エッセイ135:教育手法(能力開発手法)の特徴

投稿日:2017年4月21日

 前回と今回のE森は、教育担当者必須の基本知識を取りあげております。どれだけの薬剤師の教育担当者が、教育担当者必須の固有専門能力として知り得ているのだろうか…。常に、そんな問題意識がつきまとっているからです。
 今回は、能力を開発する教育手法(能力開発手法)の長所と短所、開発能力と教育手法(能力開発手法)の適合関係を考えてみたいと思います。

教育手法(能力開発手法)の特徴
 
 OffJT、OJT、自己啓発の三つが、代表的な教育手法(能力開発手法)となります。どなたもご存知だと思います。先ず、それぞれの定義を押さえておきましょう。
 OffJTは、Off the Job Training の略で、仕事の場を離れて、職務遂行に必要な知識・技能・態度を、計画的・総合的に育成する訓練のことを言います。代表的なのが、集合研修です。新入社員や、初任者(例えば、新任マネジャー、新任薬局長、新任部課長、新任取締役、新任執行役員など)には、必要不可欠で効果的は手法といえます。
 OJTは、On the Job Training の略で、上司や先輩が部下や後輩に対して、仕事を通じて、職務遂行に必要な知識・技能・態度を、計画的・重点的に育成する訓練のことです。これは、知る・分かるということだけではなく、体験を通して「身につける」という実践的手法で、とりわけ個別指導に最適な手法となります。特に、担当実務を通して自分の仕事や任務を完遂しなければならないという臨場感が、能力開発の効果を高めてくれるでしょう。現実に体験済みの方が多いと思います。“日々の出来事や仕事そのものが、最良の教材である”という意味は、そのような理由からも伺い知ることができます。
 自己啓発は、“自己責任で、自分のために、自分の力で、自律的自主的に推進する能力開発”のことです。教育の目的の一つが、「一人前のプロ」「一人で問題解決できるプロ」を育成するという観点にたてば、自己啓発できる能力こそ最優先されるべき能力開発テーマとなってきます。啓発の『啓』は“ひらくこと”、『発』は“出すこと、始めること、成長すること”ですから、自己啓発とは、自分自身の潜在能力・潜在意識を自力で発掘する自己完結型能力開発法と言えるでしょう。
 以上の定義も含めて、それぞれの能力開発手法の特徴を理解した上で、OffJT、OJT、自己啓発を意識的・計画的に連動させていけば、効果を確認できるより効率的な人材育成が実現できるということを、最初に申しあげておきたいと思います。

 それぞれの能力開発手法には、人間同様に長所もあれば短所(問題点)もあります。教育担当者や部下を持つ管理者は、それらを充分に理解していませんと、成果につながる企業内教育を企画し運営することなどできません。教育担当者や部下を持つ管理者の人材育成能力が未熟なために、能力開発手法の長所が活かされなかったり、短所を克服できなかったケースを、数多く経験してきました。そう考えると、社員に対して影響力を行使する立場の方々は、使命感を持って日々自己啓発して人材育成能力を強化することが求められます。その姿勢が、“背中で教える”(率先垂範)という非言語的影響力となるからです。

 話を戻して、私の30年間の体験を通してまとめた二つの見解を紹介したいと思います。
 先ず、開発したい能力と教育手法(能力開発手法)の適合関係です。(添付資料2-1【図1】)
 もう一つは、OffJTとOJTの長所と短所をまとめたものです。(添付資料2-1【図2】)
 いくつものマネジメント書やセミナー・研修から学び、実務での失敗や試行錯誤を繰り返しながら、教わったことや気づいたことに基づいた私の見解を列挙してみました。
 
 再度申しあげます。
 教育担当の皆さん、部下をお持ちの管理者の皆さんには、「開発したい能力と教育手法(能力開発手法)の適合関係」、「OffJTとOJTの長所&短所」を、先ずは理解して頂くことを提案します。その上で、それぞれの長所を上手に活かし、それぞれの短所を少しでもカバーする工夫をしながら、積極的な姿勢で行動に移してチャレンジすることです。そして、いつの日にか、自分自身の失敗の経験則に基づいたオリジナル版作成をお奨めしたいと思います。
 そういう積極的自己啓発こそが、人材育成能力、マネジメント能力ブラッシュアップの近道ではないでしょうか。“コツコツ努力すること”、“目の前にある小さな課題や目標を、倦まず弛まず一つひとつ地道に解決していくこと”が、唯一の成果実現の秘訣だと確信しております。

  *知識、技能、態度、問題解決能力は、前回のエッセイ(134回)を参照してください。
                                                             (2017.1.31記)

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