エッセイ350:5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・躾!

投稿日:2026年3月19日

 これまでのいのうえ塾において、主に40才以下の方々に対して説く時は、私自身の失敗体験に基づくことが多かったと思います。その可否は別にして、実体験だからこそ可能となる、その時々の心理状態や心構えを含めた課題解決のあり方を投げかけることができたと思います。心を砕いたのは、視野を拡げて考え抜いてくれるように工夫することです。これまで想像も及ばなかった方途を追求する姿勢を、日頃から意識して臨んでくれることを期待しながら説いていました。また、私が企画・運営する教育機会における問題提起の多くは、“人生というものは、思い通りにいかないことが数多くあります”ということを大前提として発するようにしておりました。そんな大前提が実態ですから、“腹を据えてやるしかない”という気概を醸成したいという思いが強かったのです。“思い通りにいかない時にこそ、人としての真価が問われる”と、常々感じていたことが主な理由となります。

 私の人生を振り返ってみますと、肝心な場面で、匙を投げたことが幾度となくありました。最初から逃げ出したことも、何度かあったと記憶しております。それらの多くは、今でも後悔の念として心のどこかに潜んでいます。それも、片隅にではなく、心の真ん中あたりにです。そんな弱気癖から脱することができたのは、不惑目前に就任した社員教育と、その後の人事の仕事でした。人材育成の仕事は、“社員の成長を信じなければ、社員の心を掴むことができない”と実感したからです。“社員の成長を心から願わなければ、任務を果たすことは叶わない”と分かってきたからでした。いずれにしても、“腹を据えてやるしかない”という状況に、私自身を追い込むしかなかったのです。

 “思い通りにいかない時にこそ、人としての真価が問われる”という件は、年令や職位を問わず、多くの場面で繰り返し説き続けました。さらに、“その心は何か?”という問いかけを、必ず付け加えることを忘れませんでした。一人ひとりに、その意味を考えさせるのです。イザという時に、逃げないで向き合う訓練機会にしておりました。最終的に“どのように行動するか”は、その時々の状況に応じて考えることになります。行動したからといって、思い通りに事が運ばないかもしれません。大切なことは、“継続は力なり”と“積み重ねは力なり”ではないでしょうか。継続した努力をコツコツ積み重ねることが、その人の真価となって表れるのだと思います

 もう一つ大切な視点は、自分自身が意思決定した行動に対する評価は、どのような結果であっても、感情的にならないで、先ず受け容れることです。周囲からの評価結果と理由を読み解きながら、その上で自己検証を行なって、客観的姿勢で総括することを忘れないことです。また、“何も手を打たなかった”、“何も手を打てなかった”ということが、現実に起こりうるかもしれません。その場合も、キチンと総括するべきだと思います。このことは、表には出ませんが、本人の心に残る真価の一つだと思います。

 それでは、本文もどきの序文を切り上げて、今回の呟きを始めましょう。前回のエッセイでは、整理・整頓を取りあげました。整理・整頓といえば、何をおいても5S(ごエス)を避けて通るわけには参りません。ご存知の方が多い5S運動ですが、実行することが目的化して、本来の目的が忘れ去られているケースを見かけます。この機会に、その目的や意図を学び直してみたいと思います。

5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・躾!

 私が5Sと出会ったのは、30才代半ばでしたから40数年前になります。その当時、お世話になっていたお取引先様のバックヤードの入口に、年度目標として“5Sの徹底”というような表現のポスターが掲げてあったと記憶しております。先ず、改めて5Sの概要を確認しておきましょう。5Sは、製造業や各種サービス業の職場環境の美化や維持・改善、従業員のモラル向上などを主眼として取り組まれる概念になります。各職場において徹底するべき事項としてまとめられたもので、具体的には、整理(SEIRI)・整頓(SEITON)・清掃(SEISOU)・清潔(SEIKETSU)・(SHITSUKE)の5項目になります。それぞれのローマ字表記の頭文字がSであることから、5Sと呼ぶようになたようです。躾を習慣(SHUUKAN)と言い換えているケースも見かけます。いのうえ塾では、それぞれの意味を、次のように解説しております。

 1.整理:いる物といらない物を区別して、いらない物を捨てること

 2.整頓:あるべき物があるべき所(決められた所)にキチンとあること

 3.清掃:ゴミなし、汚れなし。きれいに掃除して点検を行うこと。

 4.清潔:いつも、整理・整頓・清掃の状態が保たれていること。クリンリネス。

 5.躾(習慣):整理・整頓・清掃・清潔が、習慣付けられていること。

 5S活動のメリットとして「作業の効率化や生産性の向上」、「不具合やミスの防止」、「安全性の向上」、「従業員のモラル向上」などが考えられます。整理と整頓については、前回のエッセイ349回で詳しく呟きました。無駄の削減と共に、ヒューマンエラー防止が期待できます。適切な清掃によって、不具合や異常を発見しやすい体制構築につながります。手引化によって整理・整頓・清掃状態が保たれることで、安全衛生が維持継続されるでしょう。さらに、これらが当たり前の躾として習慣付けられることで、職場の規律を守ることが身について、従業員のモラル向上へとつながっていきます。余談になりますが、躾に関しては、このような言い方をしております。“そうなっていないと気持ち悪いのが躾”、“やらないと気分悪いのが躾”、“やる気に関係なく、当たり前にやるのが躾”ということです。

 一方、5S活動のデメリットも散見されます。その一つに、実行することが目的化して、本来目指すべき目的(5S活動のメリット)が見失われてしまうことです。職場が単にきれいになっただけでは大きな意味を成しません。導入にあたっては、推進するための体制づくりと従業員の理解が不可欠ということつきると思います。これは、どのような取組みにも共通する基本といえましょう。

 今回のエッセイは、公私を問わず日常生活をより快適にする方途としての5Sを取りあげてみました。多くの企業が5S運動に取り組んでいるようです。見方を変えて想像すれば、整理・整頓・清掃・清潔・躾のどこかに問題があることの証左ではないでしょうか。思い当たる方は、自職場の5Sの点検をお奨めします。仕事場や家庭の「きれい」は、思いや考えを「きれい」にしてくれるはずです。心の美化へつながると信じております。

  EDUCOいわて・学び塾主宰/薬剤師 井上 和裕(2026.1.30記)

【参考】エッセイ339回:凡事徹底~平凡を非凡に務める(2025.9.3記)

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