化を作ること”、“企業目標の達成”等です。
さらに続けます。
その実現のためには、結局、一人ひとりの持っている潜在能力と正しい行動理論・価値観を引き出すことにつきると思います。引き出すためには、一人ひとりの内面を揺さぶり続けなければなりません。揺さぶり続ける基本は、“筋道の無いぐるぐる回りの応答の対話の継続”です。話す・聴く・訊くのコミュニケーション能力が問われます。…… と語りかけるのです。
その非常に難しい応答の対話(=引き出す対話)技能こそが、人事教育担当が追究するべき永遠の課題ではないでしょうか。教育機会は、有益な相互啓発の場でなければいけませんね。ここから逃げては、人事教育担当失格です。これらについては、機会を改めて考えたいと思います。
(2016.4.30記)