先ず、エッセイ211回「“向き合う”ということは、…… (2020.2.28記)」の復習からスタートしたいと思います。
正面から向き合わなければならない問題・課題は、方針を定めて計画化する段階から時間を要しますし、心身のエネルギー消費も半端ではありません。それが実態です。ですから、どのような心構えで対処するのか、ここから見直さなければならないでしょう。キーワードは、「使命感」と「業績魂」・「覚悟」だと思います。“私がやらなくて、一体誰がやるのか!”という使命感を腹に落として、“何が何でもやり通す”と覚悟することです。そして、仕事から志事(熱意をもってする仕事)に昇華させることです。この段階なしには、向き合うまでには至らないでしょう。
キーワードとして、使命感と覚悟を掲げました。私が企画運営する新卒薬剤師を対象とした新入社員導入研修では、“使命感とは何ですか?”という問いかけをし、各自が考える使命感をレポートとしてまとめて頂いております。さらに、ひと月後のホームルーム(以下、HR)において、“医療従事者が任務を果たす上で、何故使命感が大切なのか!”を掘り下げて考える機会を設けております。今回は、そのHRの概要を紹介させて頂きます。
使命感と覚悟を持って事に当たった先人・先輩から学ぶ
このHRのねらいは二つあります。普段使っている言葉の中には、お互いの解釈が異なっていることを意識しないまま、同じ理解を前提として一方通行の会話をしているケースが多いと実感しています。円滑なコミュニケーションを阻害する要因の一つでしょうか。そんな実態に気づいた上で、信頼と安心のコミュニケーションを状況に応じて工夫することを促進するのが一つ目のねらいです。もう一つのねらいは、使命感についての私の見解を語りながら、先人や先輩の足跡から、“使命感とは何か?”を学び、そして使命感の本質に迫ることです。二つの質問(Q1、Q2)を通して、使命感の定義を収斂していきます。
Q1:次の方々をご存知でしょうか?(敬称略)
野口 英世/カルロ・ウルバニ/深沢 晟雄/ウマル・カーン/中田 厚仁
Q2:それぞれの職業は何か、 或いは何をされた方なのか、ご存知でしょうか?
皆さんは、どれだけご存知でしょうか?上記5氏以外に、緒方貞子/高山 良二/中村 哲・伊藤 和也/遠山 正瑛/高 大哲/李 秀賢の各氏を紹介しながら、どこで何をされた方々なのか、その実態や功績を調べながら、使命感について啓発し合うのです。
私たちは、みんな必要とされている人なのです。中田厚人さんが、米留学中にある先生からもらった『一生心に残る』言葉だそうです。その言葉から、使命感に至る志が芽生えたように思います。アフガニスタンで凶弾に倒れた中村哲さんですが、絶対に住民を見捨てない覚悟で非武装を貫いた中村さんの行動から、学べることがたくさんありますね。さらに、先の見えない新型コロナウイルス禍での医療従事者やエッセンシャルワーカーの姿は、使命感のなんたるかを学ぶ貴重な実例になります。そのような相互啓発を通しながら、私の見解も紹介しております。
「私がやらなくて誰がやるのか」と。そして、多くの先人・先輩から学びながら、そのような強い意志のもとで、目の前の課題と向き合うことが使命感なのだと思います。これからの人生で、使命感の本質を都度見直しながら、仕事のあり方を追求して欲しいと願っております。
井上 和裕(2020.7.15記)