新年度間近ですね。この時期は、新年度の目標と目標達成のための実行計画がより明確に具体化されていなければいけない時期でもあります。先日、現役の知人数人と目標に関して意見交換する機会がありました。目標設定のあり方や達成レベルに始まって、メンバーに対する目標明示の実態など、失敗談や苦労話、そしてそれぞれの考え方や悩みなど、本音の声をお聴きすることができたのです。複数メンバーによるノーサイドミーティング(真面目な雑談会)を楽しみました。
今回のエッセイは、40年近い人事教育関連の仕事経験に基づいた私見ではありますが、目標設定に関する問題提起をしたいと思います。ワンポイントレッスン風の問いかけになりますが、これからの仕事のあり方の見直しに活用して頂きましたら幸いです。
目標設定をする上で、こんなことが起きていませんか?
実行計画の進展が捗々しくない時、或いは問題解決の先行きが見通せない時、何かにつけて“やる気”や“達成意欲”を原因にしていませんか?そもそも、やる気や達成意欲を高めるためには、目標の存在が必要ではないでしょうか。先ず、そのことに気づいて、チームメンバーとベクトル合わせをすることが、より良い目標設定のスタートラインだと実感しています。以下、日々の仕事環境の中で、目標設定に関して気づいて欲しいと感じている8つの私見を取りあげてみます。
(1)「人材育成の最良のテーマ」は、「任された仕事そのものである」ということが腹に落ちていますか。
(2)理念や方針が、「行動用語に翻訳」されていますか。「理由、背景、目的(WHAT&WHY)」を明確に伝えていますか。それらが、共有化されていますか。単なるスローガンで終っていませんか。
(3)目標というのは、「情報の共有化」の上に成り立ち、それが「やる気と達成意欲、そして連帯感を生む」ということが、置き去りにされていませんか。
(4)「目標を設定するプロセス」が、「仕事の仕組みや進め方の総見直しのチャンス」であることを見逃していませんか。
(5)目標は一つでも、「目標達成の方法や手順」はいくつもあるでしょう。しかし、従来のやり方や過去の成功体験に拘っていませんか。眠っている潜在能力や想像力を活かしていますか。
(6)成功確率の高い目標は、先ず、「問題を四直四現主義で、事実に基づいて観察することによって明らかになる」ということから、目を背けていませんか。
(7)成長の要因は、「その人が発揮している能力よりも、やや高めに設定した目標」に向かって積極的に取り組むことではないでしょうか。その行動を積み重ね続けることで、成長の手応えが感じられるのです。地道な取り組み姿勢から逃げていませんか。忘れていませんか。
(8)一度のプレゼンテーションで、全てのことが理解された、全ての人が理解できたと思い違いしていませんか。「何故そうなのか」という理由や根拠を伝えていますか。
呟きを繰り返しながら、PDCAサイクルのアレンジ版である“成功確率の高い問題解決の基本手順”が、頭の中を駆け巡っております。もう一つは、これまでのエッセイでも取り上げた回数の多いコミュニケーションのあり方に関することです。
新年度を目の前にして、基本に則った目標の点検をされては如何でしょうか。目標は単なるお題目ではありません。日々意識して楽しみながら仕事に励むことで達成できるのであり、その積み重ねが人間性を磨き上げてくれるのだと思います。
EDUCOいわて・学び塾主宰/薬剤師 井上 和裕(2024.3.21記)
【参考】エッセイ210回:ノーサイドミーティング(真面目な雑談会)日常化のすすめ(2020.2.16記)