エッセイ207:笑う力(POWER OF SMILE)

投稿日:2020年5月25日

 2005年4月から呟き始めたエッセイは、数を重ねて500話に達しました。その中の一部は、こうやってホームページに掲載しております。何らかの問題提起を通して、“前を向いて、共に切磋琢磨しよう”という呼びかけが目的です。この15年間、毎月、30数名の皆さんにお届けしておりました。

 3月半ばのある日、新型コロナウィルスの現状を鑑みて、定期配信をストップしようと決めたのです。問題提起の内容の多くは、現状にはそぐわないという判断からです。呟く気力が萎えていたことも影響していました。数日後、私よりも二回り若い知人で仙台在住のBさんからEメールを頂戴しました。一週間ほどでしたが、何度かやり取りしました。やり取りを通して、その時々の状況に合わせた内容のエッセイを呟き続けようと思い直したのです。私の弱音を察して、背中を押してくれたのでしょう。

 さらにBさんは、こう綴ってくれました。『お返事ありがとうございます。もう一度エッセイを読み直し、笑うことは今の私には難しいけれど、口角は上げていよう!と決めました』と。そして、気づかされました。こんな時だからこそ、日常の和顔愛語が大切であり、特に“微笑みの笑顔”、“笑い”の大切さを実感したのです。運よく、書き上げたばかりのエッセイ「笑う力(POWER OF SMILE)」がありましたので、4月号として届けることができました。

 

笑う力(POWER OF SMILE)

 笑いの効用に興味を持ったきっかけは、2003年1月3日の新聞記事(出所不明)でした。“失くしたものは…”シリーズの2回目で、“子どもの笑顔どこに”という見出しがついていました。その記事には、笑顔のない接客や冷たいと感じられる対応などにも言及していたと記憶しております。

 以降、“糖尿病患者の血糖値は笑いで下がるのか?”という公開実験、“笑いが免疫力を高める”ことなどを新聞記事で知りました。さらに、2002年に発刊された「EQリーダーシップ」(D・ゴールマン、R・ボヤツィス、A・マッキー著/日本経済新聞社)では、“笑いは能率を向上させる”、“笑顔が売上を伸ばす”の単元があって、CCU(心臓病の集中治療室)における笑いに関係する死亡率の違いの事例紹介もありました。数年前には、“一日五回は笑おう”と提唱する医師、笑いヨガを採り入れる病院、自然治癒力を高めようと活動する笑い療法士の存在などを知り、笑いの効能を考えるカリキュラムの必要性を感じたのでした。

 腹を抱えて笑う、大声で笑うから、物静かな微笑みまで、笑い方は千差万別です。十人十色で、一人ひとり個性(違い)があります。さらに、その時々の状況に即した対応が求められることもあります。医療施設において大笑いはなかなか出来ませんが、患者と接する医療従事者の表情は和顔でありたいと思います。モナリザ並みの微笑みで、日々の仕事と向き合いたいのです。

 そんな思いが強くなって、一昨年の新入社員導入研修から、笑顔の大切さとその理由を考えてもらっています。グループダイナミックス研究所のAIA意欲啓発誌『あいきゃん』No300の事例などを参考にして、いくつかの調査から見えてくる微笑や笑いの効果・効能を知り、自分自身の日々の表情にも焦点を当てて、笑う力なるものを掘り下げて考える機会にしております。研修後半のホームルームで、所要時間50分前後のカリキュラムです。

 自然と湧き出る笑い声が、ますます減ってきているように感じます。私見になりますが、だからこそ、笑顔の素敵な薬剤師に出会いたいのです。笑顔で穏やかに患者に向き合う薬剤師が、もっともっと顔を出して欲しいと思い描いております。昨年の初秋のこと、小学4年生が詠んだ川柳を見つけました。心の底から嬉しくなりました。また、ノーベル化学賞を受賞された吉野彰氏、ジャパンラグビーの田中史朗選手が見せてくれた自然の笑顔は、私の年代にとって懐かしい“笑う門には福来る”を思い出させてくれました。

      幸せだ 腹いたいほど 笑う時(小学4年 NE作)

           EDUCOいわて・学び塾 井上 和裕(2020.3.8記)

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