エッセイ251:鉄は熱いうちに打て

投稿日:2022年4月5日

 小学生の時に好きだった学校行事ランキングが、ネットニュースに掲載されていました。回答者の属性が分かりませんから何とも言えませんが、年代や地域によるランキングがあれば、さらに興味深さが増すような気もしております。10年前や30年前とでは、生活実態や教育のあり方に違いがあるでしょうから、学校行事も変わっている可能性があります。それらの問題意識はすっ飛ばして、ランクアップされた行事を列記してみましょう。

 紹介されたランキングでは、修学旅行、運動会、文化祭がベスト3でした。それ以外では、合唱コンクールなどの音楽祭、卒業式、入学式、遠足、キャンプ、スポーツ大会、スキー・スケートスクールなどが選ばれていました。避難訓練が6位に入っています。時代背景が反映されているように感じます。私の小学校時代は、60数年前になります。映画上映会、クラス内学芸会が好きでした。特に学芸会は、岩手大学教育学部の実習生(通称、教生の先生)の送別会を兼ねており、印象深い行事だったと記憶しております。今回のエッセイは、これまで30数年間の新卒社会人・新卒薬剤師教育を通して気づいたことを呟いてみたいと思います。

鉄は熱いうちに打て

 新卒新入社員を始めとした若手薬剤師・若手社員との教育機会において、強く実感することがあります。良く知られた“鉄は熱いうちに打て”という格言です。もう一つは、“矯めるなら若木のうちに”でしょうか。10数年前の採用担当者つぶやきエッセイでも取りあげております。新型コロナウィルス渦中において対面教育機会がストップ状態にあります。だからこそ、強く強く感じたのです。改めてこの格言の意味を考えてみたいと思います。

 この二つの格言を思い出したのは、試行錯誤の上で実施した2020年度新卒薬剤師教育(エッセイ230回参照)の成果が根底にあります。“視野が拡がりつつあること”、“着眼点が増えていること”、“考え方に柔軟性が見て取れること”、“問題意識を持ち続けていること”、“その問題意識の中身が徐々にアップしている(的確になっている)こと”、そして“謙虚に真面目に取り組み続けていること”などから、そのような好機を逸しては悔いてしまうという感情があふれてきたのです。

 「鉄は熱いうちに打て」というのは、“硬い鉄でも熱いうちなら、どのような形にも鍛えられる”という意味から、何事もタイミングが大切であって、“心が柔軟な若いうちに鍛えあげなさい。そのチャンスを逃してはいけない”という教えになります。問題意識が高くて、初志が薄れていないうちに育てなさい、ということになると思います。もう一つ、「鉄は熱いうちに打て」の類義語になります「矯めるなら若木のうちに」は、“枝ぶりを矯正するのは木が若いうちで、大木になってからでは遅い”という意味です。そのことから、“人間も同じで、幼い時からシッカリと躾けておかないと、成長してからでは直らない”、“欠点を直せるのは、柔軟性のある若いうちで、成長してからは直し難いものだ”、という教えになります。

 10数年前を振り返って、その当時出会った新卒薬剤師達の多くは、かなり鍛え甲斐がありました。学びたいという意欲が、一生懸命な眼差しに表れていました。共に切磋琢磨するという向上心が、チャレンジ精神の点火剤になっていたと思います。元来持っている粘り強さを自力で引き出して前進する気配が滲み出ていました。その実感は、“自身が矯められることを厭わない”という表現だと感じたことを思い起こしています。そんなチーム文化を作ることが、部門長やリーダーの重点任務であることを忘れてはいけません。実は、最近感じている大きな危機感の一つなのです。

  人財開発部 井上 和裕:EDUCOいわて・学び塾(2022.2.14記)

 

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