エッセイ142:成長の道筋は、いかにして行動の継続を維持し続けるか

投稿日:2017年8月5日

 私の基本的な仕事作法は、PDCAサイクル(別名:マネジメントサイクル)をスパイラルアップすることです。頑固に、ぶれずに実行し続けております。
 その三つ目のステップであるCは、結果とそこに至る道筋を評価・検証することですが、それは二つの原因ついきゅう(追求&追究)という旅なのです。この段階で重要なことは、このプロセスを通して、学習能力、状況判断力や応用力が、徐々に磨き上げられるということを意識して取り組むことです。修破離でいえば、離に連なる破の段階といえましょうか。
 大げさな気もしますが、この追求&追究の旅は人生の縮図を実感させられる旅でもあります。評価結果の成否はともかく、そこに至る過程の中には、必ずと言っていいほど、きれいに割り切れない要因が絡まり合っています。掘り下げるほどに、絡まり方が複雑に見えてきます。理不尽と思われる無理難題、何とも納得のいかないことなど、いくつも浮き彫りになることがあります。パワーハラスメント的な押し付け、責任の所在が不明確、曖昧なチーム運営実態、メンバー間のコミュニケーション不足、取組み意欲の問題、さらには手柄の横取りなど、会社では“これは変だぞ。何かおかしいぞ”ということ、理屈だけでは解決に至らないことが、いくつも出てくるものです。
 だからといって、“止~めた”というわけにも参りません。それでは無責任ですから。逆に、解決に至らなくても、割り切れない要因も全て俎上に乗せて明らかにすることが、次のステップであるA(Action)に好影響を与えてくれます。それ以上に、納得のいかない割り切れない要因が、心を耕す教材になるのです。私の場合、振り返って冷静に反芻してみれば、いくつもの気づきが湧き上がってきます。受け止め方次第でしょうが、C(Check)こそが仕事の腕前や心構えのあり方を磨き上げる教材になると思います。私の場合、そう言い切れるようになりました。
 具体的な事例をご紹介すれば分かり易いでしょうが、その多くは生々しくもありますので控えたいと思います。言えることは、それらの体験が、傾聴・観察の必然性を教えてくれました。自分:相手=49<51の考え方を指し示してくれました。その姿勢を貫くことが、私の解釈する誠実の一つとなりました。だからでしょうか、長い間『誠実』が私の座右銘でした。そして、“誠実に勝る知恵無し”というフレーズを、常に意識するようになったと思います。

 もう一つ、身についた仕事作法から気づいたことがあります。その気づきを6年ほど前に公式として表現しました。職種や職務経験年数を問わず、研修などのOFFJTでのまとめでお話する機会が増えております。その公式を、今回のエッセイで紹介させて頂きます。

成長への道筋は、いかにして行動の継続を維持し続けるか

 紹介したい公式は、結局、私の経験則から行き着いたものです。しかし、オリジナルといえるものではありません。どなたもがご存知のキーワードを掛け合わせたものです。

     成果・成長 = 根気 × 積み重ね × 継続

 “成果や成長に結びつく秘訣は何だろうか?”、“目指している目標を達成するコツは何か?”…。
 “教育とは何か?”と同じように、教育担当に従事して以来、いつも頭から離れない私自身への問いかけです。私の独り合点かもしれませんが、“成功するまでやり続けること”というのが、現時点での結論となります。この回答がきっかけとなって、『成果・成長=根気×積み重ね×継続』が生まれたのでした。

 つぶやきエッセイで、何度も繰り返し強調した行動指針があります。
「継続は力なり」、「積み重ねは力なり」です。それも、継続と積み重ねの二つ要因は、別々にではなく“共に”の関係ですよ、と申し上げております。
 長い仕事人生において、新しい職種や職務に配置転換しなければならないことが出てきます。また、経営環境の激変によって、仕事のあり方が抜本的に変わることだってあります。これからの時代、今まで以上の速度と頻度で、誰に対しても起こり得ることでしょう。
 今まで経験したことのない仕事に従事するとなれば、新たな職務遂行能力を身につけなければ組織全体の機能が低下してしまいます。知識・技能だけではなく、仕事の進め方やツールなどのシステム的側面も含まれます。意識しなくても自然と出来るようになるまで、仕事を通して訓練し続けるしかありません。何十回、何百回と繰り返し実践して、無意識に心身が動くようになるまで鍛錬するしかないのです。
 鍛練とは、「千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を練とす」(「五輪書」宮本武蔵著より)という表現の通り、千日の訓練で基本的な技が身につき、万日の訓練でその技が練りあげられて名人の域に達する、ということです。千日は三年間、万日は三十年間ですから、苦しい訓練に耐えながら、繰り返し積み上げる努力なしには為しえません。つまり、新たな職務遂行能力やセルフコントロール(自己統制)できる力が身につくまでには、かなりの日数と訓練が必要だということです。頭で思い描くほど容易くはないのです。成果を上げ続ける、考えたレベルまでの成長を果たすには、“鍛錬しか道はない”と腹を括り、腰を据えて努力するしかありません。鍛錬というのは、結局、毎日の地味な基本の積み重ねなのです。そして、その積み重ねは、行動の継続があって成り立つことから、『積み重ね×継続』ということになるのです。スピード、即戦力、効率性が優先される時代には、気にかけて頂けない考え方かもしれませんが……。
 一方、継続といっても、急にハードルを高めて、通常の2倍も3倍も努力し続けることは簡単ではありません。ちょっと気が緩めば、“3日坊主でお手上げ”が関の山でしょう。そこで、自分の限界のせいぜい1.1~1.2倍程度の継続努力をお奨めします。さらに、3日坊主も陽転思考で乗り切るのです。“3日坊主、10回繰り返すと30日”というように。
 日本プロ野球界の至宝である王貞治氏の一本足打法を編み出した故・荒川博巨人軍元コーチは、このように表現されています。「毎日やることが大切。努力というのは毎日の積み重ね。だから、決して休んではいけない」と。
 イチロー選手は、野球少年たちに対して、こう語りかけているようです。「人の2倍とか3倍も頑張るなんてできない。だから、自分の中でちょっとだけ頑張る、というのを重ねて欲しい」と。自らのMBLでの実績を振り返っての実感だそうです。

 ここからは、“いかにして行動の継続を維持し続けるか”についての私見になります。
 このテーマも特効薬はありません。一言、根気(或いは、気力)という心の姿勢です。克己心と自己責任意識で持ち続けることです。
 根気というと、忍耐とか我慢のイメージがつきまといます。私の年代であれば厭わないかもしれませんが、今の時代では通用しそうにありません。そこで着目したいのが、志と目標(ビジョン)を明らかにして、誰のためでもない自分のために対処することです。私の場合、その過程で、“やりたい”、“やってみたい”という意欲へと昇華していきました。そして、いつの日からか、この公式(成果・成長 = 根気 × 積み重ね × 継続)に辿り着いたのです。
 もう一つ、これを忘れてはいけません。根気から逃げ出さないための対処法です。これも私の経験則になりますが、“一日一スモール・サクセス・ストーリー(ほんの小さな成功例)”の積み重ねが有益だと思います。一日一善を積み重ねるのです。数年、いや場合によっては、もっと長いスパンでの小さな成功例の積み重ねこそが、成長の一番の決め手ではないでしょうか。

 こう考えてきますと、いかにして対自競争を克服するか、にかかってきますね。私の70年間を振り返って、私自身が納得できる対自競争に打ち克つ方程式があるとすれば、以下のような結論になります。
 “目の前のことを一所懸命やりましょう”、“目の前の課題から逃げないで誠実に対処しましょう”という、当たり前の行動姿勢です。一所懸命も誠実も、誰にでもやれることです。そうすれば、結果が何であれ、悔いが残らない可能性が高くなります。鍛練というのも、一所懸命やり続けることであり、誠実に対処し続けることだ、と確信できるのです。
 私は、そんな毎日の地味な基本の積み重ねを、一生涯続けていくことにしております

                                                                      (2017.4.24記)

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