エッセイ126:日常の教育機会の指導ポイント

投稿日:2016年12月5日

 6月5日(日)に、第18回学び塾がありました。開塾以来、福島市と郡山市で交互開催しておりましたが、今回初めて盛岡市で開催する運びとなりました。
 学び塾は20数名でスタートしました。7年前のことです。継続テーマを学びの基本としている関係で、途中入塾はお断りして進めて参りました。その間、人事異動による転勤、結婚退職、様々な理由による転職、その他私的な理由によって、塾生は年々減少しました。平成28年6月末現在、5名で続けております。
 塾生の多くは30歳になりました。社会に出て8年前後ですから、バリバリの中堅社員という位置づけでしょうか。今回の学び塾の冒頭で、期待を込めて「後輩の育成」を要請いたしました。

『今回皆さんに申しあげたい使命感は、「30才を過ぎたなら、人財育成(後輩育成)は責務である」ということです。これまでも何度となく問題提起してきました。
 強調したいことは、“謙虚に学び続けるとともに、それまで培って蓄えてきた能力を、(未熟な能力ではあるけれども)後輩育成のために積極的に使いなさい”、ということです。“自分:相手=49<51の行動理論で、影響力を行使しなさい”、“攻めの対人関係を築きなさい”ということを申しあげたいのです。年齢的に は、もうそんな時期に差し掛かっています。
 今の年齢で変わることができなかったら、一生受身の姿勢から脱皮できないと断言します。 ………… 』

 “後輩育成は皆さんの任務である”ということ、“人財育成という志事(敢えて、仕事を志事と言い換えました)は、それまでの何倍もの勉強が必要となることから、自分自身の大きな成長機会でもある”ということも、声を大にして伝えました。
 また、私たちが属する業界の企業内教育に対して感じている私の危機感についても、率直に伝えました。

『厳しい評価と思われるかもしれませんが、薬剤師有資格者の教育担当で、私がプロと諸手を挙げて評価できる方に出会ったことは、残念ながら無いのです。“人財育成推進の鍵を握る企業内教育担当の育成こそが喫緊の大きな課題”と、ハッキリと申しあげたいのです。 ………… 』

 今後のエッセイでは、様々な角度から人財育成の着眼点を取りあげる予定でおります。今回がその第一弾です。日頃感じている、日常の教育活動におけるマネジャーの着眼点を考えてみました。

日常の教育機会の指導ポイント

 企業内教育において、教わる側は当然として、教える立場の人は、教わる人以上の覚悟と姿勢が求められます。その覚悟や姿勢は、人財育成の成否を左右する重要な着眼点なのです。
 教えるという行為は、「教える内容を、納得し理解しながら誠実に学んでもらうことであり、最終的には“知って出来る”レベルに導くこと」です。限られた時間・場所・機会の中で、効果的効率的に目的達成するためには、かなりの工夫と粘り強い努力が必要となります。その場合明らかにしておきたいのが、効果第一主義ということです。その上で効率的な進め方を工夫することになります。それらのことを再認識して、“日常の教育機会における指導ポイント”を再編してみました。
 もう一つ重要な着眼点があります。それは、“日常の教育機会は研修(OffJT)だけではない”ということです。OJTや自己啓発はもちろん、会議やミーティング、日常の対話、プロジェクト活動、顧客とのやり取りを含めて、毎日の細かな一挙手一投足全てが教育機会なのです。就業時間内での出来事全てが育成機会と位置づけることが肝要なのです。教育=研修という先入観・固定観念に縛られている方は、この機会に改めて頂くことを切に望みます。
 以下、私が意識しております日常の教育機会の指導ポイントをご紹介したいと思います。それらは、教える側の自己啓発ポイントでもあります。

1.学ぶことに対する基本スタンスを矯正する~学ぶ機会への感謝の心

 学ぶ機会があることに対して感謝すること!
 先ず、教わる方々に、当たり前の心構えとして、感謝する心を意識づけすることです。教育環境を会社が作ることは当然の責務ではありますが、教育機会が少ないことを理由として自己啓発を疎かにするような、いわゆる従属的依存意識を改めることからスタートしなければいけません。
 もう一つ、自分自身の成長願望を公言できるように動機づけすることです。具体的には「とにかく学びたいのです。だから、教えてください」と真剣に言える人の育成こそを強く申しあげておきます。

2.部下や受講者のやる気・好奇心・感受性を高めて、想像力を養い発揮させる

 やる気を高める要因の一つは、徹底して知識を増やし、スキルアップすることです。そうすることで、今まで解決できなかった問題や課題が、それまでよりは高い確率でクリアできるようになります。また、仕事を遂行する上で役に立つことが徐々に増えていきます。新たな能力が身について明らかに増えてきたことが実感できれば、自ずと主体的に学ぶようになります。解決の着眼点が増えて、学ぶことが楽しくなっていくのです。
 学ぶことがもっと楽しくなる秘訣は、小さな自分運動を継続して、スモールサクセスストーリーを積み上げさせることです。日々の失敗から学ばせることはさらに重要です。そして、毎日の小さなコツコツ努力を、何年も何十年も積み重ねるしか道はないと覚悟させることです。経験の浅い段階では何も見えてきませんが、根気よく行動し続ければ、的を得た問題意識が拡がる感覚が芽生えてきます。やる気はもとより、好奇心も感受性も、そして想像力も高まっていくのです。そう言い続けながら、より積極的な行動姿勢を引き出し、継続行動を促して粘り強く育んでいくのです。
 具体的手法としては、目標と自己統制によるマネジメント(目標によるマネジメント、目標管理)が最適です。

3.自力で解決できるようにする

 私の考える教育の目的の一つは、“自力で解決できる人財”の育成です。自助力(自分一人で問題や課題を解決できる能力)のブラッシュアップです。そのためのポイントとして、二つのテーマが考えられます。

(1)「問題(課題)解決の基本ステップ・対処方法」と「知識の在処(ありか)」を明示する

 困難な問題が発生した時、今までのやり方では解決できそうもない課題に出会った時、次のような事態が考えられませんか。
 “何をどうすればいいのだろうか?”、“どうしたら解決に導くことができるのだろうか?”、“どこから手をつけたらいいのだろうか?”等々、スタートから大きな壁にぶつかると思います。研修などのOffJTでは、時間的な制約のもとでの進行になりますから、用意周到な準備が成果に影響してきます。
 そんな時は、学び方や考え方の基本ステップ、問題解決の基本的な対処方法、知識の在処がしっかりとインプットされていることで、スタートダッシュに弾みがつく度合いが高まります。
 具体的には、「達成確率が高い問題解決の基本手順(プロセス、流れ)が身についていること」、「目的、目標、課題の主旨・理由(何故)が理解されていること」、「解決に必要な知識・情報が何であるのかを知っていること」、そして「健全な心構え(行動理論)を貫いていること」などが挙げられます。知識の在処とは、その時々に必要な知識が何に(専門書・テキスト・手引・書籍・教材など)掲載されているのか、どこに行けば(例:○○図書館など)入手可能なのか、あるいは誰に訊けば分かるのか、など知識の入手先や入手経路のことです。その引き出しが多ければ多いほど、様々な角度からのプランニングが可能となるでしょう。

(2)重要な事柄(根幹)と重要でない事柄(枝葉)を明示する
 人間の吸収力には限度があります。絶対に身につけておきたい事柄(根幹の部分)とそうではない事柄(枝葉の部分)を明らかにして、メリハリをつけて教えることで教育効果が格段に高まります。あれもこれもでは、消化不良に陥ってしまいます。
 そのためには、教える側がどれだけ学んだのか、事前にどれほどの準備をしたのか、にかかってきます。正に、“教うるは学びの半ばなり”なのです。その上で、一人ひとりの修得度合いに応じて対処することです。

4.徹底して基本を修得させる

 「教育の基本理念」(エッセイ123参照)の“理念8:育成の原則は修・破・離である”を思い出してください。業績や成果を左右する要素の一つは、どれだけ職務遂行能力を身につけたかです。対人関係能力も含めた職務遂行能力のプラットホームは基本です。若いうちに、基本を徹底的に身につけたかどうか、基本が身についたかどうか、それで“勝負あり”なのです。

                                          (2016.6.25記)

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