エッセイ342:あなたは学ぶことが好きですか?嫌いですか?

投稿日:2025年12月3日

 グルグル回りの応答の対話は、私のコミュニケーション基本スタイルになりました。質問と回答を繰り返しながら本質追求を目指す一手法です。信頼と安心のコミュニケーションへと導くために、質問内容を吟味しながら考えることに苦心します。発する文言や対話の進め方によって、回答は違ってきます。ですから、“何を意図して質問するのか”が伝わる文言と対話の手順を、事前に考えて臨むことが基本のキなのです。さらに、何事にも通じることではありますが、いくつかの対処法を想定して用意することも大切ではないでしょうか。

 薬学生の会社訪問、新入社員や若手ビジネスパーソンの教育機会で、次のような質問をすることがありました。それは、“あなたは学ぶことが好きですか?嫌いですか?”の二者択一です。今回のエッセイは、学ぶことの好き嫌いを問いかける思いや意図を呟いてみたいと思います。

あなたは学ぶことが好きですか?嫌いですか?

 “あなたは学ぶことが好きですか?嫌いですか?”という問いかけを、これまで何人の方にしたか定かではありません。記憶に残っているのは、“好きです!”と回答してくれた方が少なかったということです。少ないというより、殆んどいらっしゃらなかったと思います。“好きです!”とは答え難いような気もしますから、気兼ねすることなく意思表示できる雰囲気作りに留意することを忘れませんでした。また、回答を聞いてお終いでは、わざわざ問いかけする意味がありません。“何故嫌いと感じているのか、何故好きと感じているのか”を、雑談形式で聴きとりしながら、私の願いとその理由を投げかけるやり方で進めました。私の願いは、他人の回答など気にすることなく、“学ぶことが好きです。勉強が大好きです”と表明できる人になって頂きたいということです。そのことを伝えた上で、そう願う理由を申しあげております。その中の一例を紹介したいと思います。

 話す頻度の多い理由は、「学ぶことは、人生を面白く楽しくやりがいを持って生きていくために不可欠な手段・方途」ということです。そして「よくよく考えてみれば、仕事も私的時間も、問題解決、課題解決の毎日ではないでしょうか」と続けます。現実的には、これまでの経験で培った対応力で無意識に対処していることが多いと思いますが、新たな学びなくしては解決しない問題・課題がいくつも存在します。それらの中には、手をこまねいて先送りできない問題・課題があるのです。仕事であれば、厳しい経営環境を乗り越えるために、日々の問題解決に取り組みながら、毎年新たな課題に挑戦しなければ生き残っていけないのが実態です。ということは、新たな課題を解決するための方途を学び続けることは避けられないということになります。生きている限り、学びは生涯の友達として共に手を携えることが自然の生き方と思えてきます。“学びは生涯の友達”と心底思い知らされたのは、30才代後半からの10数年間でした。公私を問わず山積みする目の前の課題と向き合って対処するためには、課題解決の方途を自力で学ぶしかなかったのです。解決の目途が立つまで数年以上要することもあったと思います。そんなことを繰り返しながら、いつの間にか学ぶことを楽しんでいる私の姿がありました。当初は、仕事と割り切っておりましたが、粘り強く学び続けていくうちに、学ぶことが心底好きになりました。そして、知命目前のある日、生涯学習しようと決めた名言に出会いました。当時愛読した城山三郎氏の著書の一つ「わたしの情報日記」(集英社)からの一節です。『人は知ってみるもの。いや、人に限らず、“知る”ということは、わずかずつでも、人生の楽しみを増してくれる』

 そもそも学ぶというのは、“準備万端整える”ことだと思います。公私を問わず、人間としての勝負時は、突発的な事態に遭遇したさいに状況対応できることではないでしょうか。そうできるように、常日頃から興味あることを学んでおくことです。学んだことが生かされないこともありましょうが、学ぶことの意義こそが楽しい人生へと誘ってくれると信じております。

改めて問いかけましょう。“あなたは学ぶことが好きですか?嫌いですか?それとも …… ”

   EDUCOいわて・学び塾主宰/薬剤師 井上 和裕(2025.10.22記)

【参考】エッセイ319回:良いお年を…(2024.12.25記)

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