エッセイ294:2023年を振り返って!

投稿日:2023年12月26日

 転職してから、やってみたいと思っていたことがいくつかありました。その一つは、岩手大学人文社会学部の社会人入試への挑戦です。70才までに、実践的人材育成の本質と方途を学び直し、入社後3年間の育成のあり方例を論文にすることが目標でした。さらに、臨床心理学を学びたいとも考えておりました。人事担当者として、30年前の忘れられない出来事が心の底に残っているからです。精神的に参ってした後輩に対して、結果的に何の力にもなれなかったことが、今でも頭から離れたことはありません。メンタルヘルスケアを一から学びたいと、その当時からずっと思い続けておりました。現実的には、フルタイムで仕事を続けていたこと、いつでも全力投球を続けていたことから、二足の草鞋を履く余力と余裕がありませんでした。一方で、この年になっても、そのような目標や希望を持ち続けることは大切だと感じております。生涯現役のモチベーションを維持し続ける原動力になっていると思うのです。

 さて、エッセイ294回は、2023年のアンカーエッセイになります。新たな年を目の前にした年の瀬は、大きな節目の時期でもあります。この数日間、客観的姿勢で一年間を振り返ってみました。

2023年を振り返って!

 最近のエッセイ(260回、273回、293回)では、ここ数年実感している心技体の衰えを呟いてしまいました。読み返してみますと、その根っこには、どこか寂しげで落ち込んでいる姿が見え隠れします。強がりかも知れませんが、私自身は、遅まきながらも、年を重ねることの意味を考えるようになったことが、心技体の衰えを素直に認めることに繋がったと思います。その意味につきましては、未だ公表できるような回答に至っておりません。しかし、今後起こり得る私自身と家族の介護問題を含めて、どう対処するのかを明確にしておくべき年齢に達しました。そんな心境の渦中にありますが、2023年を少々のんびり気分で振り返ってみることにしたのです。

 青空を見上げながらアレコレ振り返ってみたのですが、情けないと感じること、ウンザリさせられること、憂鬱なこと、手のつけようもないこと、看過できないこと、腹の立つこと、許されないこと、当事者であればいたたまれないことなど、ネガティブな出来事で埋まりそうになりました。COVID-19感染症が流行し始めてから、そんな感覚が4年間も続いているのが実態なのでしょう。先行き不透明な世の中ですから、先入観や思い込みが顔を出しては、マイナス思考に陥ってしまったということに尽きるような気もします。考えても答えが見い出せそうにないことに、四苦八苦して悩んでいることもありました。一方で、元気を頂戴したこと、楽しませてもらったこと、モチベーションを高めてくれたこと、大切なことを気づかせてくれたことなど、希望につながる光を注いでくれた行事や出来事が、息を吹き返した一年でもありました。COVID-19感染症法上の扱いが、5月8日(月)から5類に移行したことの影響も大きかったと思います。そのことを最初に実感したのが、1月16日(月)に飛び込んできたビックリニュースでした。米国のニューヨークタイムズによる“2023年に行くべき52ヵ所”に、岩手県盛岡市がロンドンに続く二番目に推薦されたことです。紹介された街並みの多くが、私の散歩圏内でした。改めて、地元盛岡の良さを見つめ直す格好の機会になったと思います。盛岡城跡公園周辺の人出は、明らかに増えました。外人を含めた多くの旅行者の姿が目を引いた一年間でした。

 スポーツの底力を存分に味わった2023年でもありました。数多くの活力を頂戴しました。その一つが、第5回WBC(World Baseball Classic)です。2月の壮行試合から30数日間は、楽しませて頂いただけではなく、下火になっていたモチベーションに新鮮な空気を注入してくれたと思います。詳細に関しては、エッセイ292回で紹介しております。そのWBCで最優秀選手に選ばれたのが、岩手県民の誇り二刀流の大谷翔平選手でした。MLB(Major League Baseball)ロサンゼルスエンジェルスに所属する大谷選手の一挙手一投足に、毎回ワクワクドキドキだけではなく、ハラハラさせられました。開幕してからの6ヵ月間、ワクワク感とドキドキ感は、毎日の元気の素になっていたと思います。もう一つのハラハラ感は、“どうか怪我をしないで……”という神頼み的感覚です。他チームの選手からはユニコーンと称され、無双と驚かれ、オールスターの1次ファン投票ではアメリカンリーグ最多得票を獲得した人気者です。しかし、危惧していたケガに見舞われました。それでも、目の前の試合に出続けている姿には、見るに忍びない感情以上の感動、これからも応援し続けるという思いが溢れてくるのです。最終的には、日本人初のホームラン王とハンク・アーロン賞、、2度目のシルバー・スラッガー賞、3年連続のエドガー・マルティネス賞を獲得し、さらに2度目の最優秀選手賞(MVP)に選出されました。それも、前回同様の満票で史上初の快挙です。来シーズンからは、ロサンゼルス・ドジャースでプレーすることになりました。新たな楽しみにワクワクしております。それ以外にも、48年振りに自力でオリンピック出場権を勝ち取った男子バスケットボールのホーバスジャパン、ラグビーワールドカップ2023フランス大会のブレイブ・ブロッサムズ、第19回アジア大会の各競技選手の奮闘ぶりからも勇気と活力を頂きました。

 こうやって気持ちを切り換えて陽転思考で振り返ってみますと、“この一年で幸せだと感じた日が何日あっただろうか?”という思いが湧き出してきました。さらに、“人生の幸せの芽は身近な所にこそあることを、忘れていませんか!”と、しきりに囁く声が響いてくるのです。日常生活では、プチ感動や“あぁ有難いな”と心に沁みることが、かなりの頻度であります。それらは、人生をより豊かにしてくれる基本であり、人間性を磨いてくれる基本だと思います。この数日間の振り返りは、そんな当たり前のことを思い出させてくれました。見落としている身近な幸せの芽の存在を教えてくれたのです。以下、私が感じたそのいくつかを紹介したいと思います。自宅から徒歩数分の所に、私の母校である盛岡市立仁王小学校があります。岩手県内で最初に開校し、今年で創立150周年になるそうです。その節目の年の5月27日(土)に、何年かぶりの声出し運動会が開催されていました。散歩中に足を止めて見学しながら、つくづく感じたことがあります。子供の元気な声が響き渡っている環境こそ、地域活性化には絶対欠かせないということです。赤組と白組のエール交換を見守りながら、“学校はこうでなくっちゃ!”と込み上げてくるものがありました。COVID-19感染症が探知されてから、私たち家族全員参加のテレビ電話が、週一の定例行事になりました。“新型コロナウィルスを笑いで吹き飛ばそう”、“会話を楽しもう”を合言葉に、チームIMORIと命名して2020年3月にスタートして現在に至っております。日曜日の15時から約一時間は、笑い声の絶えることがありません。スタートして5年近くになります。さらにチームIMORIは、朝8時台の“お早う”挨拶に始まって、21時過ぎの“お休み&夢で逢いましょう”挨拶を、LINEで毎日欠かさず続けております。対面でのコミュニケーション機会は、かなり減りました。ですから、一日数回のメールはプチ幸せを感じる機会になっているのです。

 地球全体を見渡せば、生きていく上での基本となる衣食住が満たされていないところ、言論の自由が保障されていないところが存在します。朝昼晩の三度の食事が頂けること、安心できる環境で生活可能なこと、社会インフラが整備されていることなど、感謝しなければならないことが数多くあることを、決して忘れてはいけません。もう一つ、四季折々の花鳥風月の移り変わりは、感性の巾を拡げてくれるとともに、心に安らぎを届けてくれます。自宅の庭では、雪割草に始まって、花水木、すみれ、椿、石楠花、鈴蘭、紫蘭、ウツギ、ヤマボウシ、紫陽花と、年中花を楽しむことができます。春の桜と秋の紅葉は、ドライブで観賞しております。

 この一年間を振り返って、日頃幸せだと感じる度合いは、かなりのウェイトで存在することが確認できました。大切なことは、それらを当たり前の風景として素通りするのではなく、チョット立ち止まって“有難う”と首を垂れることを忘れないことですね。そう感じながら、キチンと振り返ることを気づかせてくれた「置かれた場所で咲きなさい」(渡辺和子著/幻冬舎)に目が行きました。今日は12月25日(月)、あと七日寝るとお正月を迎えます。

   EDUCOいわて・学び塾主宰 井上 和裕(2023.12.25記)

【参考】エッセイ260回:ただいま思索中~私自身の仕事のしまい方(2022.6.19記)/エッセイ273回:いつか通らなければいけない道に辿り着きました(2022.12.23記)/エッセイ292回:信頼と安心のコミュニケーションが、チームパフォーマンスを高める秘訣(2023.10.5)/エッセイ293回:誰もが通る道~20年前は他人事だったことが、今自分事となっています(2023.10.21記)

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