第23回学び塾(2019年6月23日)には、今年大学を卒業した新薬剤師が出席します。私から声掛けをして、自主的に学ぶことを条件として参画を認めました。誘った理由は、学び塾で最近特に力を入れているテーマを、今の内から学んで欲しいからです。また、食品表示診断士と環境計量士の資格を持つ食品分析の仕事に携わっている知人も仲間入りします。異業種からの参加は、新たな化学反応が期待できます。今回のエッセイは、数年前から力を入れているテーマを紹介したいと思います。
マネジメント&リーダーシップ教室
組織の長にとって必須のマネジメントやリーダーシップの心得は、拝命してから学んで間に合うものではありません。部下を持つようになれば、その時から組織責任者としての幅広い任務が待ち構えています。組織の一メンバーであった時と比較すれば明らかですが、その任務は質量ともに雲泥の差があるのです。その時点で、マネジメントやリーダーシップの何たるかを学べば何とかなる、あるいは事足りるという甘えは許されないと思います。
一方、職位や部下の有無にかかわらず、自分自身の任務を果たすためには、マネジメントセンスやリーダーシップを必要とする場面が数多くあります。幾つもの要素が絡まり合いながら、関わり合って成果へと結びついていくのです。そのような理由から、マネジメントとリーダーシップのイロハを、早い段階から学ぶ必然性があるのです。目の前の課題をキチンとこなしていくうちに、それ相応の年月を経て身につくのがマネジメント能力でありリーダーシップだと実感するようになりました。しかし、意図して学ぶ機会が作られていないのも実態です。
申しあげた問題意識を引きずりながら、マネジメントに関してもリーダーシップについても、社会人の仲間入りをした段階から学ぶ機会を作るべきだと強く感じます。それは、人材育成についても同様です。20歳代半ばから、意識して後輩育成を任務の一つとして位置づけるべきだと思うようになりました。抑々、マネジメントとリーダーシップに関する教育機会を、義務教育的な科目として教育体系図に明記するべきなのです。人を育てることの本質(考え方、理念、ノウハウ)を学び、後輩とともに切磋琢磨しながら、マネジメントとリーダーシップの素養が身についていくのです。心を耕すことを忘れないで、基本に則った後輩育成を通して、自身の手で人間的魅力を高めて欲しいのです。そんな思いもあって、学び塾では2009年のスタート時点から、マネジメント関連の基礎知識、人材育成の基本を、育成課題の幹の一つとして取りあげてきました。そして、第20回学び塾からは「マネジメント&リーダーシップ教室」をスタートさせたのです。中田薬局においては、入社3年間を義務教育期間として、2年目から中田薬局版「マネジメント&リーダーシップ教室」をスタートさせたいと考えております。
開講に当たって、それまで曖昧であったマネジャー(マネジメント)とリーダー(リーダーシップ)の違いを再定義し、両面からの修得を目標としました。また、肝心な部分は、復習を繰り返して深耕するやり方で進めております。メンバーの将来を見据えた能力開発機会として、これからも試行錯誤し続けたいと思います。以下、私なりに解釈したマネジャーとリーダーの違い、学び塾で取りあげたカリキュラムを紹介しましょう。
★マネジャーとリーダーの違い
1.マネジャー
・どのようにやるのか(HOW):戦術家
・PDCAサイクルをスパイラルアップする人。(問題解決の基本手順に沿って仕事をさせ続ける人)
・実務をきちんと把握しており、メンバーの能力開発を促進させ続ける人。
2.リーダー
・何をやるのか、何故やるのか(WHAT、WHY):戦略家
・志とビジョンに従う人であり、その実現のために、関連する人たちを活かす人。
・メンバーの心に火を点ける人。
・決定する人であり、実現できなかったら責任をとる人。
★「マネジメント&リーダーシップ教室」実施カリキュラム(今後の予定も含む 9
1.マネジャーは何をする人か?(120分~150分)
・マネジメントとは?
・マネジャーの役割
・部下を持つマネジャーの具体的任務
2.目標による仕事の進め方(120分~150分)
・目標と自己統制によるマネジメントのねらいと本質
・目標による仕事の進め方の基本ステップ
・問題とは/成功確率の高い問題解決の基本手順/問題解決の思考プロセス
3.会社の中における役割(60分)
・ビジネスパーソンの役割形成と成長/役割の二側面
・状況に応じた役割の重要性
4.WHAT LEADERSHIP?(90分~120分)
・リーダーシップとは?
・リーダーの役割と機能
・状況対応リーダーシップ
・部下は「掌握」すべきなのか?
5.人材育成の基礎知識(120分~180分)
・仕事遂行に必要な能力
・人材育成トライアングルシステム
・育成手法の長所と短所、相関関係
・教え方のプロセスとコツ
6.薬剤師にとってのコミュニケーションの本質は?(200分~300分)
・コミュニケーションの本質を追究する時の前提条件
・前提条件と日頃の問題意識から、医療施設従事者にとっての本質は何か?
・信頼のコミュニケーション実現のための行動例
・感受性を磨くための実践例
7.上司百態(180分)
・実在するビジネスパーソンのケーススタディ
8.人間性についての基本的信念を確立する(120分)
・人を理解する基本
・D.マグレガーのX理論・Y理論
・さあ、人間性に関する基本的信念を確立しよう
9.なぜ患者様と呼ぶようになったのか?どのような呼び方が良いのだろうか?(150分)
10.生き方を学ぶ①「雨ニモマケズ」(宮沢賢治)より(150分~200分)
11.企業内教育の活動指針(企画中)
・教育活動の目標
・教育担当者の役割・機能
・教育担当者に求められる基本要件
・人材育成プラットフォームの構築
・「My Favorite EDUCO BOX」から
(2019.6.14記)