この数ヵ月間、考えては行き詰まり、思い出しては行き詰まっていたテーマがありました。“もっと楽しんで学んで欲しい。どうすれば楽しんで学んでくれるのか?”という願いのような問題意識です。そこに至るプロセスを含めて、学ぶことが楽しくなるための要素に関して、現時点での見解を呟いてみたいと思います。“先送りしたくないテーマ”に対する、私なりのケジメです。
学びの作法~学びを楽しむための要素
何事もそうですが、“楽しい”、“面白い”、“好き”という状態であれば、自発的に取り組むようになります。楽しんで追究するのです。学びについても同じではないでしょうか。現実に眼を向けてみれば、社員教育に従事する私にとって、悩ましい実態に直面し続けております。20年以上も前から、“勉強が好きですか? 学ぶことは好きですか?”という問いを発する機会が多くなりました。研修だけではなく、会社説明会での対話で質問することもあります。イエスという声が皆無に近いのが実態です。本音での回答をお願いしての結果ですから、その結果に対する悩ましさは半端ないほどの危機感となって現在に至っております。
私が企画運営する研修を含めた教育機会は、いくつかの目標を掲げて実施します。究極目標は、“参画できて良かった”、“一所懸命取り組むことができた”、“楽しかった”と、受講者に感じてもらうことです。さらに、“これから○○○します”、“明日からの目標は○○です“というように、今後の目標を意思決定して現場に持ち帰ってくれることです。従事して36年ですが、相変わらず達成の難しい目標になります。それでもモチベーションを保っていられるのは、共に切磋琢磨した仲間の存在や、“井上さんと出会えて良かった”という受講者の声があったからです。何年か前に、当時の仲間や後輩達と対話する機会が何度かありました。その成長した姿と最近の若手ビジネスパーソンに対する危機感と比較しながら、今回の呟きテーマの核心である“学ぶことが好きになるためにはどうしたら良いのだろうか?”を意識するようになりました。前途有為な若人には、“学ぶことが大好き”と公言する学び人(マナビスト)になって欲しいからです。現時点での私見を呟いてみましょう。
楽しみながら学ぶためには、その前提となる要素(ファクター)があると考えました。学びの作法というようなものです。それらが身についていれば、楽しみながらの追究姿勢が日常化されていくと思います。これまでの対人関係や仕事経験から感じたことを総括しての結論です。あれこれ考え抜いた要素を列挙してみましょう。読む、書く、話す、計算する、観察する、聴く、訊く、目標を立てる、計画を立てる、準備する、実行する、評価検証する、協力する、集中する、想像する、考える、表現する、感謝する… などです。毎日の生活で当たり前に行っていることですから、ことさら珍しいことではありません。問題は、抜かりなく当たり前に実行しているかどうかです。“抜かりなく”というのは、“何故やるのか”という根源的な自問自答をしての行動に尽きるということに行き着きました。もう少し行動レベルに落とし込んでみましょう。日記を書く、読書する、分からないことはその場で調べる、相手の立場に立つ、傾聴する、… など多岐にわたります。こうやって、掘り下げてみて思い出したのが、2001年にまとめた初版「入社1年間で定着させたい新・23の行動習慣」(参照は第5版)でした。人は一人では生きていけません。これからの長い人生をより有意義にするためには、人としての土台作りを生涯目標として自己研鑽することを第一に考えたいのです。どのような職種に就いても、人間性を認められてのプロフェッションであって、人間性を高める指針として辿り着いたのが23の行動習慣でした。これらの行動習慣が身についてくれば、視野が拡がって、自ずと学ぶことが楽しくなり追究意欲が高まってきます。これらの行動習慣が、私の考える現時点での学びの作法例であり、学びを楽しむための要素例ということになります。
最後に一言。難しく考えなくても、本人の選んだ職種・仕事の目的と目標が明確であれば、自ずと学ぶことが楽しくなると思います。“何故学ぶのか?”という本質的問いかけに対する回答も出てきます。20才代の若人は、もっともっと自発的に学んで欲しい。30才以上の中堅・ベテランには、楽しんで追究する姿を示範して欲しい。時間がかかっても、原点が何かをシッカリ押さえて、王道を歩み続けて欲しいと切に願い続けております。
入社1年間で定着させたい「新・23の行動習慣」(参考:2013.6.5第5版)
1.ニッコリ、テキパキ“ハイオアシス”を言う習慣/2.だれかれの区別なく、キチンとした挨拶をする習慣/3.心を込めた自筆のお礼状を出す習慣/4.毎朝自宅で新聞を読む習慣/5.日々目標を持つ習慣/6.目標達成のために6W3Hを動員した計画を立てる習慣/7.実行したことを振り返って、次につながるチェックをする習慣/8.メモ用具を必携し、こまめにメモをとる習慣/9.約束事・約束時刻を厳守する習慣/10.整理・整頓と清掃・清潔を実践する習慣/11.初めてのことでも恐れずチャレンジする習慣/12.何事も、まず肯定的に考える習慣/13.気が向かないことでも、まず実行してみる習慣/14.不明な点はどんなことでも謙虚に教えを乞う習慣/15.指示・命令・依頼を復唱する習慣/16.報告・連絡・相談をこまめに植える習慣/17.結論を先に言う習慣/18.失敗の原因を、まず自分に求める習慣/19.有言実行・言行一致の習慣/20.前向きな人と自分から進んで付き合う習慣/21.美点凝視の習慣/22.健全な判断力(判断基準)を養う習慣/23.親孝行の習慣
【参考】エッセイ154回:入社1年間で定着させたい「新・23の行動習慣」その経緯(2017.11.16記)/エッセイ155回:もっと知りたい「新・23の行動習慣」その1(2017.12.10記)/エッセイ156回:もっと知りたい「新・23の行動習慣」その2(2018.1.18記)/エッセイ158回:もっと知りたい「新・23の行動習慣」その3(2018.2.19記)
人財開発部/EDUCOいわて・学び塾主宰 井上 和裕(2022.7.16記)