エッセイ125:私の提唱する「教育活動の基本原則」5~10

投稿日:2016年11月18日

 前回の続きです。私が提唱しております「教育活動の基本原則」の原則5から原則10の紹介になります。

私の提唱する「教育活動の基本原則」5~10

●原則1『会社・各組織の教育方針・教育計画と社員一人ひとりの個別育成計画を、できる限り合致させること』:目標による管理
  
●原則2『現場に適合した教育を、自力で実施すること』:現場密着型教育、研修企画検討表
  
●原則3『いま必要な教育を優先的に行なうこと。やる必要のない形式的教育を、わざわざ行なってはいけない』:教育ニーズを明確に(研修企画検討表)
  
●原則4『教育は人事機能の一部である。だから、人事制度全般と連動させて企画運営すること』:人事と教育の一元化、キャリアプラン・キャリアパス
  
●原則5『仕事そのものが育成の教材である。だから、人財育成の推進テーマ・内容は、各職場の各仕事を中心に企画すること、そして実施することが基本』:OJT・OJLを日々始終
  
 企業内教育の推進テーマは、“日々の仕事そのもの”、“日々の出来事そのもの”になります。それが基本であり大前提なのです。そのことが、“目標による管理(マネジメント)”推進の核心なのです。
 人財育成は、部下を持つ管理者(マネジャー)の主要任務ですから、育成責任者は管理者一人ひとりとなります。人財育成の重要性を鑑みれば、使命感を持って対処するしかありません。部下(メンバー)の不具合に気づいたら、即、その場で矯正(OJT、OJL)する姿勢が習慣化されていなければなりません。後でまとめて注意するやり方は、ご法度ということです。
 最悪なのは、人財育成に関心がなく、その不具合に気づかないことです。気づこうとしないことです。そんな管理者は、自分からその職を降りて頂きたい。財産である部下が迷惑をします。部下は、上司を選べないのですから。

●原則6『受講者には、学んだことを活用する機会を作ること、作らせること』(活用のない教育は、無意味・無価値・無駄になってしまう):教育と仕事の連動
  
 初任者に、知識教育は不可欠です。しかし、学んだことも、使わなければ錆びついてしまいます。そこで、研修受講後に学んだことを活用する機会を、必ず作ることが重要です。
 その機会をどうやって作るのか?キーパーソンは、直属の上長です。原則5で申しあげた通り、育成責任者である上長が活用機会を考えるのです。フォローツールとして、「6ヵ月間実行計画書」などを用意すると、活用実態や成長実態などの進捗状況把握が容易になります。

●原則7『教育は、体系的な仕組みの中で、計画的・継続的に実施して、大輪の花開く土壌(風土)が醸成されていく』:教育は風土作り・風土改革
  
 “人財育成は当たり前”、“教育は自主的に取り組むことが大前提”という職場環境が、どんな逆風に襲われてもグラつかない理想の職場の一つではないでしょうか。そのような職場風土を実現するためには、人財育成の総責任者でありコントロールタワーの教育担当が、人事制度と連動した教育体系を策定し、粘り強く継続して運営することが求められます。
 “農作物の生命は土壌にある”ともいわれます。企業の土壌は、風土であり文化です。企業内教育の行き着く先は、企業風土(文化)作りであり企業風土(文化)改革なのだと思います。

●原則8『実施後の成果評価と今後の方向づけを、各々の立場(受講者、上長、専任スタッフ、会社)で、自主的に行うこと』:PDCAサイクル、研修派遣事前・事後フォロー手順
  
企業内教育の中でも、研修などのOffJTは、成果評価が難しいのが 実状です。しかし、評価・検証をキチンとやらなければ、マンネリ病に罹って企業の存在価値失墜への道を歩むことになります。
 私は、どのような教育機会においても、最低半日の時間を費やして成果評価を行い、次回の改善項目を具体化しております。教育機会一つひとつのスパイラルアップを意識して、自主的にPDCAサイクルを回しているのです。因みに、費やす時間が2時間で済む場合もありますし、延べ1週間以上を要する時もあります。それぞれの経緯・目的、位置づけ、今後の関わり方の比重、そして、その時々の状況と睨めっこしながら対処することになります。
 その行為は、教育担当の顧客である受講者への誠意の表現でもあります。顧客満足(Customer Satisfaction)は、全ての仕事に共通した着眼点でなければいけません。担当する仕事内容や職種によって異なってくるのは、対象となる顧客の違いだけです。

●原則9『教育理念と実施内容の整合性を図ること』:コストパフォーマンスの意識
  
 教育投資にも、コストパフォーマンス意識が強く求められます。経営環境悪化を想定したリスクマネジメントの訓練にもなります。
 コストパフォーマンスを高めるためには、基本理念と基本原則を意識して具現化していくことにつきます。要約すれば、実施内容と基本理念&基本原則との整合性を図って企画し実施することです。特に理念は、企業姿勢の対外的な公式宣言なのですから。
 もう一つ、実質費用についても意識して考えたいものです。かかる費用が少なくても、パフォーマンスがゼロとか不満足では、時間と費用の浪費といえましょう。原則3と同じように、ここでも“時は金なり”はという着眼点を忘れないようにしたいものです。
 改めて強く申しあげます。経費の無駄遣いが明らかな“実施する必要度が低い教育機会”の開催には、誰よりも毅然とした態度で排除しなければいけません。そのような行動こそが教育担当の矜持である、と公言できるようになりたいものです。

●原則10『企業全体に、「教育は永続的繁栄の基盤であり、教育機会への参画は当たり前」という考え方を浸透させること』:理念の共有・共鳴

 “お題目”という表現を使う時は、誉められるケースではありません。
 企業理念が、“お題目”として揶揄されることがあります。理念の具現化を本気で目指しているのかどうか、非常に疑わしい場合がその類いに当たりましょう。朝礼で唱和する企業もありますが、実現を念頭に心を込めて唱和したいものです。
 共有そして共鳴という空気は、一朝一夕に作り出すことは不可能です。役員・上位管理者が、意識してそのための機会を作り、繰り返して説いていくしかありません。また、言行一致も絶対条件です。些細なことでも、一回の言行不一致が不信感となって伝染します。
 永続的に繁栄している企業は、理念や方針が風土として、文化として根づいています。社員の中に浸透しています。経営者が率先して、理念・方針の共有を主目的としたコミュニケーションの種を小まめに蒔いているからです。粘り強く話しかけているからです。
 その企業特有の風土や文化のことを「○○WAY」と表現しているケースに出会います。世間様から、○○WAYと認知される企業を目指したいものです。そのような企業は、間違いなく強い。強い企業は、上に立つ者ほど、自主的に教育機会に参加しています。積極的に自己啓発に励んでいます。謙虚に学んでいます。その結果として、永続的に顧客から支持されるのです。
 教育担当は、誰よりも誠実で賢明な旗振り役でなければいけません。言行一致を貫く覚悟が求められる志事なのです。
                                                                      (2016.7.20記)

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