新入社員導入研修の最終日近くになって、ホームルームで必ずお話することがあります。言い続けて30年以上になります。それは、初めて頂戴したお給料の使い途についてです。
言い始めた時と現在の言い方は異なりますが、その主旨は変わっていません。「今までお世話になった方々に、初給料で、それまでの感謝の意を表してみませんか?」という問いかけでスタートします。10年前までは、遠慮がちな奨励的内容でした。最近では、私の家族の実話、そして私がどう感じているのかの紹介にしております。私からの奨励というより、家族のあり方、仕事のあり方などを、社会人1年生の時に考えて頂く機会としてお話しております。後日その使い途を訊けば、30年前も現在も変化は無さそうです。肉親や恩人に対する「有難う」の心が、今でも廃れていないことに安心しています。
今回は、「新・23の行動習慣」の最終回にしたいと思います。取りあげたかったのが、“美点凝視の習慣”と“健全な判断力(判断基準)を養う習慣”です。1年間で定着することが難しい習慣であることを承知の上で、しかし、この時期から強く意識し続けなければ身につかないことから、わざわざ仲間入りさせました。部下を持つようになるまでに、当たり前化しておきたい行動習慣だと考えております。
もっと知りたい“入社1年間で定着させたい「新・23の行動習慣」”その3(最終回)
『21.美点凝視の習慣』
美点凝視!?その意味は、読んで字の如しでしょう。ブラックリストを捨てて、人の長所・美点・善行に眼を向けよう、シッカリ観察して評価しよう、ということです。
ヒトは、他人の短所・欠点そして不具合を容易に探すことができますね。事と次第によっては、自分自身と比較をして、悲しいかな一人ほくそ笑むこともありましょう。一方、長所・美点・善行は、意識していても、思いのほか気づくことが難しいのが実態ではないでしょうか。余談ですが、何故そうなってしまうのか、心理学的側面で学びたい気が起きています。
皆さん、ここで一つチャレンジしてみませんか。あなたの同僚・後輩あるいは部下数名を選んで、“○○さんの長所・美点・善行と、短所・欠点・不具合な点”を書き出してください。いかに長所・美点・善行に眼を向けていなかったのか、明らかになるはずです。
また、このような経験をされたことはありませんか。長所・美点・善行を言われた時と、短所・欠点・不具合を指摘された時を比較してみれば、前者の方が嬉しいですね。やる気も起きてきます。
大切なことは、日常から、両面を、事実に基づいて、客観的に把握していることではないでしょうか。そのためには、努めて『美点凝視』を心がけたいのです。若い内に、美点凝視の習慣を身につけておくことではないでしょうか。実は、このことの大切さを、私に教えてくれた若者がいました。20歳も年が離れているTK販売時代の後輩です。彼は30才代半ばで亡くなりました。その経緯については、別の機会に譲りたいと思います。
もう一つ触れておきたい着眼点があります。長所・美点・善行であれ、、短所・欠点・不具合であれ、本人に対してキチンと伝える努力を惜しまないことです。その場合、非常に大切なことは、そう評価した理由を必ず添えることでしょうか。何故なら、間違い勘違いが付きまとうことがあるからです。また、人によっては、“思いもしなかった”ということもあるかもしれません。コミュニケーションの問題になりますが、理解と共感・共鳴のための準備を用意して臨むことです。
部下をお持ちの皆さんには、二宮尊徳の言葉をプレゼントしましょう。共感できる名言であり、金言だと思います。
「可愛くば、五つ教えて三つ誉め二つ叱って良き人とせよ」
『22.健全な判断力(判断基準)を養う習慣』
マネジャー(取締役、執行役員、支店長、部門責任者、部長、課長、係長、エリア責任者、薬局長、管理薬剤師など)となって部下を持ち、組織の責任者になった時、必ず身につけておかなければならない能力要件があります。“それは何か?”を申しあげる前に、マネジャーの任務に触れておきましょう。
マネジャーの主要任務は、大きく三つあると思います。「業績・業務目標の継続達成」「組織活性化」「部下育成(人材育成)」です。この三つの任務を遂行する上で、絶対避けては通れない関所があります。それはデシジョンメイキング、意思決定ということです。“マネジメントとは、意思決定である”とも言われるくらいですから。この意思決定は、自分一人で判断しなければならないことも発生してきます。否、部門の最終責任はその部門のマネジャーが負うわけですから、マネジャーが判断しなければなりません。
一方で、よ~く考えてみれば、この意思決定の問題は、部下の有無に関係ありませんね。日々の仕事、日常生活そのものが、一人ひとりの意思決定によって遂行されているのです。まさしく自己責任で行われるべき問題になります。そうなれば、意思決定の根拠となるものを、その都度用意することが必要となります。組織の場合は、上司という力学的立場で、上司の言うことを部下に言い聞かせることは可能でしょう。しかし、それでは不信感が募ってきて長続きしません。個人の場合は、根拠なしには評価のしようがありません。
とどのつまりは、“常に判断基準が問われてくる”、ということになります。この判断基準を身につけるためには、様々な経験と試行錯誤、不断の勉強・学習が求められます。部下を持つようになってから勉強すれば事足りるほど甘くはありません。手遅れになってしまいます。だから、今の内に申しあげておきたいのです。“健全な判断力(判断基準)を養う習慣を意識しなさい”と。
健全さとは、多くの人が納得できるものをいいます。その企業の顧客満足実現のために一所懸命努力している人が報われるもの、でなければなりません。当然、法に触れることは許されません。
そのために、もう一言申しあげておきます。“健全な判断力(判断基準)の土台は、企業理念と行動理論(心構え)である”と。自然体で、当たり前に、患者満足・生活者満足・従業員満足・取引先満足を追究し続ける思考習慣、行動習慣を身につけたいのです。行動理論(心構え)を正す意識を持ち続けたいのです。
もっと知りたい“入社1年間で定着させたい「新・23の行動習慣」”のいくつかを、3回に分けて取りあげてみました。いかがでしたか?
このような行動習慣のあり方、行動習慣内容そのものに対して、様々な考え方が存在しますね。ですから、私の見解にも賛否両論あるでしょう。何事においても重要なことは、戦略発想ではないでしょうか。シンプルに表現すれば、6W3HのWHAT‐WHY‐HOWのトライアングルだと思います。
(2018.2.19記)