エッセイ190:私の眼に映る中田薬局のここが素晴らしい

投稿日:2019年8月6日

 昨年9月上旬、経団連会長から就職協定廃止の発言がありました。舌の根が乾かないうちに、今度は政府が日程の維持継続を言い出したのです。10月下旬のことでした。
30数年も採用の仕事に携わってきました。その間、就職協定なるものの理念と規範を意識して活動されている企業がどれだけあるのだろうか、常に割り切れない思いを抱き続けて現在に至っております。そもそも論で語れば、疾うの昔から形骸化していると思われる申し合わせだけの協定でしたから、今さら何ともコメントのしようもありません。就活生から相手にされないことが多い小企業の場合、常に門戸を開いて通年採用で対処するしかありません。就職協定に関することが毎年マス媒体で取りあげられても、正直なところ関心すら持てない素通りニュースの類に入ってしまいました。就職協定を守ってきた中小企業の悲哀を味わった私にとりまして、正直者が馬鹿を見る就職協定論議には感受性の一かけらも反応しそうにありません。
 割り切れない思いという点では、学生の皆さんへの企業紹介のあり方もその一つです。自社の良いとこだらけのオンパレードに対して、疑念を抱いてウンザリしている声を聞くことがあります。そのような状況下での中田薬局の採用活動は、就職活動の本質的なあり方を問いかけて自力で考えるQ&A方式、企業の活動実態を直に観察して将来の方向性を築き上げる実学方式で対応しております。常に問題意識を切らすことなく、薬学生の意識と行動のダブル変革を目的と位置づけて、本質追求精神で試行錯誤し続けているということです。本質追求という幹だけは、今後もぶれることなく維持し続けたいと思います。

 今回のエッセイは、昨年度の内定者懇談会での自己紹介の中身を披露したいと思います。
 中田薬局では、内定式という呼び方ではなく、内定者懇談会という表現にしております。開催目的と内容を鑑みれば、内定式という表現はそぐわないという判断からです。開催日も、入社予定者の学事日程と相談して、学業に影響しない日程にしております。

私の眼に映る中田薬局のここが素晴らしい

 入社予定者の内定者懇談会では、参加者全員の自己紹介にも工夫を凝らしています。内定者、幹部社員、一般社員に分けて、それぞれ次のような内容を指定しました。
 内定者の場合は、①氏名、②大学名・学部学科名・所属講座又は所属ゼミナール名、④卒業論文テーマ、⑤出身地・出身高校、⑥中田薬局を志望し最終決定した理由、⑦何か一言の7項目です。現社員にとっての興味は、何と言っても“弊社の志望動機であり、弊社に決めた理由”が一番になりそうです。
 一般社員は、今年度入社の2名が出席しました。①氏名、②配属先、③現在の修業(仕事)内容、④出身大学・学部学科名、⑤出身地、⑥中田薬局を志望し選んだ理由、⑦(入社半年経過して)今感じている学生と社会人の違いは何か、という内容です。“今感じている学生と社会人の違い”は、内定者にとって興味深い情報となりますが、私には2人の成長度を知る機会になりました。
 社長を含めた幹部社員は、①氏名、②年令、③担当している仕事内容、④私の考える“中田薬局のここが素晴らしい”の4項目でお願いしました。自社をどのように評価しているのか、実はお互いに意見交換をしたことがありませんでした。特に美点、長所については、皆無に近いと思います。いい機会と位置づけて、皆さんから紹介頂きました。内定者、社員にとって、自発的モチベーションが活性化されたと思います。

 自己紹介に付随させて、リラックスタイムとして15分間の“釜石を知ろう”クイズをやってみました。三つのQは、以下の通りです。
  Q1「釜石は、“○と○と○のまち”と称されています。三つの○を順番に答えてください」    
  Q2「日本ラグビーのモットー、ラガーの合言葉があります。何でしょう?」
  Q3「①このモットーの元はどこにあるのか(誰が言ったのか)?そして、②本来どのような意味でしょうか?」

 ここから、本題に入りましょう。

 先ず、私の眼に映る中田薬局の素晴しい点について、内定者に話した内容をそのまま掲載したいと思います。二つに絞りましたが、これらは最近とみに感じていることです。

『私が大学を卒業してから11社で仕事をしました。その経験も参考にしながら、より客観的視点で中田薬局の素晴しいところを二つ紹介します。
 先ず、何かやりたいと考えたことをやれる環境が調っているということです。それは、本人がやりたい分野、得意な分野で活躍できるということであり、自分らしく生きていけるということを意味します。当然、提案することが前提ですし、やりたいこととその理由(WHAT&WHY)がはっきりしていなければいけませんが…、この環境は太鼓判を押しましょう。
 中田薬局の会社案内の表紙には、「小さな薬局の挑戦です」とあります。一年先輩の二人とスクラムを組んで、新たな中田薬局を築いて頂きたいし、喫緊の課題であるこれからの薬剤師のあり方を具現化して欲しいと切望します。若人の特権である行動力で、積極的にチャレンジしてください。
 もう一つは、企業や職種の垣根を越えて、釜石の医療を支えるんだという企業姿勢です。東日本大震災での釜石方式、地域包括ケアのチーム釜石は、そんな企業姿勢の産物だと思います。私自身は、10数年も前から企業内教育の分野で同じように考えていました。薬剤師とその卵である薬学生の育成は、企業・大学・各種団体(薬剤師会、業界)がそれぞれ個別にやる時代は終わったということです。目的が同じでありながら、違う視点でばらばらにやっていては効果が上がらないという危機感からです。可能な限りいわゆる垣根を超えた連携を試みてきました。この分野ではまだまだなのが実態です。しかし、中田薬局だからこそできるオンリーワン(他社には真似のできない差別優位性)の育成方法(特に、共通専門能力)で皆さんを支援して参ります』

 今年度入社の2名も来年度入社予定内定者も、弊社の活動に共感して、弊社で保険薬剤師の道を選択してくれました。素晴らしい会社という評価をして頂いたことになります。もう10数年も前になりましょうか。毎年毎年繰り返されるマンネリ化した採用活動に、どこか倫理的香りのする基本的な問いかけに出会いました。発案者は私自身で、私自身に対する問いかけでもありました。

Q1「あなたが勤務している会社を、『うちの会社は素晴らしい会社ですよ』って、心の底から胸を張って言えますか?」
Q2「あなたのお子さんに対して、『うちの会社は、すごく良い会社だよ。是非企業研究してみなさい。そして、入社を勧めるよ』って、言い切ることができますか?」

 本音で、憚ることなく『うちの会社は素晴らしい会社ですよ』、『うちの会社は、すごく良い会社だよ。是非企業研究してみなさい。そして、入社を勧めるよ』と言い切ることのできる社員が、果たして何人存在するのだろうか?
 そのような企業風土を耕し続けることが、企業内教育の根幹でなければいけません人材育成の究極的テーマは、社員一人ひとりが『うちの会社は素晴らしい会社ですよ』と公言してくれる会社の実現だと思うようになりました。その実現のためにも、正にノーサイドミーティングで、お互いが感じている「私の考える“中田薬局のここが素晴らしい”」を出し合うことを奨励したいと思います。
                                                     (2019.5.1記)

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