エッセイ277:私の考える信頼と安心のチームマネジメントのあり方

投稿日:2023年4月20日

 12月からの冬季間は、雪かきが体力維持の助っ人役を担ってくれます。首にタオルを巻いて、思いっ切り汗をかいて免疫力を高めております。歩行者が困らないように、自宅前の道路の除雪も忘れません。

 さて、職種にもよりましょうが、新型コロナウイルス禍によって、テレワーク・リモートワークの輪が広がりました。一方で、働き方の変化によって、いくつもの課題が顕在化しているような気がしております。その一つが、想定していたことではありますが、チームや組織におけるマネジメント、特にコミュニケーションのあり方ではないでしょうか。その実態を見聞きしながら、私が初めて部下を持った40何年か前のことを冷静な感覚で思い起こしております。32才目前の夏、私は薬剤師の道とは全く異なる世界に飛び込みました。それから半年後には、チームリーダー(課長職)として部下を預かりました。確か6名だったと思います。以来、いくつもの問題に苦慮しながら、チームパフォーマンス向上にアレコレ試行錯誤する日が続きました。とりわけ、チーム内コミュニケーションの活性化に腐心したことを忘れはしません。その時の四苦八苦とチャレンジを思い出しながら、組織におけるマネジメントのあり方を呟きたくなりました。

私の考える信頼と安心のチームマネジメントのあり方

 最初にお断りしておきたいことがあります。時代が違えども、働き方が変わろうとも、チーム活性化の根底にあるマネジメント、コミュニケーションの問題や課題は似通っているように感じているのです。先ず、40数年前に私が初めて部下を持った時のチームコミュニケーションの実態に触れておきましょう。

 課長に任命されて真っ先に行ったのが、チームメンバー一人ひとりとの個別面談でした。入社間もない私でしたから、お互いを知ることから始めようと考えたからです。同時に、会社や仕事に対する考え方(人生観、仕事観など)や提案など感じていることの聴き取りを、もう一つの目的としました。皆さんにとって、このような機会は初めてのようでしたから、面談の目的を率直に伝えた上で、不満や疑問があれば遠慮なく具申してくれるよう、特にお願いしたと思います。全員の面談を終えるまで2週間かかりましたが、予想以上の収穫がありました。それは、現状の問題点とその原因を埋めるための課題が、かなり明確になったことです。以下、問題点や原因、そして課題のいくつかを紹介しておきましょう。“①会社の方針とその背景・理由が共有化されていない。そのために、一人ひとりの行動実態のバラツキが顕著”、“②月一回の全体会議は、一方通行の連絡・指示がメイン。情報交換や議論の機会がほとんど無い”、“③自主性を発揮する場が少なく、指示待ち姿勢が強い”、“④部門長や社歴の長い先輩社員への不信感が強く、やる気の減退につながっている”、“⑤チーム内のコミュニケーション機会が少ない”など……。

 一番の問題点は、一言で表現すれば“やる気の低さ”でした。ただし、その要因を掴むことができたので、直ぐに手を打つことにしました。半数のメンバーが、“現状を変えたい”と意思表示してくれたことが大きかったと思います。チームコミュニケーションを密にすることで、潜在的やる気を引き出すことが可能と判断したのです。具体的には、毎週月曜日と土曜日に、30分間の定例ミーティングを開催することにしました。主目的は、方針・目標・情報の共有化、全メンバーによる目標達成のための計画立案を通して、これまで発揮できないでいる各自のやる気を引き出すことです。この時期の試行錯誤は、今でも記憶から消えることがありません。初回ミーティングでは、「何故、ミーティングを開催するのか」、「週2回、それも月土に開催する理由」、「ミーティングの内容とその理由」を、この日のために作成した手書きの資料を配布して語りかけたと記憶しております。面談で感じたこと、課長としてメンバーに期待すること、さらに、私の行動予定を毎朝公表することも伝えました。チームリーダーの日々の行動から、行動改善や目標達成のあり方を考えるヒントにして欲しいと考えたからです。もう一つ、私の言動を通して、部下との相互信頼感を醸成するためでもありました。このやり方にしばらく戸惑っていましたが、毎月の販売目標達成率が上がるにつれて、ミーティングでの自主的発言が増え、誰彼なく議論する頻度が増えたと思います。半年後には、指示待ち癖と思考停止癖が、徐々に消えていくような気配を感じました。新年度からは、チーム内の役割分担を明確にして、一人ひとりの責任感強化を目指しましたが、今振り返って考えてみれば、無意識に人材育成策を施していたことになります。

 この時の経験から得た教訓が二つあります。一つは、コミュニケーションの良し悪しが業績に直結することです。もう一つは、相互の信頼感と安心感がコミュニケーションの良し悪しを左右するということです。敢えて申しあげるとすれば、私の日々の言動を見て、私は信頼できる上司とチームメンバーの眼に映ったようでした。40数年前のことを思い起こしながら、信頼と安心のコミュニケーション機会の存在が、チーム活性化には不可欠だと実感しております。仕事のあり方がどのように変わろうとも、直接対話を通したコミュニケーション機会こそが、チームパフォーマンスを高める原点の一つだという感触を得たような気がするのです。

 この機会にもう一つ触れておきたいことがあります。組織のチームワークの良し悪しに関することです。チームマネジメントのチェックポイントにもなるでしょう。

 業種業態を問わず、全ての会社には事業目的があります。そして、競合他社との競争の中で、の事業目的を効果的・効率的に達成するために、役割を分担し合う分業制をとっています。そのための仕組みが組織です。ですから、会社の仕事は、いわゆるチームワークで進められています。つまり、会社の事業目的を達成するために、その共通目標に向かって、チームメンバー一人ひとりが自身の役割を認識しながら任務を果たし、相互に協力し合い、全体として相乗効果をあげながら、共通目標を達成していこうとしています。大切なことは、基本的な役割を認識しながら、急激な経営環境の変化に対しては、臨機応変にその時々の自分の果たすべきことを自覚して、最善をつくすことが求められるということなのです。そうした個々の役割認識と、全体の流れを汲み取った機敏な行動が、共通目標達成へと導いてくれるのではないでしょうか。組織運営の現状に目を向けてみれば、チームによって業績に差が出ている実態を見かけます。その原因を追究すれば、いくつかの共通点を見い出すことができそうです。私の体験からすれば、組織のコミュニケーションのあり方に大きな問題を感じることが殆んどです。チームワークの優れている組織は、役割分担が明確で、メンバー全員が会社・組織の目標を共有しています。そして、目標達成のために積極的な提案や議論が、当たり前に行われています。メンバー相互の信頼感が根底にあって、お互いに連携しながら目標達成に向けて行動しているのです。一方、チームワークが悪い組織の場合は、目標が共有されることなく、メンバーはバラバラの方向を向いているために、協働意識が存在しません。また、役割分担が不明確ですから、相乗効果が期待できないのです。このような体験や見解から、私の考える信頼と安心のチームマネジメントのあり方をまとめてみました。これらの6つの私見は、対面であろうがリモートワークであろうが共通するチームマネジメントの基本のキだと思います。信頼と安心のチームマネジメント実現の参考になれば幸いです。

 1.組織目標が明確になっている/ 2.組織目標を所属する全メンバーが充分に理解している/ 3.組織目標達成のためのメンバー一人ひとりの役割が明確になっている/ 4.メンバーが自分の役割を理解し、その時々の状況に応じた行動がとれる/ 5.メンバーがコミュニケーション活性化と情報共有化に努めている/ 6.組織目標を達成することが、メンバーのやりがいにつながっている

 今回のエッセイは、私の体験を基に“私の考える信頼と安心のチームマネジメントのあり方”を呟いてみました。仕事のあり方を見直す時の着眼点の一つとしての提案でもあります。自チームのチェックポイントとして活用頂きましたら幸いです。

  人財開発部/EDUCOいわて・学び塾主宰 井上 和裕(2023.3.3記)

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