エッセイ267:若いうちにこそ身につけたい“問題解決のための考動(思考&行動)プロセス”

投稿日:2022年11月21日

 想定外という言い方があります。手に負えないような想定外は存在するのでしょうが、“想定外で片づけてしまうことは、思考停止に陥ってしまうこと”として戒めております。この数年間、想像力が萎えてしまって、思考力もストップしそうな現実が続いています。変異を繰り返して収まる気配のない新型コロナウイルス禍、国内のアチコチで多発する地震、ロシアによる国際法違反のウクライナ侵略行為と現地の惨状、日本経済の停滞感、食糧自給率や電力不足問題などなど、先行き不安な想いもよらなかったことが多過ぎますね。今回のウクライナ問題は、現地から直線で約9千キロも離れた島国日本にとって、決して遠く離れた地域の出来事ではないと感じるようになりました。核を持ったロシア・中国・北朝鮮に囲まれている日本です。さらに、台湾や尖閣列島、北方領土など紛争に発展しかねない問題を抱えていますから、ウクライナと同じような状況に発展するかもしれません。国防問題を含めて、避けては通れない逃げられない課題が、私たちに突き付けられているのです。

 それにしても、相変わらず知らないことがいっぱいあることを思い知らされます。先ず、国際社会のルールや規範が何なのか、あまりにも無知でした。また、世界の中における日本の経済状況に関しても、もっともっと学ばなければいけません。真の実力を知っておく必要があります。プライマリーバランス(基礎的財政収支)の問題、千兆円を超す国の借金問題、この30年間の経済成長の停滞要因、3月から顕著に進む円安の影響、科学技術力の現状などなど……。歴史認識も重要です。私たちは、好むと好まざるとにかかわらず、グローバル経済や国際協調の中で生活しています。ロシアによるウクライナ侵攻は、多くの現実的問題と課題を浮き彫りにしてくれました。他人事ではありません。国民一人ひとりが、向き合っていかなければならないテーマではないでしょうか。

 そのようなことを強く感じながら、私たちは簡便性・利便性の魔力に浸りきってしまい、問題意識や感受性がかなり鈍化していることが気になります。重要な課題を先送りして、目先の付け焼刃でやり過ごしてきました。喉元過ぎれば熱さを忘れて、本質や根源を考えることから、目を逸らしてしまったのです。30数年間も携わってきた人材育成についても、同じ様相を呈しています。口をつぐんで見過ごす訳にはいきません。改めて、声を大にして提唱したいと思います!!その一つは、ずっと以前から問題提起しております“問題解決の考動(思考&行動)プロセス”を、若いうちから習慣化したスキルとして身につけることです。この考動プロセスは、一朝一夕には身につきません。幼少時代から意識して積み上げて、成人になってある時に花開くものです。考動プロセスを意識して実践し続けなければ、習慣化したスキルには到達しないでしょう。薬学生も現役薬剤師も、そう覚悟して取り組んで頂きたい喫緊のテーマです。この危機感は、以前にも増して膨れ上がっています。新型コロナウイルス禍の中で再認識しました。人材育成というのは、長い道のりを要する大仕事です。抜きすることなく、地道に取り組み続けることで実を結ぶ、手間暇のかかる啓発テーマなのです。だから、何が起きようとも、コツコツ積み上げて実践し続けなければならない永遠の課題ということを、声を大にして申しあげたい!

若いうちにこそ身につけたい“問題解決のための考動(思考&行動)プロセス”

 “成長のための最高の教材は、仕事そのものである”。私にとって、生活の糧であり希望の拠り所が仕事ですから、その考えを前提として日々過ごしてきました。

 どのような会社にも、数多くの問題が横たわっています。先行き不透明で経営環境激変の中では、新たな課題が次々と押し寄せてきます。会社の成長というのは、問題を克服し課題を解決することで生み出され、その結果として生き永らえるのです。そのことは、社員一人ひとりも、問題・課題と格闘しながら成長していくことを意味すると思います。そう考えると、30年間も続いている日本経済の停滞要因は、本質的課題を先送りした結果ということになりそうです。人材育成についても同じ様に感じています。人材育成の根幹である理念や方針が蔑ろにされ、枝葉の問題解決で満足していることに、常々危機感を抱いておりました。また、問題解決の基本が身についていないことも気になっています。その一つが、過去のエッセイで何度か取りあげた“成功確率が高くなる問題解決の基本手順”です。もう一つは、問題解決の基本手順をスパイラルアップさせる考動プロセスです。プロフェッションとして結果に拘ることは当然として、それ以上に重要なのが、そこに至る考動プロセスの実践度合いと質だということです。この問題解決の考動プロセスは、相当の覚悟と実践の繰り返しでしか身につきません。今回のエッセイは、、私の考える考動プロセスを呟いてみたいと思います。このプロセスを、日々の仕事の中で当たり前化、習慣化することです。そうすれば、問題解決を楽しみながら取り組むことが出来るようになると確信しております。

 問題解決のための考動プロセスは、三つのステップに分かれています。先ず「感じる、観る、聴く」、次が「考える、組み立てる、掘り下げる」、そして「表す、伝える、説得する」と続きます。

 第一ステップの「感じる、観る、聴く」は、「問題意識・感受性、観察、傾聴」と言い換えてみれば、より分かり易いと思います。このスタートステップは、問題意識のアンテナを高く張り巡らせ、感受性を働かせて、起きている事象の事実(ファクト)を客観的に把握することが主眼となります。そのために重要なことは、現物・現人・現場・現時点の四直四現主義で、観たり聴いたりすることです。

 次のステップは、問題(WHAT)と原因(WHY)を特定して、的確な対策を打つことです。「考える、組み立てる、掘り下げる」の三つの行為を繰り返して、実行計画の根拠や方途を理論武装します。このステップでは、重要な点と枝葉の部分を仕訳することも重要です。気をつけたいのは、安心感を満たすために、あれもこれものてんこ盛り計画になってしまうことです。“二兎を追うもの一兎をも得ず”にならないためにも、選択と集中を意識することが肝要です。真価が問われるステップといえましょう。三つの行為は、それぞれ別々に進めることもありますが、組み合わさって発動している場合がほとんどだと思われます。経験不足や能力が未熟な段階では、掘り下げ不足で安易な手を打ってしまうこともあるでしょう。また、多くの仕事はチームワークですから、役割分担によって全体の仕事が成り立っています。さらに、“仕事は流れである”という視点と併せて考慮すれば、問題が発生した時は、関係するメンバー全員で解決に当たらなければなりません。そうすれば、「考える、組み立てる、掘り下げる」に、「議論する」が加わってきます。

 そこで登場するのが、「表す、伝える、説得する」というステップです。プレゼンテーション能力、コミュニケーション能力の出番になります。ですから、コミュニケーションの定義やプレゼンテーションの定義・目的と3要素を理解していれば、「表す、伝える、説得する」ことの重要性が納得出来ると思います。

 問題解決・課題解決は、チームメンバー全員が理解し納得することで、目標達成の確率は飛躍的にアップします。本質的解決を目指すならば、この“考動プロセス”を“問題解決の基本手順”の中で、着実に実践することです。その繰り返しが、根治療法の道へ導いてくれたことが何度もありました。新入社員導入研修はもちろんのこと、いのうえ塾・学び塾などの教育機会は、“問題解決のための考動プロセス”を土台として企画運営してきました。教育理念と教育活動の原理・原則に基づいて、試行錯誤しながらコツコツ築きあげてきた結果であると自負しております。

【参考】エッセイ第96回:プロセスは結果の根源(2016.6.15記)/エッセイ第97回:成功確率の高い『問題解決の基本手順』(2016.6.20記)

【プレゼンテーションの目的】対話を通して、相手に正確に“①自分の意思を伝える”、“②意思を認識させる”、“③理解と共感を呼ぶ”、“④同意を得る”、“⑤行動を起こさせる”、“⑥信頼感を抱かせる”こと。

【プレゼンテーションの3要素(3P)】 1:内容(Program)、2:話し方・伝え方(Presentation)、3:姿勢・態度(Personality)

  人財開発部/EDUCOいわて・学び塾主宰 井上 和裕(2022.9.11記)

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