私が企画運営した30数年間にわたる教育機会の資料に目を通して、つくづく実感したことがあります。ほとんど忘れ去っていたことでしたが、“そうだったのか~!”という、どこか他人事風の感覚で思い出されてきました。資料一つひとつに目を通しながら、同じメンバーが10数年間も相互啓発し続けた学び塾のような教育機会において顕著に表れているのです。エッセイ322回は、そのつくづく実感したことを中心に呟いてみたくなりました。
自分自身でやらないと、先へは進めませんね
先ず、つくづく実感したことからスタートしましょう。ほとんど忘れ去っていましたが、まとめの時間で毎回言及していたことがありました。文言は様々でしたが、その主旨は“自分で決めたことは、失敗を恐れることなく必ず実行しましょう。克己心でぶれずに試行錯誤し続けましょう”という行動提案なのです。今思えば、“何をおいても、みんなの背中を真直ぐに押さなければ”という使命感を、無意識に背負っていたのでしょう。かなり拘って言い続けていたことが、改めて思い出されてきたのでした。その様な状況下で、時期は覚えておりませんが、学び塾のまとめで話した内容の一部を紹介したいと思います。
『私の50年近くにわたる仕事人生のほとんどは、理想と現実のギャップの中での試行錯誤でした。どれだけ悔しい思いをしたことか、させられたことか ……。自分の力の無さを棚に上げて、他人や会社を恨んだこともあったように思います。その多くは勘違いなのですが …… 。一方、40才を過ぎてから、より客観的で健全な判断が出来るようになってきました。どのような場合でも、感じるギャップの実情は多岐にわたります。原因は、自分、周り、会社・組織、ルール・規則、仕事のさせ方・割り当て方など様々なのです。若いうち(=仕事の仕組みや社会の仕組み、仕事の本質や内容、などが理解できていない時期)は、ついつい他人のせいにしてしまうことが多かったですね。客観的な姿勢で見直せば、自分自身の能力や経験不足からくる勘違い・間違いが殆んどなのです。大切なことは、後になってから(10年後という場合だってある)真の原因に気づくことが出来るかどうかです。残念ながら、その真の原因を気づかないまま通り過ぎてしまう人の方がずっと多いというのが、私の率直な見方になります。
このような実態を踏まえて、皆さんには、次のように捉えて欲しいと願っています。このことは、これまでも何度となく問題提起してきたことです。人生というのは、理想と現実のギャップの狭間で自己実現していく道場であると。心を耕し続ける旅と云っても良いでしょう。そのことをハッキリ認めた上で、目の前の課題に対して、自力で対処することです。掘り下げて考えては行動し、さらに掘り下げて考えて行動する、ということを繰り返して人間性は磨かれていくのだと思います。人生は際限のない自分磨きの旅なのです。何度も悔しい思いをするでしょう。逃げ出したくなることもあるでしょう。我慢することも、辛抱(辛さを抱く)することも必要でしょう。その様なプロセスを経ながら、見えてくる大切なものがあります。物事の本質的側面です。逃げずに試行錯誤を繰り返すことで、心の芯が強くなっていきます。ですから、成就しなくたって、成功しなくたって、自分でやると決めたことを、ただひたすらやるだけなのです。お天道様は、じっと見守ってくれていると信じて進みましょう。
改めて申しあげます。何をおいても、やろうと決めたことは迷わず実行しましょう。自分自身でやらないと、その先へは進めませんから。…… (以下省略)』
年が改まって、背中を押すことに拘った理由が何であったのか、改めて考えてみました。何らかの問題提起や提案をする時に、考え方や行動指針の基盤として押さえておきたい前提要件があります。視野を拡げ本質を外さないで取り組むためです。あくまでも私見になりますが、そのことに触れておきたいと思います。
教育機会を企画運営する私の一番の願いは、“現状に甘んじることなく、失敗を恐れることなく、志実現に向けて、倦まず弛まず実行し続けて欲しい”、“心を耕しながら自己実現を意識して試行錯誤し続けて欲しい”ということです。しかし、大きな弊害もなく、順調に歩み続けていけたら良いのでしょうが、世の中そんなに甘くありません。人生というのは、楽しいこともあれば、辛いこともあります。喜怒哀楽が入り組み合って、四苦八苦する毎日と云っても過言ではないでしょう。成功体験よりも、明らかな失敗を含めた不本意なことの方が、ずっと多いのが実態だと思います。あくまでも私の経験則ではありますが、その様な現実の中で成長し続けるためには、どうしても避けては通れない前提要件があります。そして、“その前提要件こそが、成長のために欠かせない肝心要の考動(思考&行動)指針”というのが、背中を押すことに拘って問題提起し続けている一番の理由なのです。私の考える前提要件は三つあります。言い方は異なりますが、これまでも何度か取りあげてきた内容です。一つ目は、エッセイ315回で触れました「何事も、やってみないと分からない」ということです。二つ目の前提要件は「人生で成功するためには、自分自身でやってみるしかない」ということで、人生で成功するための方法の基本中の基本と位置づけております。もう一つが「自分自身の考えや行いは、自分自身に返ってくる」ということで、いわゆる自因自果のことです。この三つの前提要件が肚に落ちていれば、有言不言を問わず、“やる”と決めたら行動するでしょう。まとめの中では、三つの前提要件の意味を投げかけて、対話しながら方向づけしました。
私自身の人生を振り返ってみれば、やらずに諦めたこと、食わず嫌いで敬遠したこと、途中でさじを投げてリタイアしたことが、何度となくありました。あの時、“やっておけばよかった”とか“何で逃げてしまったのか”と後悔したことが、今でも心から消えることなく残っています。小学生時代から不惑目前までは、そんな人生だったように思います。そのようなことが事ある毎に浮き上がってきて、共に学ぶ後輩には、決めたら実行することを無意識のうちに促しているだと思います。もう一つ気づいたことがあります。何事においても、紹介したような前提要件なるものをキチンと押さえて共有しておくことの重要性です。10数年前からは、新入社員導入研修においても取り組んでおりました。その内容については、機会を改めて取りあげたいと思います。
今回のエッセイは、もっともっと羽ばたいて欲しいと感じている後輩、潜在能力があるのに羽ばたけないでいる後輩に対するメッセージでもあります。やろうと決めたら、失敗など気にしないでチャレンジしましょう。成長の秘訣は、実体験を積み重ねることです。実行あるのみです。
EDUCOいわて・学び塾主宰/薬剤師 井上 和裕(2025.1.30記)
【参考1】エッセイ315回:やってみないと分かりません~実体験を積み重ねましょう(2024.9.18記)/エッセイ256回:倦まず弛まず本気になってコツコツ努力を積み重ねる(2022.4.19記)
【参考2】人生において成功するためには、“自分自身でやること”、“誰かの手を借りること”、“誰かに手を貸すこと”の三つの方法があるといわれています。