エッセイ80:目の前の事とキチンと向き合うためのメモ

投稿日:2015年1月22日

 師走を意識し始めた平成26年11月半ばのことでした。
 受講者の年齢や職務経験に関係なく、その時々の状態で即応できるような教材や資料作成を始めたのがいつ頃であったのか、何故そうしようとしたのか、四半世紀以上も前のことを思い起こしていたのでした。
 専任教育担当を拝命して、その職務遂行に自信が持てなかった時期であったことに間違いはないでしょう。40歳前後から40歳代半ばまでの6、7年間は、脇目もふらずに、指示されたことに対して精一杯対処していた時期でした。指示されたことしか、目に入らない状態の時期でした。
 特に、研修担当者として社員の前に立つ時には、“受講者からの質問の回答に窮してしまわないか … ”、そんなことが気になって、常に大きなストレスを感じながら落ち着かない心境の期間が続きました。集合教育機会が多かったこともあって、この状態では心身ともにもたないと思いつめた時期でもありました。一方、弱気虫は自助努力を蝕むと言い聞かせて、折れそうなプライドを支えようともしました。その僅かばかりのプライドが、ある時、あるヒントを呟いてくれたのでした。確たる自信はありませんが、そう信じています。

その日一日を振り返って、君が必要と考えた君自身のための教材集を作成してみないか。それがダメであったなら、その時に考え直してみればいいのではないか!」と。

 その呟きがきっかけとなって、その都度必要と感じた教材作り、資料作りに励むようになりました。どのような質問がきたとしても私の見解を回答できるようにするための問答集、その都度感じられる教育ニーズ解決のための日々の行動指針例、必要に迫られて作成した教材、… 目の前の課題解決のために、手当たり次第に作りまくったのでした。行き当たりばったりの毎日であったことでしょう。その当時、ワープロ技術を持ち合わせておりませんでしたから、手書き原稿を作っては、部下にワープロでの清書をお願いしました。そんな記憶も蘇ってきます。
 その癖は、将来必要となるであろうと想定した教育課題にまで発展していきました。想定した教育課題を解決するための新カリキュラムの企画立案です。この一年は、薬局長などの中間管理者向けの人材育成を主テーマとした基礎教育のカリキュラムを、試行錯誤を繰返して、考えて、掘り下げて、組み立てております。
 教材集を作り始めた頃に作成したものの一つに、『メモ習慣化の効用』(A4版1頁)というタイトルの教材があります。現在でも活用しております。メモする習慣が身についていないビジネスパーソンが多いからでしょうか。
 今回のエッセイは、最近気づいた私流のメモ効用をつぶやいてみたいと思います。効用というよりも、私の作法という表現の方がピッタリくるのですが …… 。

目の前の事とキチンと向き合うためのメモ

 “常に”ではありませんが、複数の仕事や課題が重なってしまって、かなりの時間を要すると判断した場合、その仕事や課題の一覧表をメモ風に書き出して貼り出すことにしております。メモの内容は、仕事・課題の名称、納期、優先順位などです。仕事・課題の名称は、MYメモですから私が理解できる範囲の略称で表記しております。
 作成のきっかけは、メモランダムの日本語訳である備忘録だったのかもしれませんが、それ以上に“取りこぼし絶対防止という目標必達魂を、自分自身に言い聞かせるのだ”という意思表示でした。そう決め付けて、一人悦に入って実行していた時期もありました。
この作法、最初にやり始めて以降、当り前の躾として習慣化されてしまったようです。当たり前のことですから、いつでも自然体で行なっております。
 
 ある時、パソコンに貼っていたメモを眺めながら、ふと頭をかすめたことがあります。この数年間の口癖の中でも、使う頻度の多い部類に属する口癖があります。
「先ず、目の前のことにキチンと向き合いなさい」が、それです。
 メモを眺めながら、「そうか、このメモはキチンと向き合うための意思表示なのだ」、そう思えてきたのです。
 私の仕事&課題一覧表は、目の前にある仕事をキチンと遂行する、キチンと課題を解決するのだという責任感の意思表示になっているのです。最近になってそう思えるようになったのです。

 60歳も半ばを過ぎたあたりからでしょうか。こんなことが増えたように思います。
あの時の、あの人の、あの行動は、あの意見や言動は、そういうことだったのか。…… 」
 時空を超えて分かることがあるのです。そう認識できることが増えてきたのです。それだけ、様々な経験を積み、謙虚に振り返っている結果なのでしょうか。
 私の仕事&課題一覧表作成理由も、時空を超えて気づいた『メモ習慣化の効用』の主要な一つになりました。

                                                                (2014.11.21記)

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