私が主宰しておりました学び塾は、メンバー個人の自己啓発と対面による相互啓発を主眼に、一開催8時間(9時から17時)で運営しました。新型コロナウィルス禍などの影響で途絶えてしまいましたが、これまでの開催数は10年間(2009年~2019年)で23回になります。コロナ禍の収束時期を見計らって、いつでも再開できるように26回までのカリキュラムや教材・資料の諸準備を完了しておりました。しかし、高齢化に伴う私自身の体力衰退が原因で、対面による開催を断念して現在に至っております。
一方、無念なやり残しがいくつかあって、今でも頭から離れないのが正直な気持ちでもあります。生涯学習志向は健在ですから、当然なのかもしれません。そのやり残したことの一つを紹介したいと思います。それは、「コミュニケーションの難しさ体験ゲーム」(所要時間2時間)のインストラクション技術の継承でした。学び塾メンバー一人ひとりが、体験ゲームを運営できるようにしたかったのです。それぞれの身近な後輩のコミュニケーションスキル向上の引き出しとして、是非身につけて欲しいという魂胆でした。運営のための全資料とインストラクター用実施要領書(虎の巻)を、メンバー全員分用意しておりましたが……。体験ゲーム以外にも継承教材をいくつか考えておりました。しかし、諸事情によって諦めざるを得なくなったということです。こういう結果からも、やれる時に粛々と実行することの必然性を感じた次第です。
さて、今回のエッセイは、整理・整頓の違いを呟こうと考えました。その違いをご存知ない方の多さが、かなり気になっていたからです。また、整理・整頓の重要性が蔑ろにされていることに、何とも言えない哀しさを覚えることがあります。今回の呟きを通して、整理・整頓を当たり前にやり続けるという身近な行動習慣が、効果的効率的なチーム運営にとっていかに大切であるかを知って頂きたいと思います。
整理・整頓は、快適で円滑で楽な日々を過ごす根源なり!
整理・整頓は、“いらない物を捨てて、いる物を決められた場所にキチンと置いて、必要な物がいつでも誰もが容易に取り出せる状態にする”という片付けの一手法です。そのことを理解した上で、整理と整頓の違いを、しっかり押さえておきましょう。いのうえ塾では、その違いを空で言えて、無意識に当たり前に実践できるよう方向づけしておりました。
整理というのは、“いる物といらない物を区別して、いらない物を捨てること”です。もう一方の整頓は、“あるべき物が、あるべき所(決められた所)にキチンとあること”です。先ず、この違いを認識しましょう。しかし、意味が異なるからといっても、切り離すことのできない同志関係にあります。言い方を変えますと、整理されていても整頓が徹底されていないと、片付けによるメリットを享受する可能性は低くなるということです。
この機会に、仕事場や家庭における整理・整頓のメリットを考えてみました。私見になりますが、大きく三つあると思います。「①無駄の削減」、「②ミスの防止」、「③清潔な環境の実現」です。先ず、無駄(特に時間と費用の無駄)が省かれることです。作業効率が向上し、より業務に集中して取り組むことが可能になります。最終的には生産性向上が期待できます。さらに、仕事遂行能力のパフォーマンス向上へと連鎖するでしょう。その結果として、ヒューマンエラーを含めたミス防止にもつながります。薬局において調剤ミスを防ぐための効果的工夫の一番目に、“整理・整頓を徹底する”とありますが、整理・整頓がいかに大切であるか、窺い知ることができます。また、ファイリングやフォルダリングによって、書類や資料などの管理が容易になり、情報セキュリティも向上するでしょう。視野を拡げて俯瞰すると、キチンと整理・整頓されていれば、細かいところの清掃が行き届いて、清潔な職場環境・生活環境が実現できると思われます。
今回、これまで意識することが少なかった整理・整頓に関して、アレコレ想像を巡らして考えながら、いくつかの気づきがありました。かなり重要な着眼点だと思いますから、その気づいたことにも触れておきましょう。そもそも、整理・整頓は、快適で円滑で楽な日々を過ごすための根源であり、社会生活に根付いた無意識の行動習慣ではないかということです。遠い昔の先人によって導き出されて、いつの間にか定着した知恵の産物だと思えてきました。整理・整頓によって、効果的効率的な日常が自然体で流れているように感じられます。家庭内を見渡せば、目を凝らして観察しなくても、衣類・食器・寝具を始めとした生活維持のための多くの諸道具は、大体置き場所(現住所)が決まっていることが分かります。気分転換のために置き場所を引越すことはありましょうが…。いずれにしても整頓の世界で日常生活が運営されていますから、何らかの手違いが発生しない限り、物を紛失することはありませんし、探す手間が生じることもありません。また、使ったものを決められた場所に戻すことで、清潔な生活環境がコントロールされているようにも感じます。さらに、身についた整頓という行動習慣は、キチンと仕分けして整理することを無言で催促しているような気がするのです。事ほど左様に、私たちは、無意識に整理・整頓の中で生活していることに気づかされました。
もう一つ、重要だと確信する気づきがありました。整理よりも整頓の方が、より重要だということです。世の中には片付けの苦手な方がいます。その方々に共通すると思われるのが、使用したものを決められた場所に戻さないことです。戻さないことに無頓着なのです。私の知人(以下、Aさん)に、細かいことを気にしない、少々プライドの高い頑固な自信家がいます。使ったものを置きっ放しにする、借りたものを返し忘れることをよく見かけます。併せて、要らないものを貯め込んで、要るものと一緒に乱雑に積み重ねてしまいます。Aさんの机の全ての引き出しには、郵便物、各種カタログ、領収書、薬袋、通帳、写真アルバム、未使用封筒などが、無造作にランダムに詰め込まれています。要不要を問わず、その時々の状況に応じて、何の脈絡もないままにしまい込んでいるようです。ですから、何らかの必要性が生じた場合、必要なものをアチコチ探し回ることになります。探し出すのに30分以上要した上に、探し出せなかった場面に居合わせたことがありました。整頓されていれば数十秒で済むことでしたが、ケセラセラ風で、悪びれる様子のないAさんの表情に、チョッピリ呆れてしまいました。その様な事態を目の当たりにして、仕事において同じ様な事態が起きていないか心配したこともありました。しかし、公私を問わず、ネガティブな影響を生じかねませんから、放置しておくわけにはいきません。世の中は、多くの方々とのつながりで回っています。周りの方々に迷惑となる不手際は、意識して避ける努力をすることが求められます。ですから、片付け下手と感じている方は、今回の提言を参考にして、意識して整理・整頓に励むことを推奨します。年を重ねてからの自己啓発は、心技体の衰えによって中途半端な三日坊主になりがちです。若年の内から意識して整理・整頓することで、行動習慣の改善努力の果実が実ると思います。その改善努力は、人として歩むべき当たり前の道ではないでしょうか。
今回の呟きを通して、改めて実感しました。整理・整頓は、快適で円滑で楽な日々を過ごす根源ということを。
EDUCOいわて・学び塾主宰/薬剤師 井上 和裕(2026.1.14記)

