エッセイ180:理解しておきたい組織運営に関する基礎知識

投稿日:2019年3月6日

 2018年(平成30年)は、体調の芳しくない年でした。
 安定していた血圧でしたが、昨年(平成29年)10月辺りから高めが続いたことで、それまでの降圧剤が変更になりました。併せて、しばらく血圧を測定することにしました。1月半ばから2月下旬まで、1日5回(起床時、10時、12時、16時、20時)を目安に、実態把握に努めたのです。日々の血圧の状況が分かったことで、メンタル面にも良い影響が出てきたようです。実態を正確に把握しておくことの重要性を、改めて突き付けられたのだと思います。
 一番のストレス源となったのが、今年1月半ばから気になりだした不整脈です。2月のある日、今まで自覚したことのない徐脈が続いたのです。1時間おきに数分間続いたという感覚でした。気が動転していますから、もっと短い時間、せいぜい10秒前後だったかも知れません。また、1日に何度か左胸に痛みを感じ出し、不整脈に対する不安感が痛みを増幅しているような気にもなりました。初めて不整脈が気になったのは5、6年前だったでしょうか。もっと以前だったような気もします。数年おきにホルター心電図検査をしておりますが、2年前の検査では、不整脈は出ているが気にする必要はない、との診断でした。しかし、不安が消えることはありません。些細なことでも気にする性質ですから、検査可能の病院で心臓CT検査を行いました。検査は3か月後でしたが、血管のつまりもなく“90才になっても検査は不要”という結果でホッとしております。
 ゴールデンウィーク過ぎからは耳鳴りがひどくなり、今でもその状態は変わっていません。6月からは、午前中にめまいを感じることがあり、日課のウォーキングも飛び飛びになりました。春先の右足首の痛み、春秋の腰痛は、判を押したように毎年出てきます。また、逆流性食道炎、慢性胃炎の影響か、食後の胸焼けや鳩尾(みずおち)の鈍いような痛みが気になる時もあります。
 毎日パソコンに向かいます。そのせいでしょうか、目のピントが合い難くなりました。年数回ですが、目の真ん中あたりに、菱形の縞模様に似た影が眼球の動きに合わせて行き来することがあります。30分ほどで元に戻りますが…。それ以外にも違和感を覚える症状が、いくつもあります。
 振り返ってみると、体調が芳しくなかったことから、総合病院を受診したのが57才前後だったと記憶しております。私が感じている体調の状況は、言葉を変えながら通院の度に訴えました。ひと月半後、以降は開業医への受診を勧告され、併せて、どこか突き放すような皮肉交じりの言い方で、メンタルクリニックへの受診勧奨もされました。それまでの治療の過程で私が訴えたことをどれだけ理解して頂いたのか、釈然としないまま病院を後にしたことは、今でも忘れておりません。医師の多忙さは理解しているつもりですが、それ以降、症状を訴えるにしても、何かを期待することは控えて、簡単な報告で済ますようになりました。
 個人的な前置きが長くて恐縮です。今年1年間の私の体調を披露したついでに、医療従事者のコミュニケーションの原点について、患者という立場の私的な見解を要望という形で申しあげたいと思います。医療行為(診察、診断、治療)の過程では、不安や関心事を含めた患者ニーズの把握が基本の一つではないでしょうか。そんな当たり前が、何か蔑ろにされてはいないかと気になることがあるのです。患者とその家族のQOL向上・自立化支援を柱の一つとして、ニーズをキチンと把握した上で、柱に沿った説明と対話をして頂きたいと思うことがあります。それも患者本位で、より分かり易く、納得し共感できる表現でお願いしたいのです。今年のE森では、コミュニケーションの質的向上のあり方を、共に考える姿勢で数多く取りあげてきました。常に頭から離れないのがコミュニケーションのあり方ですから、今回も取りあげてしまいました。それだけ、気になってどうしようもないからです。これからも気づいた都度、共に考えて議論したいと思います。

 さて、平成30年の締めは、組織運営に関する基礎知識を取りあげてみましょう。ここ十数年間、それらに対する無理解が多いと感じているからです。元来、就職活動のスタート時期に、本質的教育課題として取りあげるべきテーマだと思います。百歩譲って、社会に出た時に、企業人の基礎知識として学んでおくべきことなのです。薬局業界と薬学生の緊急課題の一つだと感じています。

理解しておきたい組織運営に関する基礎知識

選んだ理由が何であれ、従事した仕事のプロとして立派に任務を果たしていくためには、組織の目的、役割分担やチームワークに関する基礎知識を理解しておくことが重要となります。
全ての組織には、必ず目的があります。目的を達成するために、チームワークというやり方で仕事が進められています。当たり前に使われているチームワークというのは、組織の共通目的に向かって、所属するチームメンバーが自分の役割を認識し、役割をキチンと果たし、場合によっては相互に協力し補完し合いながら、共通目的を達成していこうとすることです。
 例えば、野球というチームスポーツで考えてみましょう。先ず、「試合に勝つ」或いは「優勝する」という共通目的があります。その目的を実現するために、投手、捕手、内野手、外野手、指名打者といったようなポジションがあります。さらに、攻撃する時の打順というポジションもあります。それぞれに基本的役割があって、メンバーは自分自身の役割を認識して最善を尽くします。さらに、その時々のゲーム全体の流れや状況に応じて、臨機応変な対応をしながら、チームを勝利に導いていくことが任務なのです。これが組織運営の基本ということになります。
 会社の仕事についても、同じことが言えます。
 それぞれの所属する会社には事業目的があります。代表的なのが、企業理念や方針と呼ばれるものですね。数多くの同業他社との競争の中で、その事業目的を効果的・効率的に具現化するために、多機能化した役割を分担し合う分業体制をとっています。その仕組みが組織(或いはチーム)です。会社における配属先は、その組織の一つということになります。プロ野球と同じように、会社の事業目的を実現するために、会社の各組織のメンバー一人ひとりが、それぞれが分担する役割を理解し認識して、お互いが協力し合うことによって仕事が進められています。会社の中で分担する仕事を職務と呼び、それはスポーツのポジションにあたるものです。
 どのような業種業態であっても、多くの場合、一人の力で完結するという仕事は、あり得ないと思います。自己完結型と思えるような仕事であっても、その仕事は、会社全体の中のある部分を担い、会社全体の活動の中に反映されるものです。どんな仕事であれ、個々の仕事はそれぞれに役割を担い、それぞれが個々に結びついています。また、仕事への姿勢や行動などは、周囲の人、職場の雰囲気に影響するものです。あなたの仕事も、何らかの形で他の人の仕事に結びつき、何らかの影響を与えています。このように、直接的にも間接的にも、仕事はチームワークによって進められており、相互に影響し合っていることになります。
 ですから、一人ひとりが自分の役割を責任もって果たすことが第一です。しかし、そのことは自分の役割のことしか考えないということではありません。個人の仕事は全体につながり、全体の動きは、個人の仕事に影響してきます。自分の仕事をしっかりと行うと同時に、全体に目を向け、常に自分のやるべきことを捉えながら動くことが大切なのです。一人の力では達成不可能なことでも、協働という仕組みのもとで達成することが可能になるのが、組織運営のメリットと言えましょう。
 もう一つ大事な視点があります。チームワークのウイークポイントの存在です。仕事は流れですから、私の仕事と次の仕事には見え難い隙間があるということです。わずかなグレーゾーンといえましょうか。そこには、ミスの芽が存在するのです。誰の役割でもない(=誰の責任でもない)隙間が、思わぬアクシデントやミスの温床であることも現実問題として存在します。ですから、そういう認識を持って対処することを怠ってはいけません。そのような理由から、協働意識を育むことが人材育成上の重要なテーマになると思います。

 人類は、それまでの長い経験を通して、それぞれの組織を秩序よく運営するためには、何が一番大切であるかという基本を学んできました。今回のエッセイでは、その当たり前の基本を取りあげてみました。この基本は、ビジネスパーソンが理解しておくべき前提条件であり、企業規模の大小や業種業態を問わない企業運営の土台なのだと思います。
                                         (2018.12.10記)

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