エッセイ335:家族の思い実感レポート

投稿日:2025年8月20日

 ご存知でしょうか、“名は体を表わす”という成句を。

 人や物の名前は、その実体(そのものの本質の姿、ありのままの姿)を表わしているものだ、という意味でしょうか。人や物に名前を付けるときは、“こういうようになって欲しい”とか、“このように思われたい”という願いや思いを込めるものです。また、相手や物を褒めるときに使用することもあります。エッセイ335回は、“名は体を表わす”が原点となった社員教育の取組みを呟いてみたいと思います。

家族の思い実感レポート

 私が“名は体を表わす”に心惹かれたのは、1981年(昭和56年)前後だったと思います。薬剤師の道を断って、日用品卸売販売業の営業担当に転職して5年は過ぎた頃です。100数品目の商品(石鹸・洗剤・トイレタリー品など)を扱っていました。商品一つひとつには、名前がついています。商品開発スタッフが思いを籠めてネーミングしていますから、“なるほど”と納得した商品名が多かったのです。その時に思い浮かんだのが、“名は体を表わす”でした。その実感がきっかけとなって、私が扱っている全商品の命名由来調べを思い立ちました。資料のタイトルを「○○製品のネーミング(商品名の由来)」として、A‐4版9ページにまとめました。転職してから初めての自作マニュアルですから、今でも手許に残しております。

 実は、そのことが心のどこかに残っていたからでしょう。新卒採用の仕事に携わるようになって、入社してくる新入社員への事前課題を考えている時、“名は体を表わす”の意味が、私の脳裏に再登場してきたのです。一人ひとりの名前には、“こうあって欲しいという親の思いが詰まっている”、“愛情と願いが籠められている”、その上で“それを本人は、どれだけ受けとめているのだろうか”という、いくつかの素朴な感覚でした。そこで、新社会人の門出に際して“自分自身の名前の由来をキチンと調べ理解して欲しい。そして、その由来を新たな人生に向けての家族からのエールにして欲しい”と願うに至ったのです。“名前というのは、親が我が子に送る人生最初のメッセージ”だと実感するようになりました。

 具体的には、3月後半の入社前オリエンテーションにおいて、「家族の思い実感レポート」(A4版)を事前課題として提示し、初出勤日に提出という段取りにしました。始めた時期は曖昧ですが、四半世紀前から継続していたと思います。レポートの問いは、以下の通りです。

 〔家族の思い実感レポート〕

あなたの名前の命名由来を紹介してください。家族の思いや願い、言葉の意味を、一所懸命調べて確認してください。その上で、これからの人生の行動指針を再構築してみましょう。

 実施後の感想も紹介しておきたいと思います。社会に旅立つこの時期に、親の思いに耳を傾けることが出来たことへの感謝の声が多かったでしょうか。また、広辞苑などの辞書を紐解いて言葉の意味を調べた方が、かなりいらっしゃいました。年月を経ても、皆さんからの声に変わりはありません。いまだに好企画だと自負しておりますから、今回のE森で紹介した次第です。余談ですが、私自身を振り返ってみますと、襟を正して名前の由来を親から聴いていなかったことを悔いております。

  EDUCOいわて・学び塾主宰/薬剤師 井上 和裕(2025.7.1記)

【参考】自作の「○○製品のネーミング(商品名の由来)」巻頭言の一部:私たち誰にも名前があるように、我々が常日頃扱っている○○製品にも、それぞれ決まった名前があります。それは意外に簡単に命名されることもあれば、難産の時もあるようです。商品の特徴がストレートにとらえられたり、化学式名や配合方法がもじられたり、またある時は、流行語が採用される場合もあります。いずれにしても、家庭用日用品の場合、誰からも愛され親しまれること、呼びやすく覚えやすいこと、さらに効用が理解され清潔感があることなど、いろいろな要素が必要となります。(以下、略)

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