30才代半ばからの現存するメモや記録などから、本来当たり前でありながら見過ごされていることが見えてきました。その一つが、日々の仕事や課題解決がうまくいかない原因の多くは、それに携わるメンバーとの報連相や議論不足によるということです。お互いが納得のいくまで、時間をかけてコミュニケーションするということに行き着きます。何故なら、仕事遂行や課題解決を目指すメンバー同士の密な共有化に至るコミュニケーションこそが、人材育成の身近で有効な手段だと確信しているからです。私が提唱している真面目な雑談会(ノーサイドミーティング)は、共有化コミュニケーション策の一例になるでしょう。一昨日、そのようなことを思いながら、コミュニケーションを難しくしている要因を改めて考えてみました。
コミュニケーションを難しくしている要因はこれだけあります!
私がインストラクターを務める研修などの教育機会で、その時々の状況に応じて伺っていることがあります。それは、「あなたにとって、コミュニケーションを図ることは、簡単ですか?難しいですか?」という問いかけです。
10何年か前の某企業での社員研修では、約160名の受講者に投げかけてみました。結果は、“簡単”が3名、“難しい”という方が約80数名でした。手を挙げなかった70名前後の方々はケースバイケースだったり、判断に窮して挙手しなかったり、無関心派だったのかも知れません。このような質問をする時には、二者択一にしています。そうしないと、どちらともいえないとか、普通など中間層が増えてしまうからです。私は、その時の回答結果を踏まえた上で、次のような私見を付け加えております。「コミュニケーションを図ることは簡単かも知れません。しかし、そのためには、それなりの事前準備が必須要件となります。コミュニケートする相手のニーズを想定して、円滑で良好なコミュニケーションが成立するような進め方を事前に考えて作戦を立てておく必要があります。その上で、資料や道具などを準備して臨むことが必須要件ではないでしょうか。皆さんは、どれだけ準備をして臨んでいますか?!」と。この私見を掘り下げてみると、次のようなことが見えてきます。
そもそも、コミュニケーションは難しいと常に意識して、対話を通して、相手のニーズやウォンツを把握することがキーポイントということです。コミュニケーションとは、“何らかの手段で、あらゆる情報、又は意思・感情の伝達、交換、共有化を行う活動”ですから、その意味がお分かり頂けると思います。勇気をもって“簡単です”と挙手した3名は、私が付け加えたことを、無意識に、あるいは状況に応じて意識して実践されている方々だと、ただただ感心しました。これまで、円滑で良好なコミュニケーションを成立させるために、粘り強く試行錯誤を繰り返した結果の賜物と想像した次第です。さて、“そもそも、コミュニケーションは難しいと常に意識すること”と述べましたが、何が難しくしているのかを明らかにすることで、効果的にコミュニケーションスキルを磨き上げることができます。そのためには、難しくしている要因を明らかにする必要があります。この機会に、これまでの苦い経験を思い出しながら、改めてその要因を考えてみました。以下、私が考える要因を列挙してみましょう。
・相手の関心やニーズを的確に把握していない。
・固定観念や先入観:あの人なら…。あの事なら…。あそこの会社なら。…
・独断や偏見:あの人なら当然…。あの人なら言いそうなことだ。…
・知識の差:専門家と素人。ベテランと新人。大人と子供。…
・立場の違い:上司と部下。経営者と従業員。売り込む側と買う側。作る側と使う側。…
・錯覚:聞き違い。言い間違い。勘違い。思い違い。早とちり。憶測・推測
・コミュニケーションの限界:コミュニケーションロス。コミュニケーションギャップ
・人間の感情は一定ではない:反感。面白くない。嫌悪感。興奮。意気消沈。 …
・自己防衛本能:現状を失いたくない。自分を守りたい。都合の悪いことには耳を塞ぐ。
・自分本位(自分ファースト):自分自身に都合のいいように聞く、解釈する、判断する。
・日々の信頼関係:あの人は…(言行不一致。評論家。相手によって言うことが違う。裏切る。言いふらす。噂話をする。告げ口をする。考え方がよく分からない。…)
・誤解につながる言葉遣い:曖昧。抽象的。難解。不明確。不明瞭。専門用語。外国語。
・コミュニケーションスキルの限界:傾聴姿勢と聴き取る能力。プレゼンテーション能力
・姿勢や態度:服装(だらしない、TPOSに合わない)。横柄な態度。無表情。相手を見ない。一方的に話す。熱意が無い。傾聴姿勢の欠如。早口。声が小さい。
・TPOS:時間帯。場所。位置。状況。タイミング。コミュニケーションスタイル
全部で15項目の要因が出てきました。コミュニケーションスキルアップの課題を見直すきっかけになれば幸いです。
もう一つ、日々の行動習慣にも触れておきたいと思います。円滑で良好なコミュニケーションを実現するためには、次のことを日々実行することをお奨めします。会議・ミーティング・日常対話・面談・商談・面会・研修会・発表会などのコミュニケーション場面において、上手くいった時も、失敗と思われる時にも、自分事として、その原因(上手くいった原因、失敗した原因)を分析することです。最初は時間がかかっても、慣れてくれば数分で分析可能です。継続実施すれば、自ずとスキルアップすると思います。
最後に付け加えたいことがあります。「円滑で良好なコミュニケーションは、お互いの信頼感の中で成立する。お互いの安心感の中で育まれる」ということです。この信頼感とか安心感は、どうやったらお互いの心の中に芽生え、成長していくのでしょうか?先ず、健全な人間観、仕事観を絶対的信念として持つことです。その上で、日々人間性を磨き上げる小さな行動をコツコツ積み重ねしかないと思います。さらに、コミュニケーション機会は、Face to Faceの直接対話をベースにすることです。コミュニケーションを難しくしている要因に鑑みれば、容易に理解できると思います、考え方と行動の一貫性が、いつの日にか相互信頼関係という宝物を授けてくれると信じております。
この機会に、私自身のこれまでを振り返ってみました。簡単にコミュニケーションが図れたこともありますし、難しいと実感させられたこともありました。天秤にかけると、「難しかった」ことが8割以上だったように思います。失敗した都度、どうしたら円滑で良好なコミュニケーションが実現できるかを考えて作戦を立て、準備を怠らず対処するようになりました。苦労しながら、あれこれ試行錯誤を繰り返したことが、どこか懐かしい温かな出来事として思い出されます。
改めて、お訊ねしたいと思います。「あなたにとって、コミュニケーションを図ることは、簡単ですか?難しいですか?」
EDUCOいわて・学び塾主宰/薬剤師 井上 和裕(2025.3.15記)