“薬局の未来は、薬剤師一人ひとりがつくる”(エッセイ103回タイトル)
このキャッチフレーズは、『まちの本屋』(田中幹人・著/ポプラ社:2015年11月13日第1刷発行)から拝借いたしました。著者の田中さんは、さわや書店(本店:岩手県盛岡市)フェザン店の店長だそうです。そのあとがきのタイトル“本屋の未来は、自分たちでつくる”に、大いに心惹かれました。その14文字に魅せられて、即購買を決めたのでした。
そのあとがきの4ページには、その昔、よく耳にした言葉が出てきました。今でも、時々耳にするフレーズです。しかし、一方の耳からすり抜けて、「でもね、・・・・・・」で終わっているようにも感じます。この機会に、志を、そして思考習慣や行動指針を看脚下してブラッシュアップしたいものです。
エッセイ110回は、研修や勉強会の進め方について考えてみたいと思います。
続・教育機会におけるオリエンテーションの重要性
ある講習会に参加しました。3時間強のカリキュラムが用意されておりました。
開始から20分して、「これではダメではなかろうか?」と思い始めました。休憩をはさみ再開して間もなく、「これではダメ!大問題!!」という結論に至ったのです。
そもそも何がダメなのか、どのようにダメなのか、このことから呟いてみましょう。
先ず、講習会の狙いは何なのか、何を目指しているのか、目的や目標が分かり難かったのです。私が分かり難いと感じたのは、講師の思いでもあります“何故、この講習会を企画したのか!”という肝心の開催理由が伝わってこないのです。ある程度の想像はついていましたが、多くの受講者の心を掴むことは難しいだろうと感じました。これでは、開催したという主催者側の自己満足で終わりという結果を予想するしかありません。演題に期待して受講された方には、何とも傍迷惑な話であったと思われます。
目的が曖昧な講習会(研修会、勉強会、セミナーと呼ばれる教育機会も含む)は、進め方そのものに大きく影響します。それもマイナス方向への悪影響です。前段で申しあげた内容が、その一例ということになります。
グループによる分科会が組み込まれている場合は、グループ毎の進行状況に大きな違いが生じてきます。目的が曖昧ですから、進行役だけではなくグループメンバーの理解や解釈には、当然の摂理としてかなりの巾が生まれてくるでしょう。奥行きにも大きく差が出ると思われます。案の定、私が考えていた方向とは程遠い進め方になりました。結局、“何を討議したかったのだろうか?”という、モヤモヤ感のままで終わってしまいました。
受講後、「何故そうなったのか」、「どうするべきであったのか」などを自己分析しながら、この体験を反面教師とすることで今後に活かそうと誓ったのでした。
過去に遡って反芻すれば、このような実態の集合教育機会は、かなり現存しているのではないでしょうか。教育ニーズとはかけ離れた、開催することが主目的の教育機会を苦々しく感じたことが、数え切れないほどありました。
一方、恥かしくて批判など到底できない教育機会を、何度となく私自身が行なっておりました。教育担当成り立てだった時期の私は、正しくそんな有様でした。しかし、私が強く自覚したある大失敗を契機として、今でも事のほか気を使っていることがあるのです。回を重ねたエッセイにおいて、何度となくつぶやいている内容です。
その失敗を初心として、試行錯誤を繰り返しながら行き着いた先は、出来得る限りの準備を積み重ねて好スタートを切ることでした。
それは、スタート時のオリエンテーション(或いはガイダンス)の重要性です。その教育機会の「狙い(目的・目標)」、「狙い達成のためのカリキュラムと全体スケジュール」、「進め方、取組み方の基本ルール」を明示し、共有化することです。ここが集合教育における動機付けの肝所だと思います。長期間にわたる教育機会では、カリキュラムの節目節目において、狙いを確認しながら進めていくことも重要になります。話を本題に戻す時に使う言葉を“閑話休題”といいます。狙いは、正に閑話休題の役目を担うのです。
その様な苦い恥かしい失敗体験と理由から、私流のイメージトレーニングがスタートしました。40歳代前半からですから20数年間続けてきたことになります。移動する公共交通機関の中で、ちょっとした空き時間を利用して、なかなか寝付けない床の中で、予定日間近の総仕上げや予行として…… 。声を出して話し方を検討したり、ボディランゲージのあり方を調整したり、時には頭の中で言葉を追いかけながら、様々な工夫を繰り返し、試行錯誤を積み重ねては、徹底して訓練に励みました。手抜き無用の精神で、決められた所要時間管理もキチンと行なうのです。50歳前後の何年間は、納得するまで鍛練した記憶が残っております。
井上流オリエンテーションの詳細はエッセイ75回(平成26年11月アップ)に譲るとして、「狙い(目的・目標)」、「狙い達成のためのカリキュラムと全体スケジュール」、「進め方、取組み方の基本ルール」を明示し、共有化することは、受講者の参画意識を明らかに促進してくれたのでした。
スポーツの世界では、イメージトレーニングの有効性が盛んに取り上げられています。余談になりますが、20数年間、私が自己流で予行演習してきたことがイメージトレーニングであることを自覚したのは、ごくごく最近のことになります。
(2016.1.8記)