エッセイ82:デクノボーからの教訓は何か?

投稿日:2015年2月20日

 エッセイ80回の前文では、教材作りのきっかけと内容に触れさせて頂きました。数年前からは、現状の教育ニーズへの即応型だけではなく、近い将来考えて頂きたいと想定している教育ニーズに備えてのカリキュラム企画にも着手しております。
 今回のエッセイは、今後の勉強機会で実施したいと考えている新カリキュラムを取りあげたいと思います。ある主人公の生き方を想像して考えながら、これからの自分自身の生き方を見直すきっかけにしよう、というのが基本目的です。
 その主人公は“雨ニモマケズ”(宮沢賢治作)のデクノボーです。「生き方を学ぶ①“雨ニモマケズ”」というタイトルにしました。所要時間は3時間30分から4時間の予定です。
 以下、その進め方と主な内容を紹介させて頂きます。

デクノボーからの教訓は何か?

 どのようなカリキュラムでも、オリエンテーションで幕を開けます。「生き方を学ぶ①“雨ニモマケズ”」では、30分前後を考えております。ねらいの理解と企画した経緯の共有化が、主目的になります。現在考えております台本を披露したいと思います。

『 平成23年3月11日(金)午後2時46分 ・・・・・・・ 東日本大震災が発生 ・・・・・・ 。
 民放テレビ各局からは、しばらくの間、それまで流れていたようなCMが姿を消しました。それに変わって、番組の合間を縫って、いくつかの詩の朗読が繰り返されました。皆さんは、それぞれの詩に対して、どのような感情を抱きましたか。平時には思いもよらなかった感じ方をした方が多かったのではないでしょうか。このような秋(とき)だからこそ、痛く心に響いた詩が多かったことが思い起こされます。
 今日は、平成○年○月○日○曜日です。あれから○年と○ヶ月が過ぎ去りました。どのような出来事でも、時間の経過とともに「風化」という現象が待ち受けていますね。被災地では、“思い出すのが辛い”、“もう忘れてしまいたい”という切実な思いの方もいらっしゃることでしょう。一方、そんな思いを言葉にも顔にも出さない方もいらっしゃるかもしれません。
 皆さんは、あの時の詩を、いくつ思い出すことができますか。
 私がイの一番に思い起こしたのが、俳優渡辺謙さんが、落ち着いた抑制した声で朗読していた「雨ニモマケズ」、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」でした。何とも言えないほどに、聞き入りました。こんな一大事の時に、頭の中では何かしなければと思いながら、ただただウロウロしているばかりの自分のアンチテーゼ(ある主張や事物
に対して、それと矛盾する主張や事物)への言い訳ではないか、と思えなくもありません。様々な思いが交錯しながら、私の心にスーッと沁み込んでいきました。そんな思いを抱いた方は、私以外にもいらっしゃったのではないでしょうか。
 一方、しばらくして、何度も読んでは、どうして“サウイフモノニ ワタシハナリタイ”と考えているのか想像しながら、あの木偶の坊こそが、いつの間にか、どこか遠くに置き忘れてしまった(捨ててきてしまった)相手の立場に立つことの一例を示しているように感じ始めたのでした。気持ちが少しばかり落ち着いて、“あの秋(とき)、何を問いかけたかったのだろうか”という思いが涌いてきた頃でした。この「雨ニモマケズ」は、それは有名な詩ですね。国語の時間に、先生の後について読み合わせしたような記憶もあります。
 本日は、「雨ニモマケズ」で賢治の言いたかったことは一体何なのか、デクノボーに託した思いは何だったのか、を一緒に考えみたいと思います。そして、このデクノボーが志向する生き方から、現在の生活環境、経済環境の中での自分自身のこれからの生き方のヒントを学びとり、それぞれの考え方を披露し合いながら議論してみたいと思います。
 さらに、この議論を通して、“あの東日本大震災、福島原発事故を決して風化させてはならない”ということを、遠い未来まで訴え続けたいと思います。被災地で薬局を再開した大学の後輩も、同じような想いを抱いているようでした。   』

 オリエンテーションの後は、「雨ニモマケズ」を全員で唱和します。賢治が言いたいことは何なのか、何を表現したかったのか、考えながら唱和することを念頭において、数回繰り返す予定です。諳んじるようにしたいのですが……。
 唱和を終えましたら、グループ討議に入ります。
 今回は、3つの問いを用意しております。テーマ毎に、“討議”と“発表内容のまとめ”のグループワーク、そして“グループ発表”を、1時間前後と想定しております。状況に応じて、私自身の見解もはさむ考えです。
 討議内容は、以下の通りです。

Q1:木偶の坊とは、“役に立たない人をののしって呼ぶ言葉”です。
   雨ニモマケズのデクノボーは、本当に役に立たない人なのでしょうか。
   読み返しては、想像力を働かせ、どのような人なのかを考えて、発表しあってください。
   そして、議論を繰り返して、グループとしての見解をまとめてください。

Q2:皆さんは、(少しでも)「雨ニモマケズ」のデクノボーのようになりたいと思いますか。
   それともNOですか。どのような理由でそう思うようになったのでしょうか。
   先ず各人の考えと理由を、皆の前で披露し合いましょう。それらをもとに、議論を通して、グループの結論とその理由を
   まとめてみましょう。進め方や決定基準は、グループで決めてください。

Q3:「雨ニモマケズ」から、あなたは何を学びましたか。何を思いましたか。何か気づいたこと、気づかされたことはありますか。
   あなたの思いや気づきを、周りの皆さんへ、2分間で紹介してください。思いのたけを披露してください。

 まとめでは、私自身が教わった教訓を申しあげる予定です。その内容は、機会を改めましてつぶやきます。多くの皆さんと意見交換したいものです。
 また、第一回目の実施後には、討議内容の見直しにも着手したいと考えております。
                                                         (2014.12.1記)

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