エッセイ337:私が実践してきたホームページのあり方を振り返る

投稿日:2025年9月20日

 終戦後の昭和20年代の私は、ピッカピカの小学生でした。当時の楽しみは、元旦に祖父からもらったお年玉を握って、はす向かいにあった菓子問屋H商店さんに行って買物することでした。お小遣いなんて無縁の時代でしたから、自分の好きなものを選べる唯一の機会に、胸の高まりを抑えることができないほどのひと時だったと思います。一番の楽しみは、おまけ付きのグリコキャラメルを買うことでした。“1粒で2度おいしい”のキャッチフレーズが忘れられないアーモンドグリコです。70年前のあの高揚感を思い出しながら、おまけ付きグリコの意図、キャッチフレーズの意味を知りたくなったのです。そこで、製造元の江崎グリコ株式会社のホームページ(以下、HP)にあたってみました。商品開発に対する熱い思いと発売商品への深い愛情を知って、身の回りにある全ての物への感謝の念を新たにした次第です。そして、これまで私が企画運営に携わった2社のHPのあり方を懐かしく思い出しております。今回のエッセイは、HPはどうあれば良いのかを、改めて考える機会にしたいと思います。

私が実践してきたホームページのあり方を振り返る

 企業のHP開設は、とうの昔に当たり前の時代になっています。しかし、掲載情報の更新など手間暇かかりますから、中小企業にとっては開設ハードルが高いのも実態かもしれません。“そもそもHPって何か?”ということはさておきまして、HPの目的とか役割は、企業毎に違いがあって当然でしょう。その様な認識で、私が在籍した企業の実情に応じて実践してきたHPのあり方を呟いてみたいと思います。

 私が初めてHPの企画運営に携わったのは、当時東北を中心に40店舗前後展開していた日の出の勢いの調剤薬局チェーンA社でした。今から20年ほど前になります。それまで手付かずであった新卒薬剤師の採用活動強化の一環として、リニューアルオープンすることになったのです。旧知の専門業者と打ち合わせしながら、最終的に行き着いた視点がCSR(Corporate Social Responsibility)でした。つまるところ、“企業が社会の公器として果たすべき社会的責任は何か”を常に意識して、“ホームページは、企業の思いと日頃の活動実態をステイクホルダーに公言し続ける広報チャネル”と位置づけました。この考え方は、現在も関わりが続いている中田薬局でも変わりありません。

 そのうえで、どのような情報を掲載するかの具体化に没頭しました。同業他社と似たり寄ったりでは太刀打ちできません。何で差別化を図るのか”が、最大のポイントになります。先ず、ターゲットを薬学生と行動力旺盛な現役薬剤師に絞りこみました。また、問題意識の中に掲載頻度情報鮮度があったことが、今でも忘れられません。これで行こうと手を打ったのは、会社概要と採用情報の掲載は当然として、企業ビジョンと日々の活動実績の二つを目玉情報にし、掲載記事は毎月更新することに決めました。

 企業ビジョンに関しては、社会への公約にあたる企業理念を見直して再構築しております。代表取締役の挨拶は、将来構想と方針を明確に掲げてもらいました。日々の活動実績は、新入社員研修を始めとした人材育成の実施機会を都度アップすることと、私が執筆する“採用担当者呟きエッセイ”(月2~3本)を定期掲載することにしました。中田薬局では、“小さな薬局の挑戦”と題して日々の取組みを紹介しております。エッセイに関しては、問題提起と対案提案をセットで掲載し続けて330話を越えました。A社においては、薬局長Fさんの医薬品使用ノウハウコーナーとして“薬識蔵”(隔月)を開設したことが思い出されます。

 今回、私が実践してきたHPのあり方を振り返って、つくづく思い知らされたことがあります。それは、魂のこもった企業活動の重要性でした。最後におまけとして、江崎グリコ株式会社のHP掲載内容から豆知識を紹介しましょう。栄養素グリコーゲンを食べやすくおいしくしたグリコは、キャラメルに牡蠣エキスを加え、グリコーゲンにちなんでグリコと名づけ栄養菓子として売り出したそうです。前文では、おまけ付きグリコキャラメルと紹介しましたが、間違いでした。食べることと遊ぶことは子どもの二大天職と位置づけて、“お菓子を食べる”と“おもちゃで遊ぶ”の両方が重要という考えから、おまけではないそうです。ちなみに、これまで開発されたおもちゃは約3万種類、約55億個に及ぶと紹介されていました。自社商品への愛情の深さを、江崎グリコ株式会社のHPから感じた次第です。

   EDUCOいわて・学び塾主宰/薬剤師  井上 和裕(2025.8.2記)

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