最近企画したカリキュラムがあります。“もっともっと人間を知ろうプロジェクト”と名付けてみました。
『医療人として、一人の人間としての基礎能力を高めるために、多くの人間に興味を持ち、その人間の足跡を調べることによって、巾広い視野と対人関係能力を身につける』ことをねらいに、それぞれが興味を抱いた人、感心した人、尊敬する人などのベスト○(何人にするかは、対象メンバーの年齢などを考慮して都度決め)を紹介し合う、というプロジェクトです。
その企画理由を、もう少し掘り下げてご紹介したいと思います。
社会人になる前から、意識して健全で柔軟な判断力を養いたい!
毎年、最高学府を卒業した新社会人の方々と、10数日間、新入社員導入研修という場で共に学びます。さらに一年間は、5日前後のフォロー研修を企画して能力の底上げを図っております。
新社会人としてのその一年間、特に力を注いで身に付けて欲しい内容があります。
一言で申しあげると、健全で柔軟な判断力を身につけることです。
そのためには、未知のことを少しでも多く既知の状態にすることが必要と感じております。そのような理由から、教育担当の一員として、かなりの数の事例や様々な考え方を、思いっ切りぶっかけることを厭わないことにしております。
私の場合、過去にそうされたことで、それまで出会ったことのないようなことに対しても、フィルターを通さないでキチンと目を向けていくことが、少しでも出来るようになります。目の前のことだけではなく、掲げた目標達成のための考え方や対処法についても同じことが言えたのでした。
このようなことを繰り返しながら、今まで異質として忌避してきた未知の考え方や、好き嫌いで取捨選択してきた人間関係と向き合うことが出来るようになり、視野が拡がって着眼点の引き出しが増えていく実感を味わう機会が増えてきました。
このプロジェクトに参加する若人が10名としましょう。
一人が5名の方を紹介しますから、新たに45名の人の存在を知ることになります。現実には、同一人物の紹介があるかもしれません。既知の人物を他のメンバーが紹介する場合もあるでしょう。しかし、同一人物の紹介でも、紹介内容と紹介した理由の違いから、異なる着眼点を発見することが出来ます。知っている人であれば、知識量がさらに増えることも考えられます。
全員の発表を通して、相互啓発が促進されるでしょう。発表会では、どのような発表が出てくるのか、非常に興味が尽きません。内心、良い企画ではないか、と花マルをつけております。
これからもICT化は進展し、スマホ依存がさらに拡大するでしょう。そのような中でも、私たちに求められるコミュニケーション能力は、人に興味を抱き、人と直接話すことで養われていくことは不易ではないでしょうか。このプロジェクトから、“人を好きになるとはどういうことなのか”、“どうすれば正面から人と向き合うことができるようになるのか”など、コミュニケーション能力を磨く幹の部分を学んで欲しいと願っております。様々な人間の存在を知ることから、健全な判断力、状況に応じた柔軟な判断力が養われていくと確信しているのです。そして、それを良識ある判断力という言い方でも表現しております。
医療人を目指すなら、学生時代から、多様な考え方を学ぶこと、受け容れること、考え方の違う人と向き合うことが出来なければいけないと思います。そして、何故その様にならなければいけないのか、自問自答して答えを用意しておくことが、医療人の倫理の一つだと思うのです。
(2013.10.21記)